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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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「ふう…、これで動けるでしょう。おっと、勘違いしないでくださいよ。あなた方を再び戦わせるために回復したんじゃありません。あくまで灯台を灯すためです」
 傷が完全回復した途端に立ち上がり、身構えているシンへとアレクスは言った。
 この言葉にシンもカーストも納得していなかった。
「ふざけるんじゃねえ、てめえの言うことなんか聞けるか!」
「アレクス、あんたあたしの邪魔する気かい!?」
 二人に怒鳴られてもアレクスは全く動じない。
「別に邪魔するつもりはありませんよ。ロビンを倒したければ倒せばいいです。しかし、私達の目的は灯台の解放です。解放した後からでもロビンの相手などいくらでもできるでしょう?」
 アレクスはシンを向く。
「シンもここではまともに戦えないでしょう。ここに倒れた仲間達を庇いながらでは、また先ほどのようになりますよ」
 この男、どこかで見ていたというのか。何故シンがあれほどまでに叩きのめされてしまったのか、その理由を知っている。
「ここはひとまず灯台を灯しましょう。それ以外の事は後からでも十分です」
 アレクスはあくまで中立の立場を取っている。シンを回復しながら、彼の味方はせず、カーストを攻撃しながらも敵対しようともしない。ただ彼の唯一の目的である灯台を灯す事だけを考えているのだ。
「カースト、アレクスの言うとおりだ。ここは灯台を灯すことを考えよう」
 冷静なアガティオはいきり立つカーストをたしなめる。
「アガティオ、あんたまで何を言い出すんだい!?」
「…落ち着け、冷静に考えろ。俺達の目的は奴らを倒すことではない、錬金術の復活だ」
「さすがはアガティオ、よく分かっていますね」
 アレクスは小さく笑った。
 アガティオにもたしなめられ、これ以上騒ぐのはさすがに愚かだと悟り、カーストは釈然としないながらも武器を下げた。
「ふん!仕方ない、今は灯台を灯しに行ってやるよ。けど覚えときな!ロビンの首は、あたしが必ずかっ切る!」
 カーストは吐き捨てるように言い、先にアガティオを引き連れ灯台の頂上へと向かっていった。
「やれやれ…、プロクスの民はどうしてこうも分からず屋なんでしょうね…」
 アレクスは苦笑した。
「それに本当に愚かですね。灯すと言いながらジュピタースターを持って行っていないじゃないですか…」
 アレクスは倒れたガルシアの所へ歩み寄り、かがみ込むとガルシアの腰元のミスリル製の袋からエレメンタルスターを取り出した。
 紫に輝くジュピタースターを手に取ると、再び袋に戻し、アレクスはシンへと差し出した。
「シン、灯台はあなたが灯してきてください」
「どうしてオレが?」
「私はここで皆さんの回復をします。ロビン達はついでですが、ガルシア達は今後も灯台解放に協力していただきたいですからね。それに、今一番動ける状態なのはあなただけです、どうかお願いします」
「…分かったよ」
 シンはジュピタースターを受け取り、灯台の頂上へ向かおうとした。
「そうだ、リョウカは!?」
 シンは思い出し、すぐさま地に横たわるリョウカの所へ駆け寄った。
 意識は全くない。しかし、先ほどと違い、呼吸はとても穏やかである。
「心配ありませんよ。特にひどい外傷はありませんし、様態も安定しています」
 アレクスも歩み寄り、リョウカに触れた。
「しかし不思議ですね。よくこんな体調でここまでやって来れたものです、普通ならば、もう…」
「もう、何だって言うんだ!?死んでいるとでも言いたいのか!」
 シンは妹の身を案じるあまりアレクスに怒鳴ってしまった。
「落ち着いてください、そんな事はありませんよ。ただここまで来る前にとっくに倒れていた、と言おうとしただけですよ」
 アレクスはシンを宥めた。
「随分ひどいようですが、手は尽くします。だからシンは灯台を…」
「リョウカに何かあったらただじゃおかねえからな!」
 シンは言い、頂上を目指していった。
「ふう、では後は彼に任せて私は約束通り皆さんを回復しましょうか…」
 この場で意識が残っていたのはジャスミン、メアリィ、ジェラルドだけだった。しかし、ジェラルドは重傷を負っている、彼も同様に回復が必要だった。
「メアリィ、ちょっとよろしいですか?」
 呼ばれ、メアリィはアレクスを見る。
「メアリィは比較的傷の軽い人達の回復をお願いできますか?私はロビンやガルシアの重い傷の方を回復しますので」
 メアリィは無言でアレクスを見続ける。
「大丈夫ですよ、これにかこつけて私の目的を邪魔するロビンを殺すなんてことはしません。私を信じろ、とはいいません。ですが、約束はいたしましょう」
「分かりましたわ…、今はあなたを信じます」
 信じると言われ、アレクスは一瞬驚いた。マーキュリー灯台を灯した時点、いや、師匠であり彼女の父親を殺した時すでに訣別していたはずなのに、メアリィの口から信じるという言葉が出たのである。驚きは大きかった。
「ふふ…、私に対して信じるなどと、軽々しく口にしない方がいいですよ、メアリィ」
 アレクスは驚きを笑みでごまかした。
 しかし、アレクス自身も不思議でならなかった。なぜ助けようとしているのか、ロビンもガルシアもカーストに倒されたところで別にどうでもいいことだった。それなのに今こうして彼らを助けるような事をしている。その理由はどうしてなのか、はっきりとは分からない。
 しかしどういうわけか、メアリィの存在がアレクスを揺り動かした。最早とうの昔に訣別し、敵対しているはずであるのに、彼女が危険に晒されている所を目にして彼は動いてしまったのである。
 まさかであった。まさかまだ同族意識が残っていようとは、アレクス自身も思いもよらなかった。
 仲間の回復をするメアリィを見ながらアレクスは思う。
――私もまだまだ甘いですね――
 メアリィを一瞥した後、アレクスは負傷の激しいロビン達の回復に当たった。
     ※※※
 灯台の頂上、そこは暗い雲に覆われ、時刻も夕方を過ぎた頃で、闇に包まれていた。
 エレメンタルスターを持って、シンはそこへたどり着いた。巨大な火口の前でカーストとアガティオが待ちかまえていた。
「来たね、ジュピタースターもちゃんと持ってきたようだね」
 カーストは言った。
「お前らが間抜けだからな、ジュピタースターは持ってきてやったよ。エレメンタルスターも持たないで一体どうやって灯すつもりだったのやら…」
 シンは挑発的に言う。しかしカーストはそれには乗らない。
「ふん、減らず口叩いてないでさっさと灯しな!」
「我々は下がっていよう…」
 カースト達はシンに道を開いた。シンはすたすたと灯台の火口へ歩み寄る。
 ガルシアの持っていたミスリルの袋からジュピタースターを取り出し、火口の前に翳す。
 ジュピタースターは一度小さく輝きを放つとゆっくりとシンの手を離れていき、空中に漂い始めた。そして砂時計の最後の砂が流れていくように、ジュピタースターは火口へ吸い込まれていった。
 それからすぐに灯台全体が振動を始めた。これまでの灯台と同様の現象である。最早シンは慌てない。さらに灯台が四つに割れた。遥か遠くの地上から巨大な光り輝く球が浮かび上がってくる。これが灯台の灯火である。