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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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 ロビン達のいるところから一段下の場所から全てを見ていた者がいた。
 ガルシア達である。カースト達の奇襲からこの戦闘開始まで一部始終全て見ていたのだった。
「まずいですよ、彼ら戦いを始めてしまいましたよ!」
 ピカードが言った。
「ジェラルドとメアリィも早く助けなきゃ大変よ!」
 シバも慌てた様子だった。
「ガルシア、どうするんじゃ!?」
 スクレータが訊ねたのとほぼ同時にガルシアは無言で走り出した。目的は一つ、友を助けるため。
「ガルシア!」
 シバ達もすぐに後を追う。階段を駆け上がり、部屋を通り抜け、ロビン達の元へと急いだ。
「あれ?この子…」
 間もなくロビン達の所へたどり着こうかというところで、部屋の中で横たえられた人物にシバが気付いた。
「この人、確かシンの妹さんじゃ?」
「リョウカとかいったか、一体何故こんな所で倒れて…」
 ガルシアが言いかけた途端、外から爆発音が鳴り響いた。
「向こうか!」
 ガルシアは再びすぐさま駆け出した。
「スクレータはここに残ってて!」
 シバが言い、ピカードを加えた三人が外へと出た。
 そこには苦戦を強いられるロビン達がいた。
「イワン!」
 服は焦げ、胸元を引き裂かれた姿のイワンが地に横たわっていた。
「ごめんなさい、ロビン…。ボク、もうダメ…」
 イワンは気を失ってしまった。
「よそ見なんかしてる暇あるのかい!?」
 イワンに気を取られている隙にカーストの鎌がロビンへと襲いかかった。仲間に気を取られ、尚且つこれまでの彼女との立ち合いで、ロビンは疲弊しており反応が遅れてしまった。
「くっ!」
 ロビンは肩口を掠められた。少し掠めただけだというのに、傷口はひどく痛む。
「痛いでしょう?この鎌は特注品でねぇ。ちょいと呪いがかかっているのさ」
「呪いだと…!?」
 ロビンは痛みに顔を歪める。さらに次第に体が痺れ始めてきた。
「毒も効いてきたみたいだね」
「毒だと…、それも呪いの効果か…?」
「その通りさ、この呪いは鎌に触れるだけで伝染する。切られたあんたは毒の呪いが体中に回るんだよ」
「く…そ…」
 ロビンにはもう指一本動かせなくなっていた。
「このままほっといても毒があんたの体を蝕んで死んでいく。その様を見るのも一興だねぇ…」
 カーストはニヤリと口元を上げた。
「けど…」
 カーストはゆっくりとロビンへと歩み寄り、鎌の刃をロビンの首へかけた。
「やっぱり姉さんの仇、あたしの手で取る。覚悟しな、ロビン!」
 刃は今まさにロビンの首を落とそうとした。
『ガイア!』
 突如、詠唱と共にカーストの立っている位置から大地のエネルギーが噴き上がった。
 カーストは一瞬の判断で飛び退いた。
「誰だい!?」
 カーストの見る先、倒れたロビンの後ろに立っていたのはガルシアであった。
「ガルシア、何だい、あたしに楯突こうってのかい?」
「…それ以上は止めろ。もうロビン達は追っては来れまい、ならばさっさと灯台を灯せばいい。ほら、ここにジュピタースターもある」
 ガルシアは紫に輝くジュピタースターを取り出し、見せつけた。
 後ろからシバとピカードも続いてきた。
「ふん、あたしゃ今姉さんの仇を取ろうとしてんだ。灯すのなんてそれからでもいいだろ?」
 カーストの睨みに、ガルシアは一切動じない。
「もう一度だけ言う。その鎌を下ろして灯台を灯せ…」
 ガルシアもまた鋭い眼孔で睨み返す。
「ふん!あんたのその目、最初見たときから気に入らなかったよ!いいよ、どうしても邪魔するってんならあんたも殺してやるよ!」
 カーストの大鎌は今度はガルシアへと向けられた。
「ピカード、ロビン達を頼む…」
 静かに告げ、ガルシアは剣を抜いた。
「もとよりお前達はここで用済みとなる予定だった。悪く思うな…」
 アガティオも拳を構え、戦闘態勢となる。
「用済みですって?冗談じゃないわ!ガルシア、私も戦うわよ!」
 シバは手にした杖を杖術の構えに持った。
「すまない、シバ。では行くぞ!」
 ガルシア達は戦い始めるのだった。
     ※※※
 シンとジャスミンそれぞれ飛行能力、滑空能力を駆使して灯台へと急いだのだが、それでも三時間ほどかかってしまった。
「やっと着いたか、後は頂上まで登るだけか…」
 シンは『颯の術』を解き、地面に足を付いた。
「さすがにちょっと疲れちゃったわね…、少し休まない…?」
 多少の息切れをしながらジャスミンは炎の翼を閉じた。
「そうだな、ここまで来りゃあ後少しだ。エナジーの回復を待とう」
 シンが側にあった岩の上に寝転がり、ジャスミンはそれに背をもたれた。
 二人が休み始めて間もない瞬間だった。突如として灯台の上の方から巨大な爆発音が鳴り響いた。
 シンとジャスミンはすぐに起き上がり、立ち上がった。
「何だ今のは!?」
「もの凄いエナジーを感じるわ!」
 二人に休む時間など与えられなかった。直感的に先に行ったガルシア達へ危険が及ぶ予感が頭をよぎったのだ。
 すぐにでも駆けつけなければ、しかしのんびりと灯台を登っている時間もない。
 そこでシンは作戦を立てた。それは今の彼らでは多少無理のあるものだった。しかし、手っ取り早く登るにはこれしかない。
「ジャスミン…」
 シンは練った作戦を耳打ちした。
「ええ!?そんなの無理よ!だいたいそんな所まで…」
 シンはジャスミンの両肩に手を置いた。
「大丈夫、オレも力を貸す。だから頼む!」
 力強いシンの頼みにジャスミンは押し負けた。
「分かった、やってみるわ」
「よし、それじゃ時間がない、早速行くぞ!」
     ※※※
「がぁっ!」
 ガルシアは地に伏した。取りこぼした剣を拾うべく手を伸ばすが、その手はカーストに踏みつけられた。
「ふん、その程度の力でよくもまあ、このあたしを敵に回そうなんて考えたものね」
 何かがおかしかった。カーストの鎌と剣がぶつかる度、ガルシアから力が抜けていったのである。まるで鎌に魂を吸い取られているような、そんな感じがした。
 実際そう激しく動いていたわけではないというのに、まるで長い時間走り続けていたかのようにガルシアの体は疲弊し、一切力が入らない。
「まあいいわ、ロビンの前にあんたから殺してあげるわ!」
 シバもピカードも既にアガティオによって倒されていた。最早全滅は目前であった。
「アハハ!死になぁ!」
 カーストの鎌がガルシアの首を切ろうかというところだった。
「飛鳥刃!」
 真空の刃がカースト目掛けて飛んできた。鎌は弾かれる。
「何、まだ動ける奴がいたのかい!?」
 カーストは刃の飛んできた方へ視線を向けた。そこには苦しげに肩で息をするリョウカがいた。
「…それ以上、好きにはさせんぞ…」
 言い放つと同時にリョウカは激しく咳き込み膝を付いた。
「ハハハ…!誰が来たかと思ったら、随分と病弱な助っ人ね!」
 カーストは嘲笑した。
「ふん…、なめるな…」
 リョウカは刀を杖に立ち上がり、身構えた。それと同時に刀へエナジーを込める。
「炎龍…」
「むん!」
 アガティオはエナジーの波動でリョウカの手を打った。衝撃でリョウカは刀を取りこぼしてしまった。