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祭りの前

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 4.

「……大体そんなこったろうと思っていたが」
「へへへへ……」
「やはり騒ぎの元凶はお前たちか」
 苦虫を噛み潰した顔で、自分よりも随分と背の低い相手を見下ろす牛尾である。
 牛尾が彼らを「サテライトのクズ野郎」以外のカテゴリーに分類してから日はまだ浅い。
「こいつは世のため人のためって奴だぜ。現に事を起こす前に遊星がセキュリティに一報入れてるし、さっさと奴らをデュエルレーンに隔離したから大きな事故は起こってねえ」
「デュエルレーンの主要な出入り口も塞いでくれたおかげで、ここまでたどり着くのに俺たち相当手間取ったんだがな!」
「それで朝まで掛かったのかよ。六人中五人はとっくに俺たちが倒しちまったぜ」
 ドラゴンの咆哮が、朝日に白んだ空に重々しく響いた。クロウと牛尾が見上げると、頭上に交差するデュエルレーンの一つを、レッド・デーモンズ・ドラゴンが飛翔するのが確認できた。
「あいつで六人目だな、多分」
 牛尾が頭をがりがり掻きむしり、引き連れて来たセキュリティの隊員に一言二言指示した。クロウが倒したギャングの一人がパトカーに収容されていく傍で、隊員が二名D-ホイールに乗って忙しなく走り去っていく。
「全く、開通式もまだだってのに」
「走り心地は最高だったぜ?」
「あー、もういい、分かったからお前たちは早く家に……何だよ」
 牛尾はようやくクロウが自分に向けて伸ばす手に気がついた。
「トリック・オア・トリート」
「はあ?」
「今日は十月三十一日、で、ハロウィンだろ?」
「そうだが?」
「持ってる奴からもらってくのがサテライト流なんでね。ってことで何かよこせ」
「んなこと、いきなり言われても……」
 言いかけて、牛尾は不意ににやりと笑った。それはまるで面白いいたずらを思いついた子どものようだった。彼は制服のズボンの右ポケットをごそごそ探ると、封の開いてない板ガムをクロウに投げてよこす。
「それ持ってとっとと家に帰って寝ろよ。俺は忙しいんだ」
「へいへい」
 牛尾らを見送った後。クロウは早速包装を開き、――ガムを一枚、無造作に口の中に投げ入れた。

作品名:祭りの前 作家名:うるら