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魔王と妃と天界と・1

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「……くっ……悪魔などにマナーを指摘されるとは!!……ええい、天使長ブルカノだっ!!」
 何やら葛藤しながらも、名乗り返した。
「ブルカノ?」
「様をつけんかっ!!」
「えー、なんかやだ」
「やだっ!?」
「エトナ様とか、ラハール様、とかはいーけど……ブルカノ、はやだ」
「何でだよっ!?」
 思わずキャラを忘れて突っ込むブルカノ。
「なんとなく!!」
「理由になっとらん!!」
 元気な返しにブルカノも怒鳴り返す。
「あやつらの事を様付けして私を呼び捨てにするなど許されんぞ!!」
「えー?エトナ様とかは皆がそう呼ぶし……」
 実際の所、環境に培われたマデラスの中での常識なだけである。ぶっちゃけ慣れだ。ラハールは陛下呼びの方が馴染みがあるが。
「む……。しかしだな、年長者は敬え!!せめてさん付けくらいはするべきだろうがっ!!」
 その事を察し、相手が子供という事もあって譲歩するブルカノ。
「だって~……」
 まぁ正論なのだろう事はマデラスにもわかった。
 だが、やっぱりなんとなく嫌だったので。
「………じゃあ、ブーちゃん!!」
「だから何でだよっ!?」
 唐突にテキトーなアダ名をつけられ、しかもちゃん付けなんぞをされ、ブルカノは再び全力で突っ込んだ。



「教会の中見て回るの?じゃあオレ、案内するー!!」
「ぬう!?貴様の様なガキに出来るのか!?」
「オレここで暮らしてるもん!!できるよー!!」
 じゃあオレの部屋からね!!何でだよ!?そんな案内いらんわ!!えー。
 そんな遣り取りをしつつも、何だかんだと連れられて。
 発見したのは豚に似た悪魔の姿。
 王冠っぽいのとマント的なものを羽織ってはいるが、見た目は豚だか猪だかといった姿で。
 思わず指を差しつつブルカノが叫ぶ。
「ブーちゃんっぽいのがいるではないかっ!!」
「あれはコゼニスキーって名前あるもん。おとーさんが陛下の部下なんだってー」
「知るかっ!!」
「知るかっ!!」
 ぷりぷり怒りながらぶんぶん腕を振るブルカノの姿が面白かったのか、同じ動きをしながら台詞もリピート。
 マデラスの腕に巻かれた青いリボンがその動きに合わせてふわふわ揺れて、それがまたイライラを助長させた。
「ええい真似をするなっ!!」
 顔を真っ赤にして怒鳴るブルカノに、怯えもせずにけらけら笑う。
 そのマデラスの反応に、思わず脱力するブルカノ。
「くっ……悪魔め……!!」
 常時であれば様々な負の感情が含まれる筈のその言葉にも、力は無かった。



「じゃあ次はー……」
「待て、もういい。私は一人で見て回る」
「えー」
 疲れた様に溜息を吐きながらのブルカノの言葉に、マデラスが口を尖らせる。
「ブーちゃん一人で回れるのー?」
「馬鹿にしておるのか貴様は!!大体案内役など元から必要なかったのだ!!それを貴様が……」
「ひとりはつまんないのにー……」
「……む?」
 呟かれたその言葉は、子供らしい単純なものだ。しかし、今までとは何だかニュアンスが違う様な気がして眉を顰める。
 だがそれを指摘する言葉を持たないブルカノは、他の言葉を口にする。
「……貴様も一人でいたではないか」
 声を掛けてきた時、マデラスの近くには誰もいなかった。
 そう言われ、マデラスはうーんと、と首を傾げながら、
「食べられる野草とか果物とか採りに行ってたからー……しゅーかく分プリニーに渡しに行ったりお風呂行ったりで、解散したよ。教会戻ってきたら自由時間だもん」
 悪魔達は団体行動をあまりしない。教会にいる者達はそうでもないが、好き勝手に行動するのが悪魔の性分だ。当然ではあるだろう。
 特に今回は護衛の悪魔達と年少組中心で出ていたので、教会に着くまでは安全面を考慮して固まっていただけであるし。
 因みに、群れるのを真に嫌うものは元々教会にはいない。
「……一人はつまらんのではなかったか?」
「?みんな教会にいるんだからいーじゃん!!」
「ん?うん………?」
 何かズレている気がする。
 だが、それに付き合う気もないので、曖昧に相槌を打って流した。
 四六時中誰かと行動を共にするというのは天使でもそうないしな、と軽く考えながら。
「だが、それならば私が一人で行動しても、何ら問題なかろう」
「えー、つまんないー」
「結局貴様の都合ではないかっ!!」
 ぶんぶん腕を振りながら主張するマデラスと、ぷりぷり怒りつつ怒鳴るブルカノ。
 かなり険しい顔をしているブルカノだが、やはり怖がる素振りも見せずにマデラスが口を開く。
「じゃあこれからどこ行くのー?」
「む……。それは、あれだ。……適当に見て回ればそれなりに解るだろう」
「何も考えてないじゃん、ブーちゃん」
「や、やかましいっ!!というかブーちゃんはやめろと言っておるだろうが!!」
「えー?なんでー?」
「だから!!年長者を!!敬えぇぇ!!!」
 ええい、何度目だこの遣り取り!!などと思いつつ、先程からぶんぶんと腕を振っているマデラスにイラッとしつつ。
「せめてもう少し落ち着けんのか貴様は!!」
 びしいっ、と指を突きつけ、
「大体何だそのリボン!!うっとーしいわ!!」
「これ?せんせーにもらったー!!」
「……ぬ、ぬぅ……」
 凄くいい笑顔で言われて勢いをなくすブルカノ。
 流石に大人気無いと思ったのか、ごほん、とわざとらしく咳払い。
「……そこまで案内したいと言うのならばさせてやるが……他に案内できる場所などあるのか?」
「んーとー……庭の花壇見る?わへーのしょうちょうなんだって!!」
「………あれか………」
 闇色の花。悪魔の色の花だ。
 目にはしたが、趣味の悪い花だという感想しかなかった。
「……あんなものが和平の象徴だと……?」
 くだらん、と口の中で吐き捨てる。マデラスには聞こえなかったのか、きょとん、としながら首を傾げていた。
「じゃあお風呂行く?いろんなのあるよー!!」
「……何故教会にいろんな風呂が……。半ば居住区になっているとはいえ……」
「えーと、マグマ風呂、冷水風呂、泥沼風呂、泡風呂とー……えっと、いっぱい!!」
「多すぎだろ!!」
「陛下の部下増えたから、ぞーちくして、みんなで好きな部屋とか作ってたらそーなったよ!!地下にもいっぱい!!」
「自由すぎんだろ悪魔共!!」
 せんせーもちょっと多すぎますねーって言ってた!!そりゃそうだろうよ!!ええいこれだから悪魔はっ!!これだから悪魔はー!!真似すんなっ!!
 などとぎゃんぎゃん言いつつ突っ込みつつ。
 マデラスとブルカノは、連れ立って歩いていった。



 そんなこんなと時は過ぎ。
 一刻も早く帰りましょう!!と勢い込んで言ってくるブルカノに、困った様に微笑む大天使と、むうぅ、と膨れるフロン。
 やれやれ、と溜息を吐くラハールとやっぱりねー、と呆れた声を上げるエトナ、苦笑するバイアス。
 予想通りと言えば予想通りの展開だったが、そこには予想外の要素が一つ。
「ブーちゃん帰るの?」
「様を付けろォォォ!!というか!!ブ・ル・カ・ノ・だっ!!その呼び方はやめい!!」
「えー」
「えーじゃないっ!!おのれフロン!!貴様どんな教育をしておる!!教会が聞いて呆れるわ!!」
作品名:魔王と妃と天界と・1 作家名:柳野 雫