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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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 そして割れた建物も元通りになり、振動も止んだ。全ての現象は終息した。ただ一つ紫に輝く灯火を残して。
「さて、と…」
 シンは後ろに宙返りした。カーストの鎌は虚空を切り裂く。
「よくかわしたね!」
 シンは地に降り立った。
「てめえの考えることなんざ見え見えなんだよ」
 そして背後に立つアガティオにも気を配りながら構える。
「それにここに来た時点でこのまま帰ろうとは考えてねえよ。リョウカとガルシアをあんな目に遭わせた貴様らを絶対に許さねえ、オレが必ず地獄に叩き落とす!」
「威勢のいいことだ、しかしいつまでもつかな?」
 アガティオは言った。
「ふん、地獄でサテュロス達に会わせてやるよ!」
 シンの激しい戦いが再び始まった。
『爆浸の術!』
 大きな爆発を起こしてカーストを牽制する。
『ローリング・フレイム!』
 背後から渦巻く炎が襲いかかる。しかし、シンの姿は空中にあった。
「二度も同じ手はくらわねえぜ!」
 くらいやがれ、シンは空中で体を捻り、アガティオの頭目掛けて回し蹴りを放った。しかし、剃刀の如き強烈な一撃はアガティオの鍛え上げられた剛腕に阻まれた。
「かかったな!」
「ぬおっ!?」
 シンは武器を納め、自身の蹴りを防いだアガティオの腕を取り、股に挟んでアガティオの手首も捻りながら地面に引き倒した。
 二人同時に地面に倒れ込むと、シンはアガティオの腕を抱えながら肘の関節を極めていた。
「変幻自在の忍の技、味わいながらあの世へ行きな!」
 シンは短刀を片方抜き、アガティオの首目掛けて突き立てた。
「うりゃあ!」
 アガティオにとどめを刺そうとした瞬間、後ろからカーストが大鎌を振り上げてきた。シンはアガティオの関節を解き、地を転がって体勢を立て直し、少し間合いを空けた。
 多人数との戦いは得意なシンであったが、この二対一の戦いはなかなかに厄介であった。敵二人とも戦士として相当の手練れである。片方を追い詰めたとしてももう一方が援護につく。攻撃する隙はほとんどない。
『雷神の術!』
 シンはカースト目掛けて落雷を発生させた。切られれば毒を受け、また武器をかち合わせただけで魂を吸い取られる鎌をカーストは持っている。直接ぶつかるにはあまりにも不利であった。
 カーストは落雷から飛び退いた。
『封魔手裏剣!』
 シンは続けざまに真空の刃を放った。
「ちい!」
 さすがに受けきれず、カーストは肩を刃に掠められた。
 突然、シンは両腕を後ろからがっしりと掴まれた。気付いた時にはもう遅く、シンは背中を蹴り上げられた。
「先ほどのお返しだ…!」
 痛みに怯むシンにアガティオの拳による突きの連続技が襲い掛かった。しかしシンもやられてばかりではない。アガティオの拳をしゃがんで交わし、腕が伸びきった瞬間を狙って手首を取り、外側に捻った。小手返しである。
 勢いよく手首を捻られ、アガティオの巨体が宙を舞った。どさ、とアガティオの体が落ちると同時にシンは短刀を突き立てようとする。
 しかし、後ろからまたしてもカーストが鎌を振り上げていた。今度は交わしきれず、その刃を受け止めた。
「ぐ…!」
 魂が吸い取られる感じがした。力が徐々に抜けていき、膝を付きそうになる。
 シンは後転して距離を空けた。
「なかなかやるじゃないのさ。プロクスでも姉さん達と同等以上と言われたあたし達二人を相手にここまで戦えるなんて」
 カーストは嘲笑し、言った。
「貴様らのような雑魚がプロクス最強だって?世も末だな…」
 シンも笑い返した。
「本当に口の減らない奴だね、ならそろそろ終わりにしてやるよ!」
 カーストは大鎌を翳すと、鎌に埋め込まれた漆黒の宝石が不気味な光を放った。
「ぐお!」
 シンはその光をまともに見てしまった。すると次の瞬間、シの体に異変が起きた。
――っ!?体が動かねえ…!――
 体全体が鎖で縛られたかのように、全く動くことができず、声を発することさえもできない。目はかっ、と見開いた状態のままで、瞳孔もこれ以上ないほどまでに開いていた。
「ふ、まともにくらったみたいだねぇ。これはこの鎌に備わった三つ目の呪い、緊縛の呪いさ!」
――何だと…!?――
 シンは言っているつもりだが、はっきりとした言葉にはならず呻き声がかすかに洩れるだけだった。
「アハハ…!声も出せないか、無様だねぇ。まあいいわ、そのまま聞きな」
 カーストの鎌に埋め込まれた漆黒の宝石は暗黒物質、ダークマターによって作られたものだった。ダークマターとは存在そのものが暗黒であり、暗黒の力、すなわち強力な呪いが加わるものである。
 そのような物質から放たれる暗黒の力は様々な作用を持つ。傷口から猛毒を入れる、武器をかち合わせただけで魂を多少なりとも吸い取られる、そしてダークマターの輝きを見せることで金縛りにさせる力である。
 そのような強力な呪いがかかっているのなら使用者とて無事でいられるはずがない。しかし、カーストには一切の影響がないように見える。
「プロクスの民には特別な力があるのさ」
 カーストは続ける。
「あたし達に備わる炎の力は並大抵のものじゃない、本当に全てのものを焼き尽くす事ができるのさ。消し炭も残らないくらいにね。このダークマターの呪いもあたし達に宿る炎の力で消し去っているんだよ」
 すぐ近くであの漆黒の輝きを目の当たりにしたはずのアガティオは平気でいる。プロクスの一族の力は真実のようだった。
「さぁて、お話はこれくらいにしてそろそろあんたには死んでもらおうかしら…」
 カーストは暗黒の力を解放したままシンへと歩み寄った。そして鎌の刃先をシンの首筋にピタリと付けた。それだけで血が流れ出す。
「アハハ…!死になぁ!」
 カーストは鎌を振り上げた。
 これまでか、シンは限界まで目を見開いたまま死を覚悟しかけた。
 しかし、彼に死は訪れなかった。
 カーストとシンの間に一陣の風が吹き抜けた。風の中、きらりと煌めくものが目に入った。
 それは刃であった。キンッ、と鋭い音がしたかと思うと、漆黒に輝くあの宝石が空中を舞っていた。
「なに!?ダークマターが!」
 地にカラカラと音を立て、ダークマターが落ち、その不気味などす黒い光が途絶えた瞬間、暗黒の力は全て消え去りシンの体も自由になった。
 見えないものから解放され、支えを失ったシンは膝を付いた。そして風の通り抜けた道、刃が過ぎていった方に目を向けた。
「お、お前は…!?」
 シンはかなりの驚きを露わにした。そこにいたのは純白の小袖の着物とそれとは対照的な漆黒の袴に身を包み、そして、その顔、その頭は大きな真っ白の頭巾に覆われている。
 昨晩シンが目にした白頭巾の剣士であった。彼はその剣士をリョウカだと思っていた。しかし、今リョウカは満身創痍で倒れている。故にここに現れる事などできるはずもない。更にリョウカは頭巾など被っていなかった。もうあの剣士がリョウカとは別の人物だということは自明であった。
「まさかまだ仲間がいたのかい!?くそ!あたしのデスサイズをよくも!」
 カーストは更なる敵の登場に驚き、そして鎌を機能停止させられ憤った。