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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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 青年は入るなり大声を上げた。
「うるせえな、何だってんだ?」
 ちょうどチャウチャと息子のレオレオは出払っており、部屋にいたのはパヤヤーム一人だった。
「す、すいやせん。でも大変なんです!」
「大変なのは分かったよ。一体何があったってんだ?」
「し、シンが、デカい船に乗って、ガルシアも一緒に、あと見慣れない奴らも連れてこっちに向かってきてるんでさあ!」
 パヤヤームは報告を受けて飛び上がった。無理もなかった。彼らの名には苦い思い出があり、そして、彼らがやって来た意図は粗方分かったていた。
「な、なんだって、シンが来てるだと!?大変どころの騒ぎじゃねえじゃねえか!」
 パヤヤームは狼狽しきっていた。
「どうしましょう、パヤヤーム?」
「と、とりあえず隠れるぞ。お前は見張ってろ!」
「そんな、オレもシンに見つかるのは嫌ですよ!」
「うっせえ、言うとおりにしないと俺達全員アラフラに逆戻りだぞ!」
「よう!お邪魔するぜ」
 間延びした声と共に男が二人パヤヤームの部屋に入ってきた。どちらも長髪で一人は艶めく黒髪の男で、パヤヤームにとって恐ろしい男。
「し、シン!?」
 現れたのはシンとガルシアだった。
「てめえ、どうしてここに!?」
「あれだけ騒いでりゃ分かるだろうが。そう慌てんなって、取って食うつもりはないからよ」
 とても信用ならない言葉であった。シンには借りがある、報復されても不思議ではない。
「落ち着け、本当に俺達は話があって来ただけなんだ」
 ガルシアは言うが、チャンパの青年は聞く耳持たない。
「く、くそう!こうなったらやられるまえにやる!」
 チャンパの青年はシンへと殴りかかった。しかし、シンは拳をひらりとかわし、伸びきった腕を掴み、もう片方の腕で青年の首を抱えて海老反りの体勢に抑え込んだ。
「うご、ご…」
「いきなり殴りかかることないだろ」
 シンは手を離した。チャンパの青年はそのまま倒れ込んだ。
「話を聞いてくれるか?」
 ガルシアが訊ねた。
「本当に俺達をアラフラに突き出すつもりじゃないんだな?」
「だからそう言ってるだろ。あんまり分からないようなら無駄に怪我する事になるぜ?」
 シンは苛立ち始めていた。これ以上この男を怒らせればどうなるか、さきほどの技はかなりあざやかであった、戦闘能力の上昇は目に見えており、今戦うような事になれば一蹴されてしまうことだろう。
「分かった…」
 パヤヤームは観念した。
「話を聞こう」
     ※※※
 シン、ガルシア、ロビン、ジェラルドの四人とパヤヤームとチャウチャ、レオレオの親子、そしてパヤヤームの実の祖母ヒエイが一同に会し、全ての話がなされた。
「なるほどねぇ、道理で羽振りがよくなって帰ってきたと思ったら…」
 ヒエイは呆れた様子で言った。
「あんた、海賊なんかしてたのかい」
「ごめんなさい、お婆様、今まで黙ってて。でも仕方がなかったんです。村を救うためにパヤヤームは仕方なく海賊をしてたんです」
 チャウチャは深く反省していた。
「勿論、盗みに入った村には償いをするつもりだったよ。チャンパが昔みたいに復興したときにな」
「パヤヤーム、あたしゃあんたが海賊してた事よりも今まで嘘をついてた事に怒っとるんだよ。分かってるんだろうね?」
「ああ、ごめんよ、ヒエイ婆ちゃん…」
 パヤヤームも俯いていた。
「シンに、そちらはガルシアだったね?家のバカ孫が迷惑かけてすまなかったねえ…」
 ヒエイは詫びた。
「まあ、パヤヤームの奴も反省している上に償うつもりだったってんならもうこの話は終わりだ。オレ達の事は気にしないでくれよ、婆さん。それよりも…」
 シンは彼らがここに来た本当の目的を言うようガルシアを促した。
「ご老人、俺達はあなたに頼みがあって来たんだ」
「あたしにかい?」
「あなたは大陸でも一番の腕を持つ鍛冶職人だと聞いている。そこであなたに武器を打ってもらいたくてここに来た」
 ヒエイは小さく笑った。
「大陸一かどうかは知らないけど、確かに鍛冶の腕には覚えがあるよ。ただし、あたしの打つ武器は特注品でね、それなりの材料は必要になるよ」
 ガルシアは布に包まれた物を取り出した。ガルシアは包みを取り、ハモからもらった黄金色に輝く金属を広げた。
「これで打っては貰えないだろうか?」
 ヒエイは目を見張った。
「こりゃたまげたねえ!これは伝説の金属、オリハルコンじゃないかい!一体どこで手に入れたんだい」
「ご存知であったならちょうどいい、この材料を預ける。早急に武器にしてくれるか?」
「確かに預かろう、じゃが、武器にするにはもう一つ材料が要るよ」
 ガルシアは訊ねた。
「それは一体?」
「地金さ、地金にこのオリハルコンを打ち込んでやろうと思ってるのさ」
 地金と聞いてガルシアには思い当たるものがなかった。それを察したようにヒエイはガルシアの腰にあるものを指差す。
「例えば、あんたのその剣なんかちょうどいい地金になるんだが、どうする?」
 シルバーブレードを地金にして新たな剣を打つということだった。シルバーブレードに宿る力とオリハルコンが合わさればさらなる力が生まれるであろう、ガルシアは思い、返答した。
「よろしく頼む」
 ガルシアはシルバーブレードを腰から外し、卓の上に置いた。
「そういえば…」
 シンは何か思い出し、懐に手を入れた。取り出したのはカーストの持っていた武器から取れたあの暗黒物質、ダークマターであった。
「婆さん、これも何かの材料にならないか?」
 パヤヤームの祖母は眉をひそめた。
「こいつは随分大層なものを持ってきたものだね。確かにこいつで武器は打てる。けど、こいつで打った武器はとんでもない代物になるよ」
 カーストがこの物質を鎌に打ち込んでいた時、ダークマターからは邪悪な力が発せられていた。今もなおダークマターからはどす黒いまでの力が感じられる。下手をすればこの力に飲み込まれてしまう可能性もあった。
「もしも、とんでもない代物でもいいってんなら打ってあげるよ。地金はそうさね、そこのホウキ頭の、あんたの大剣なら材料の闇にも負けないだろうさ」
 地金はジェラルドの大剣が選ばれた。
「おいおい、婆ちゃん。そんな物騒なもの勝手に打ち込まないでくれよ。オレが呪われちまうじゃねえか」
 例え地金の剣が暗黒の力に耐えられたとしても、ダークマターから発せられる呪いの力には持ち主がやられてしまう危険があった。
「大丈夫だって、ジェラルド。お前ならきっと扱えるって!」
「シン!お前も何勝手なこと言ってんだ」
「けど、君は今まで呪われそうなものを持っても何ともなかったじゃないか。オレがあげたあの細剣、いかにもいわく付きなのに平気だろ?」
「てめ、ロビンまで…」
「それに、カーストの奴も言ってたぜ。自分の中に宿る火の力が呪いを打ち消してるって。お前も火のエナジストだ、きっと大丈夫さ!」
 最早シンは他人事である。
「…それで、どうするんだい?打つのか、打たないのかい?」
 ヒエイも痺れを切らしていた。
「だあ〜、もう!分かったよ、打ちゃあいいんだろ打ちゃあ!ほらよ婆さん!」
 皆に押し切られ、遂には腰の大剣を、半ば叩きつけるようにジェラルドは差し出した。