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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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「まあ、確かに、呪いのある材料を打ち込むんだ。そうカリカリするのも仕方がないさね。でも気にしすぎないことだよ」
 さて、とヒエイは立ち上がった。そしてパヤヤーム夫妻を部屋に残し、ガルシア達に付いて来るように言った。
「材料と地金の剣を持ってきてくれるかね。仕事場に案内するよ」
 彼女の言う仕事場とはこの洞穴の最上部にあった。そこにあるのが鍛冶仕事をするための部屋である。杖をついてゆっくりと階段を登るヒエイの後に続いてガルシア達はついて行った。
 階段を登りきった先にある部屋はとても広く、そして驚くべきものがあった。
「これは!?」
 ロビンが思わず声を上げた。そこにあったのは地面を穿つ巨大な穴であった。その直径はゆうに横になった大人三人分ほどあり、深さはそのまま奈落の底まで続いているのではないかと思われるほどだった。
「ほほ…まあ、そう驚くのも無理ないね。ここがあたしの仕事場さね」
「仕事場って…」
 普通鍛冶仕事の場所には竈があり、石の台に、金鎚があるはずである。それがそこには何一つとしてない、大穴がぽっかりと空いているだけであった。
「おい、婆ちゃん。こんな所でどうやって武器なんか打つんだよ?竈はおろか、鎚もないじゃねえか」
 シンは言った。
「あたしの鍛冶仕事はちょいとばかり特殊でね、力は全くいらないのさ」
 確かに彼女は大陸でも指折りの鍛冶屋にしては細身である。年齢もあいまって、金鎚などとても振れる腕ではない。
「使うのは気持ちの力、ちょっとした魔法みたいなものかね」
 魔法だって?と一同が不思議に思った。
「まあ、百聞は一見にしかず、早速あたしの力を見せてやるかねぇ…」
 パヤヤームの祖母は巨大な穴の縁まで歩み寄り、手にした杖を両手で持ち、目を閉じて念じ始めた。
「大地の底に宿る竈の神、あたしに力を貸しておくれ…」
 念じた瞬間杖が輝きを放ち、周辺が揺れ始めた。それと同時に巨大な穴から燃え盛る炎が噴き上がり、周辺に広がり、炎が溜まる形となった。その様子はさながら噴水のようである。
 燃え上がる炎は止まる様子はまるでなく、常に燃え続けている。
「おい、ロビン。これってひょっとして…」
 ロビンとジェラルドにはこの炎に覚えがあった。かつてもこのように永久に燃え盛るかと思われるような炎を身をもって受けたことがある。
「ああ、きっとあのヴェスタだろう」
 ヒエイは少し驚きを見せた。
「ほう、あんたらこいつを知っとったのかい。こいつは金髪のあんたが言うとおり、大地の底に宿る竈の女神、ヴェスタの炎さ。この炎は特別でねえ、燃料もなしに燃え続けるのさ。あたしが消し去るまでね…」
 ヒエイはガルシアを呼んだ。
「そこの、ガルシアだったかい?あんたの持つ材料と地金をこの穴に放り込んでもらえるかい?」
「分かった。それから何かする事はないのか?」
 ヒエイははっきりと切り返した。
「ないよ、放り込めば後はヴェスタが武器を錬成してくれるよ」
 ガルシアは拍子抜けした。鍛冶をすると言うのでてっきり鎚を振るうような事をしなければならないのかと思っていたのだ。
「ずいぶんと簡単なのだな…」
「ところがそうでもないよ。ヴェスタは人を選ぶみたいでねえ、相応の力のない奴が材料を放り込んだって地金ごと黒こげ、消し炭も残らないだろうさ」
 実際にヴェスタを呼び出す事のできる彼女でさえ、時として武器の錬成に失敗することがある。
「まあ、あんたなら大丈夫だろうさ。早いところ材料を放りな」
 ガルシアは頷き、伝説の金属、オリハルコンと地金のシルバーブレードを大穴の中に投げ込んだ。材料は一瞬にして炎に包まれ、真っ赤なドロドロした物体と化した。
 最早原型は留めていない。このまま灰と化してしまうのではないか、そう思い始めた矢先だった。
 熱に溶けた真っ赤な物体は次第に剣の形を作っていく。そして真っ赤な液体は流れ落ちていき、これまでとは違う白金色の刀身を持った剣が姿を現した。
「どうやら、錬成は成功したようだね…」
 オリハルコンと融合した剣はガルシアの手元まで浮遊してきた。かなりの熱を放っているのではないかと思っていたが、その予想は大きく外れ、剣は全く熱など持っていなかった。
 手にした白金色の剣は不思議なオーラをまとっており、これまでのシルバーブレードよりも遥かに大きな力を宿していた。
「剣が輝いてるだと?」
「そいつはとてつもない力を秘めている証拠さね。あの伝説の金属と錬成したんだ。そいつは聖剣エクスカリバーと呼んで差し支えないだろうね」
「聖剣エクスカリバー…」
 ガルシアはエクスカリバーと名付けられた剣を一振りしてみた。重厚な造りに見えるが、むしろ地金のシルバーブレードであった時よりも軽く感じた。
「どうかね?新しい剣の出来栄えは」
「とても素晴らしい。感謝する、ご老人」
 ガルシアはエクスカリバーをしまいながら礼を言った。
「さぁて、次が問題だね…」
 まだ一同には錬成すべき剣があった。例のダークマターを使った錬成である。
「坊主、その材料と錬成するのはかなり危険だ。それでもいいのかい?」
 最初はジェラルドも乗り気ではなかった。しかし、もう決めてしまった事である。最早後に退くつもりはなかった。
「ああ、男に二言はないぜ。むしろガルシアの剣を見てたらあんなのができるのかって、楽しみになって来たぜ!」
 ジェラルドは嬉々として言った。
「確かに錬成したらエクスカリバー並みの剣が出来あがるだろうさ。じゃがねえ…」
 ダークマターはかなりの闇の力を秘めていた。何か悪いことが起こらないか、ヒエイは不安になっていた。
「さあ、婆ちゃん。考えるのはもう止めだ。錬成しようぜ!」
 半ばヒエイはやけになった。
「仕方がない、坊主。ダークマターと地金を放り込みな」
「おう!」
 ジェラルドは大剣を先に、ダークマターを後にと順にヴェスタの包まれる穴へと放り込んだ。
 すると次の瞬間想像を絶する現象が起きた。
「こ、こいつは!」
 ヴェスタが真っ黒に変色してしまった。炎の勢いはごうごうと強まっていき、大穴を飛び出さんとしていた。
 辺りが影に包まれ始めた。ダークマターの持つ暗黒エネルギーによる現象だった。
「熱っ!」
 闇の炎の熱も相当なものだった。とても大穴の周囲にはいられない、そのままであれば消し炭も残らないほどに焼き尽くされそうだった。
「っ!?おい、あれ!」
 シンが真っ黒な炎を指差した。そこでは先ほどガルシアのエクスカリバーが錬成された時と同様に剣が錬成されていた。
 漆黒の炎の中、錬成されていくのは暗黒の剣である。刀身も柄もどちらも黒である。峰の部分だけ血の色を現すかのような深紅の線ができていた。
 錬成された剣はジェラルドの手元に浮遊してやってきた。
「ちょっと待て!くそ、体が言うことをきかねえ…!」
 ジェラルドは意思とは別に闇の力で剣を握らされていた。剣に熱は感じず、手を火傷するような事はなかったが、意識が剣に吸い込まれていくようだった。
「まずいね、大地の底にいる神様がお怒りになられたようだよ!どうにかしなければここだけじゃなくチャンパ全てがこのどす黒い炎に焼き付くされちまうよ!」