時空省奇伝 次元と時を超える者たち
山本「…やはり、何度やっても同じ結果か。もう松永たちもこの世界にいないようだし、早く元の世界に帰りたいんだけどなぁ…」
私は、右腕に着けている『時空異常観測機』に目をやっている。この世界に来たときは五段階評価でC、すなわち『異常あり』と出ていたが、
今はE、『異常なし』と出ている。そろそろ『長官』に報告に帰りたいのだが…
医者A「セイイチ・ヤマモトさんですね。退院まで、あと四日程ありますが、あなたの驚異的回復力だと、あさってには治るかもしれませんね…」
どうやら、怪我が完治するまで後最低で二日はかかるようだ。まぁ、時空省に戻ったら、時空法第30条『時空間移動をする者は、(以下略)法に定めるところの若返りを図らなければならない。」
というものを適用するからいいのだけれどね。
この法律は、時に異世界で何年も仕事をした際、時空省に戻ると当然年取ったまま戻ってくることになるんだけど、これも同21条に『時空間移動をする者は(以下略)例外を除き、元の世界から
異なる時空に行く際、もとの世界に一週間以内に帰還しなくてはならない。』という法律のせいで作られたんどね。
たとえ話をすると、僕達が出発した時、もとの世界では2599年2月15日でした。なので、一週間後の同2月22日までに帰らなくてはいけないというわけだ。
しかし、別世界で基本一か月以上仕事なんてよくある話だ。それでも、もとの時代に帰る際、間違っても8日後に帰るよう日程をセッティングしちぁ駄目という事だ。
じゃあ、こちらの世界で一週間を過ぎて仕事した場合はどうなるか。そう、日程超過分『タイム風呂敷』か何かでその人の体年齢を元に戻すのだ。
そういうことで、私は今こちらの世界に来て一週間ちょうどたったから、時空省に戻ったら約二日分若返りをすることになるわけだ。時間の矛盾を解決するための法律だけどね。
説明が長くなってしまったけど、戦いが終わった瞬間気絶して、ここまで運ばれたというわけだ。私は、担当医と適当に話を済ませ、辻谷君のいる病室まで移動する。
どうやら、鋼の兄弟も同じ病室であるようだ。それと、少女の声も聞こえてきた。
?「あ〜もう又『機械鎧』(オートメイル)をこんなにして!!もうどうしてエドは…」
何やら、怒号が飛び交っているようだ。私は何があっているのか、こそっと覗こうとする。すると、どこかで聞いたことのある声がする。
??「エドーワード、君も何かと大変だね。」
エドワード「いやっ、まぁそうだな。一応これでも幼馴染だしな…」
?「ちょっと、エド!それどういう意味よ!」
そうして再び小言が始まる。中々、入りづらい状況だ。
仕方がないので自分の病室に戻ろうとすると、軍服を着て眼帯を着けた人がやってくる。こうして書くと非常に威圧的な見た目だが、
???「おや、君がヤマモト君ではないかね?」
と話しかけてきたその人は、にこやかな顔である。この人こそ、この国のトップ、『キング・ブラッドレイ大総統』だ。
山本「はい、私が山本で間違いありません。」と律儀に返す。
大総統「うむ、実に好青年という風貌だ。中々君のような青年に出会う機会が最近減ってしまって、少し残念に思っていたが、たまには市井に出てみるものだな。」
大総統は、私をにこやかに見つめた後、私に質問を投げかける。
大総統「そういえば、君たちにかこの私に用があったらしいが…」
山本「それが…この国に私たちの国から指名手配犯が侵入したことを大総統閣下に連絡するはずだったのですが…どうやら、もうこの国から出国してしまったらしいのです。
この国に奴らがいたなら、もう少しこの国にとどまりたかったのですが、怪我が治り次第、国に帰ることとなりました。」
相手は頷き、私を見つめた後、辻谷君たちのいる病室に目をやる。
作品名:時空省奇伝 次元と時を超える者たち 作家名:T・岩本