時空省奇伝 次元と時を超える者たち
山本「片手に描かれた錬成陣はお飾りかな?術をだそうとしているのに『錬成反応が一切ない』のはおかしいんじゃないかな。」
アイザック… いや、もうこれで彼は偽物であると確定した。
エドワードとアルフォンスは、その言葉を聞いて驚愕する。今まで見たものは一体なんだったのか?錬金術ではない。だとすると一体何だというのか。
二人は初め、『賢者の石』と呼ばれるものを使用したそっくりさん、あるいは誰かが変装し、錬金術を使用しているのだと思った。しかし、彼の言葉のとおり、錬成反応は無い。
エドワードとアルフォンスは、たまらずアイザックの偽物のほうを見る。偽物も、エルリック兄弟のほうを見つめ、不気味な微笑を浮かべている。
エドワード「あんた、いったい何もんなんだ?錬金術師じゃなければ、あんたはどうやってあんなことが出来るんだ。」
偽物は微笑ながら口を開く。
?「オホホホホ。私が何者か、知りたいのですか。それならば、教えて差し上げましょう。私の名は『ゲマ』。『光の教団』という宗教団体の幹部の一人です。」
ゲマと名乗るその男から、激しい光が包み込む。四人は目をつぶり、目をそむけた。やがて光が収まると、不気味な魔術師が姿を現わしたのである。
ゲマ「やはり、慣れないことをするものではありませんね。普段は、水を操ったり、氷を操る魔術よりも、炎を操る魔術のほうが得意ですからね。」
私は、ゲマのほうを鋭い目つきで見る。辻谷君も、武器を構えたまま、いつでもその木刀を相手にたたきつけられるよう準備をする。
エルリック兄弟は、今までの状況がうまくつかめていない状況だ。二人が信じてきた科学以外の存在が、間違いなくそこにいるのだ。特に、兄のエドワードはショックが大きかったようだ。
しかし、エドワードはショックをも上回る怒りの感情のほうが強かった。
死者を愚弄する行為だからである。少なくとも、アイザックは国を思っていた。そして行動した。その分、心の中でうまくまとまったからだ。
だが、相手は『外道』である。短気であり、正義感の強い彼はゲマをボッコボッコにしてやるという気持ちが次第に強くなっていく。
エドワード「…おい」
彼はゲマのほうを向いた。が、頭は下がっている。
作品名:時空省奇伝 次元と時を超える者たち 作家名:T・岩本