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魔王と妃と天界と・1

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「皆さん頑張ってるんですから、少しくらい労ってあげなさい。魔王としての責務ですよ」
「……説教はよせ」
 バイアスの言葉に渋面になるラハール。
 そんな二人を見ながら、子供達が口々に。
「バイアスもオッサンだよねー」
「オヤジだろ。口煩いオヤジ!!」
「ビューティとか言ってるくせになー」
「お子様達が酷い!!」
「実際そうなのだから仕方ないな」
 嘆くバイアスに、ふふん、と鼻を鳴らしながらラハール。
「陛下も言われて仕方ないとこはあるでしょーに」
「む、何だエトナ。貴様、オレ様に何か文句でもあるのか」
「実際そうじゃないですかー。そんなんだからプリニー達に待遇よくしろとかスト起こされんですよ」
「プリニー共の管轄は貴様だろうが!!」
「仲が良いねぇ」
 息をするようにじゃれ合いじみた言い合いを始める二人に、ラミントンはほんわかと天然気味な感想を言う。
「良いですよー」
 そしてフロンが同じ様にほんわかしながらそれを肯定した。
 周りに花が飛んでそうなのほほんとした空気を醸し出す天使二人に、子供達はやっぱ似てるわー、などと思いつつ。
「……ラミントンはじいちゃんっぽいな」
「外見若いんだけどなぁ。爺臭いんだよなー、雰囲気が」
「穏やか~なのは間違いないけどな。頑固爺には見えん」
「縁側で茶とか啜ってそうなカンジ?」
「それだ!!」
「先生はその孫っぽい!!」
「なんてこった!!ピッタリじゃねーか!!」
「……私がおじいちゃんにされた件について」
 盛り上がる子供達の台詞に、ちょっぴり黄昏れる大天使。
「わたしが大天使様の孫に!?ってちょっと皆!!なんて事言うんですか!!」
「だって、ねー?」
「なー」
「もう!!失礼でしょ!?」
 反省する様子もなく頷き合う子供達をフロンが窘めるが、効果はあまりなさそうである。
「おやおや……」
 それぞれが好き勝手に喋り、どんどん騒がしくなっていく場に苦笑を零し。
「……しかし……」
 バイアスがブルカノが歩き去った先へと視線を向ける。
(……アレはどうなりますかねぇ)
 毒になるか、波紋を起こす一滴となるか、それとも染まるか、変わるか転じるか。
 未熟者には導き手も必要だが、凝り固まった考えを持つ者はまず、他者を拒絶するものだ。
 そして、結局最後は己の心一つで道が決まる。
(誰がどれだけ影響を与える事ができるか、ですね……)
 ラハールがフロンと接する事で変わった様に。
 と、同じ事を考えていたのだろう、ラミントンと目が合った。
「……彼には少し難しい事かもしれないが……どうにかなってほしいものだね」
「ダメだったら再び投獄か処理ですか?」
「できればしたくはないけどね」
「まぁ、なるようにしかなりませんよ。多少放っておいた方が良い事もありますし」
「確かにね。……変な企みをしなければいいのだけれど」
「その時は皆でフルボッコですね」
「それは仕方ないねぇ」
 朗らかにそんな会話をする二人を目撃した子供達は、内容はよく解らないながらも、あ、こいつら物騒だ、と本能で理解していたりした。






 主に白で構成されたその建物の中。
 どすどすと心情を表した様に荒い足音を立てて歩くブルカノが、忌々しげに吐き捨てる。
「何が教会だ……紛い物め……!!」
 確かによく出来てはいる。が、所詮偽物だ。贋作の紛い物。
 ステンドグラスや鐘も手入れはされているのか、まぁ見苦しいものではなかったが、見せ掛けだけだ。
 何より悪魔の居住区となっているのが気に入らない。
 これでは、清浄である筈の教会内の空気が汚れてしまう。
 そこまで考え、ブルカノは舌打ちする。
「ちっ……悪しき者共め……」
「あしきものー?」
「む?……貴様は……」
 呟きに返った声に、視線を下ろす。
 そこにいたのは悪魔の子供だ。
 黒の髪。二対の角。覗く牙。
 幼いながらも悪魔のイメージを形にした様な、その姿。
 こちらに真っ直ぐ向けている瞳に歪みや穢れが見えない事に違和感があるが、瑣末な事だと切り捨てる。
 教会に住む子供の内の一人だろう。そう判断し、興味も無く踵を返そうとするが、元気よく叫んだ子供の言葉に足を止めた。
「オレ、マデラス!!」
「……マデラス……だと?」
 ブルカノが眉を寄せる。
 聞いた名だ。
 大天使ラミントンから。そして、魔王の妻となったフロンから、魔界での出来事は聞いている。牢の中に囚われていた頃から、今現在まで。
 ブルカノにとっては実に忌々しく、下らない話だった。
 天使と悪魔が互いを理解し、手を取り合ったという話から始まり。
 その結果、その天使と悪魔は夫婦となり、魔界と天界の交流が再開され。
 あろう事か、今では天界、魔界共に、この現状を大半の者が受け入れているのだと。
 ブルカノにとっては凄まじく不快な、受け入れ難い話の数々。
(それが事実だというのだから、ますますもって不快な話だ……!!)
 直に会い、言葉を交わし触れてみれば解る事もある、と大天使に言われ、殆ど強制的に魔界へと連れてこられたものの。
 頭っから悪魔の存在意義を否定し、己の思想と存在を絶対的な善であり、正しいものだと決め付け、そう頑なに思い込んでいるブルカノにとっては、全てが無駄で愚かな事だとしか思えない。
 教会などという見せ掛けだけの紛い物の建物の中には、これまた可愛げの欠片も見えない悪魔のガキ共。外に出ても邪悪な、おぞましい空気に満ちている。こんな場所で何を解れというのか、と。
 実際の所、魔界の空気は天使にとって害をもたらすとか毒になるとかそんな事はないのだが、ブルカノにはそうとしか感じられなかった様だ。
 そしてそこにいたのが、このマデラスだ。当然マデラスにまつわる話も聞いている。
 罪を浄化され、人生をやり直しているらしいが、所詮悪魔は悪魔。行き着く先など知れたもの。
 そう思い、気にも留めなかったが。
(……そういえば、いつだったか大天使が赤子を引き取りたいなどと言い出した事があったな……。こいつの事か)
 当然ブルカノは全力でそれに反対し、なんとか諦めさせたのだが…。
(こんな禍々しい角を生やした悪しき悪魔などを、神聖な天界に侵入させる訳にいくものか!!)
 内心で吐き捨てながら、ふん、と鼻を鳴らし、ブルカノはマデラスを睨む。
 白い長衣と白く大きな二枚の翼。
 それだけを見ればまぎれもなく天使なのだが、厳つい顔とヒゲ。更にやたらと険しい表情をしている為、色々と台無しだった。
 しかしマデラスはそんなブルカノを前にして、きょとん、として首を傾げる。
「だーれ?」
 物怖じせず、無邪気を絵に描いた様なその仕草にブルカノは一瞬虚をつかれた様な顔をしたが、すぐにまた険しい顔を作り。
「……悪魔などに名乗る気は無い」
「えー?」
 言い捨てられた言葉に、マデラスは不満そうな声を上げながら、困った様な、怒った様な顔をする。
「名乗られたら、名乗り返すのがマナーだって、せんせーが言ってた!!」
 正論的な抗議をされ、ぐお、と呻く。
 あと、よーしきびって言ってた!!とか言っているが、そこはよくわからなかったのでスルーしつつ。
作品名:魔王と妃と天界と・1 作家名:柳野 雫