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魔王と妃と天界と・1

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 外の騒がしさに様子見に来たのか、教会の中から数名の子供と共に、バイアスが出てきた。
 エトナとラハールに軽く挨拶をし、大天使の姿に納得した様に頷く。
「ああ、訪問の日でしたか。こんな所まで視察ですか?お疲れ様ですね、大天使様」
「ラミントンと呼んでほしいね、バイアス。名で呼んでくれるのはもう他にいないんだから」
「ふふ、地位と立場の関係上仕方ない事ですけどね。まぁ、それでは…ラミントン、どうしました?貴方一人ならともかく、アレ連れてくるとか正気ですか」
「いきなり手厳しいね、バイアス。……魔界を直に見て回らす第一歩だよ。ラハール君達にも同行してもらったのだが……フロンの逆鱗に触れてしまった様でね」
「若きマダムも連れてこの教会になんて、また随分とチャレンジャーですねぇ。子供達を悪く言われたらあれの比じゃありませんよ?」
 バイアスの言葉に困った様に苦笑し、
「処理時は手伝いを宜しく頼むよ」
 さらりと言うラミントンに、
「仕方無いですねぇ」
 やれやれと息を吐きつつ軽く了承するバイアス。
 朗らかに友人同士の空気を纏いつつ会話する二人の姿にレアな感じはするものの、その前に会話の内容が普通にブラックな為若干引くエトナとラハールだった。
 しかし、その間もフロンとブルカノの言い合いは続いている。
 そんな光景を眺めつつ、子供達もラハール達と合流した。
「陛下達じゃん。揃ってどーしたの?」
「せんせー喧嘩してる!!めずらしー!!」
「あのヒゲ、誰?」
「まぁ、一応天界からの客人だ。別に敬う必要の無い愚か者だがな。気が向いたら遊んでやれ」
「魔界嫌いの悪魔嫌いで、暴言かましまくるからフロンちゃん怒ってんのよ」
「え、アレ天使!?うわほんとだ!!羽根ある!!白い!!」
「似合わねー!!あ、こっちのにーちゃんはなんか似合うけど!!」
「せんせーのトモダチ?」
「あのな貴様等……。コイツ、一応天界のトップだぞ」
「相変わらず物怖じしないわねー、あんたら」
 子供達の素直すぎる反応と対応に、呆れるラハールとエトナ。
 だがラミントンはにこにこと、
「うん、フロンの…まぁ、上司にあたるね。私はラミントン。ラハール君達にはお世話になっているよ」
「おお、穏やかだ…」
「流石せんせーの上司!!」
「へいか、ほんとにお世話してるの?」
「しとるわ!!」
「どーですかね~」
「エトナ……貴様、何が言いたい」
「イエベツニー」
「何だその棒読み!?」
「おやおや」
「ふふ、仲が良いねえ」
「まぁ、魔界名物だからねー、陛下とエトナ様のアレは」
「それで、にーちゃんは何しに来たの?せんせーの仕事ぶり見学?」
「バイアスともトモダチ?」
「そうだね……あちらの部下と共に、魔界の事を知る勉強に来たんだ。バイアスとは知己…トモダチ、だね」
「へー。しっかしアンタ、律儀に答えるな」
「天使って気ぃなげぇよなー。…あっちのおっさんはそんな感じしないけど」
「ラミントン、せんせーに似てるね」
 何だかんだとフロンを慕っている為か、子供達はあっさりとラミントンを受け入れた様だ。適応能力に優れたお子様達である。
 魔王であるラハールへの対応も随分と気安いものだが、教会にいる子供達にはフロンの旦那という意識の方が強い。元々誰かを敬うといった思想を持っていなかった事もあり、魔王で魔界の支配者という認識はあっても、ラハールに対する子供達の態度は一様にそんな感じだった。
 ラハールと対峙し、叩きのめされた結果、畏怖を抱く者はいるが、子供達はその範疇には入らないのだ。それはラハールも解っているので、今更とやかく言ったりはしない。
「皆!!バイアスさん!!」
「ぬう!?悪魔共がわらわらと……」
 と、わいわいと賑やかに会話する一同に気付き、フロンがブルカノとの言い合いを中断する。
 ブルカノも一気に増えた悪魔達に眉を顰め、一同に近付いていく。
「おや、若きマダム。もう宜しいので?……そちらの天使様も気は済みましたか?」
「ごめんなさい、子供達の前で…」
「言い足りんわ!!……何者だ?」
 バイアスの言葉にしゅん、としながら謝るフロンと、怒鳴ってから問うブルカノ。
 両者の反応の違いに苦笑し、軽やかに一礼。
「わたくしはバイアスと申します。美と力をこよなく愛するビューティ男爵、バイアスです。…あ、中ボスでもいいですよ」
「うん、よくないね。私の友人だよ、ブルカノ」
「だ、大天使様のっ!?」
「おやおや、意地が悪いですねぇ、ラミントン。そんな事言ったら萎縮しちゃうじゃないですか」
「言わなかった結果、君を罵倒するとなれば私も黙っていられるかわからないからね」
「だ、大天使様……」
 二人の会話に、というかラミントンの言葉にガクブルなブルカノである。
「……大天使ってあんなんだったっけ?」
「本性出てきたな」
「正直ブルカノ様相手なら仕方ないと思います」
 未だおかんむりなフロンのツンツン発言に、エトナとラハールは顔を見合わせた後、苦笑する。
 ここまで怒りを持続させるフロンは珍しい。ブルカノのこれまでの発言を考えれば当然ではあるのだが。
 それでもこのまま相手を嫌い続けられる訳がない。それがフロンだ。
 主従は揃って確信しながら、しかし何を言う訳でもなく。
「とにかくこんな場所では何ですから、中に入りましょうか。他の子達にも紹介したいですし」
 バイアスの言葉により、場所を移動する事にした。



 教会内での各々の自己紹介はブルカノが終始不機嫌にしていた事を除けば、それなりに滞りなく進み。
 しかし、やはり好奇心旺盛で活発な、言ってしまえば悪ガキな悪魔の子供達が多くいる為、しばしば煽りの様な茶々が入る事もあり。
 それらに耐え切れなかったのか、一通りの紹介や教会での授業内容の説明等が終わると、ブルカノが宣言した。
「ならば見て回ってきてやろうではないか!!貴様の言う紛い物ではない教会とやらをな!!宜しいですな、大天使様!!」
「そうだね…。私達が傍にいると、こちらに気を取られるだろうし。いいかい?フロン、ラハール君」
「はい!!ご存分に!!」
「好きにしろ。下らん真似をする様なら覚悟はしてもらうがな」
「ふん!!貴様等の様な悪魔共と一緒にするでないわ!!」
 ブルカノはそう言い捨て、その場から歩き去る。
 フロンはぐぐっ、と気合いと共に拳を握り締めたままその姿を見送り、ラハールはやれやれとその様子に溜息を吐いた。
「しっかし天使にもあんなんいるんだなー」
「あれも先生の言う所の個性ってヤツ?」
「怒ってばっかなだけじゃね?あんなカリカリしてるとハゲんぞ、あのオッサン」
「つーか、もうあの帽子の下ツルッツルなんじゃね?」
 こいつら容赦ねーわー、などと思いつつ、エトナが子供達を見回して首を傾げた。
「ところで、人数少なくない?」
「ああ、外に出てるグループいるんだよねー」
「そろそろ戻ってくるんじゃない?」
「ここも大所帯になりましたからねぇ…。またいらした時に改めて紹介しますね、大天使様」
「それは楽しみだね」
「プリニー共や護衛連中もそっちに割かれている訳か。サボっているのだったら減給してやったものを」
作品名:魔王と妃と天界と・1 作家名:柳野 雫