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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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 サテュロス達は慈悲の心からガルシア達を助けたわけではなかった。今後再びハイディアの地へ向かう際、ハイディアの民がいた方が役に立つのでは、と考えガルシア達を救ったのである。役に立たなければ始末してしまうつもりであった。
「何て奴らだ、だったら尚更奴らに手を貸してやる義理はねえだろ?」
 ジェラルドは苛立ちを露わにしていた。
「そうですよ、早くに逃げ出せばよかったじゃないですか!?」
「それができればとうの昔にしていたさ…」
 ガルシアは溜め息混じりに答えた。
「兄さんは操られていたの。協力しなければ家族の命はない、そう脅されて…」
 ガルシアの代わりにジャスミンが理由を告げた。
「家族を人質にとられていたのですね…」
「その通りだ、メアリィ」
 メアリィの言うように、ガルシアの両親とドリーは今もプロクスで身柄を拘束された状態だった。灯台が全て灯った時、彼らは解放するとサテュロス達は約束していたが、そのサテュロス達が亡き後、約束はカーストらに委ねられる事になっていたが、守られる保証はなかった。
「灯台はやはり灯されなければならないのか…」
「どの道灯台は灯さなければなりませんよ」
 ふと、ピカードが言った。
「お前、ピカードだったか?そりゃ一体どういう事だよ!?」
 ジェラルドが驚き訊ねた。
「錬金術が復活すれば、世界は昔のように戦乱の時代となり、破滅へとむかうでしょう。ですが、このまま手をこまねいていてもやはり世界は破滅することになります」
 突然の宣告に一同が驚いた。ガルシアも聞き及ばない話であった。
「おい、ピカード。俺もそんな事は初耳だ。一体どうしてなんだ?」
「今まで黙っていましたが、僕はレムリアの王様からある調査を頼まれて島の外へ出ていたんです」
「その調査というのは一体…」
「ごめんなさい、まだ言うわけにはいかないんです。ですが、このままでは世界は恐らく…」
「彼の言うことは本当ですよ、ガルシア」
 この声とともに一人の女性が家に入ってきた。その女性は長い髪を真ん中で分け、後ろを三つ編みで束ねていた。薄紫色の髪と瞳を持っており、まるで女神のような神秘的な雰囲気を放っていた。
「あなたは一体、何故俺の名を知っている?」
 全く知らない人物に名を呼ばれ、ガルシアは不思議そうに訊ねた。
「ハモ様、戻りましたか」
 ロビンは現れた女性をハモと呼んだ。
「ええ、長くかかりましたけど、全て完了しましたよ」
 ハモはロビンの呼びかけに笑顔で返した。
「ロビン、この方は?」
「この人は以前ラマカン砂漠を越えるときにお世話になった人だ。偶然にもここでまた会ったんだ。この人はラマ寺の…」
 ロビンが言いかけた所でハモが名乗った。
「私はハモ、アネモスのハモです」
 この言葉にはロビンも驚きを見せていた。彼女がアネモス一族の者と聞くのは初めての事だった。
「あんたがアネモス一族だって、そりゃどういう事だよ!?」
 驚き訊ねたのはジェラルドであった。
「そう驚かれるのも無理ありませんね。しかし、正しくは私はその末裔です…」
 そして、とイワンを向いた。
「イワンは私の実の弟、ですからこの子もアネモス一族の末裔なのです」
「ハモ様がボクの姉さん…?」
 イワンは突然告げられた事実を受け止められないでおり、茫然としていた。
「心を読み取るエナジーはアネモス一族に特有なものなのです。イワン、あなたも持っているでしょう?」
 それは『リード』のエナジーを指していた。それからアネモス一族の末裔である事を示すより他に、同じ血を分けた姉弟である事実を表すものがあった。
 イワンとハモは同じ目をしていた。薄紫色の瞳は完全に瓜二つのものだった。
「姉さん、だったらどうしてあの日…」
 ラマ寺でハモがイワンに『イマジン』のエナジーを授けた日には、彼女はイワンに対して特別な気持ちを抱いていた様子であった。しかし、それ以上は何も話す事はなかった。あまつさえ、目を合わせる事もしなくなった。
「イワン、あの時も今も、甘えさせるわけにはいかなかったのよ。あなたにはこれから先に大きな使命が待っているのだから…」
 ハモの目にはこれから先に彼らを待ち受ける運命がなんであるかが、見えていた。
「…雰囲気を壊すようで申し訳ないが」
 ふと、ガルシアが口を挟んだ。
「ハモ様と申されたか、先ほど貴女はピカードの言うことが真実だと仰った。それは一体どうしたことなのですか?」
「そうでしたね、彼の真意をお教えしなければなりませんね。今世界に起きていること、それは少しずつ世界が崩壊しているということです」
 そこにいた一同が仰天した。
「ハモ殿、一体何を申されているのじゃ!?」
 スクレータが訊ねた。錬金術が復活していないというのに、世界が既に崩壊を始めているとのことである。それは錬金術に関するものか、それともまた別な何かによるものなのか。
「少々唐突過ぎましたね、学者さん。ですが、私の目には未来が見えます。これから先の将来、世界は縮小し、そして無になる…」
「その縮小するというのは、やっぱり灯台が関係しているのかしら?」
 シバが言う。
「はい、シバの言うとおりです。今四つの灯台の内、三つが灯ってしまいました。これにより世界はかなりバランスを崩してしまいました」
 これまで二つの灯台が灯っていたため、辛うじて世界のエレメンタルは均衡を保っていた。そこへ三つ目の灯台が灯った事で力の均衡は失われてしまったのである。
「崩れたバランスを取り戻し、崩壊を止めるにはもう、最後の灯台を灯すしかないのです」
 ハモの持つ未来を見る力に狂いはない。彼女には滅びゆく世界が予測できた。
「まるで僕の考えていた事と一緒だ。調査の結果はきっと王様の考え通りになるはず、急いでレムリアに向かわなくては…!」
 ピカードは早急にレムリアへ帰らなければならなくなった。しかし、大ウェスト海から大イースト海へ戻るにしても数週間はかかり、それからさらにレムリアへ向かうとあっては、かなりの時間がかかることが予想された。
「なんと、あのレムリアへついに行くことができるのか!じゃが、そんなに時に余裕はないぞ…」
 まだ全員でレムリアに行くことが決まった訳ではないのにスクレータは喜色を見せた。しかし、世界の崩壊が迫っており時は一刻を争う状態である事を思い起こし、すぐに肩を落とした。
「いえ、ピカードの言うとおりすぐにでもレムリアへ向かうべきでしょう。どの道今の時点ではプロクスに到達することは難しい事でしょう…」
 ハモは言った。
「プロクスには行けないとは、どうしてですか?」
 ロビンが訊ねた。
「…直に分かります。ですが、最速でレムリアへ向かうための手はずはしておきました」
 ハモが先ほど戻るまで、ずっとハモはある作業を指揮していた。それが彼女の言うレムリアへの手はずだった。
「明朝、アテカの入江に来てください。それで全てお分かりいただけるかと思います」
 それだけ言い残し、最後の調整があるとハモは外へ出て行ってしまった。