yamatoⅢ 太陽制御の後で 1
「相原、お前、下りなくていいのか?」
進が後部展望室にいる相原に声を掛けた。
「え?何でですか?」
相原の視線の先には月があった。
「せっかく晶子さんに会えたのに…。」(進)
「あぁ…そうですね。…いいんです…生きて会えたので…。」
相原はすっきりした顔を進に見せた。
「第二の地球は見つけられなかったけど…大事な仲間を失ってしまったけど
大切な人たちの住む地球を守れた、だけで充分です。これからの事は
ゆっくり地球で考えます。」(相原)
「…そうだな。そう…だよな。また…夢を見られるようになるんだもんな…。」(進)
「そうだよ、古代艦長だってユキさんとの結婚、話進めないと…横取り
されちゃいますよ?」
相原は茶化すつもりで言ったが言った後すぐ土門の顔が浮かんだ。
「一番、横取りしそうなやつだったんだけどなぁ…ユキさんの回りをまるで
子犬のようにチョロチョロしてて…」(相原)
「…そうだな。子犬…みたいだったな。」
進は土門がヤマトに乗り込んだ最初を思い出した。
「女の下じゃ働けない、って言ってのけたそうですね。」
相原が笑いながら言う。
「そうなんだよ、まったく…いつの時代のヤツなんだか…」(進)
「それじゃ僕がかわいそうだ!ずっとユキさんの下、ですから。」(相原)
「ははは…そうだな。」(進)
「艦長だってそうでしょ?」
進は相原の言葉の意味が分からなかったが
「ヤマトの中で艦長より生活班長の方が強い、ってもっぱら有名な話だから…
(進の反応を見て)あれ?知らなかった?誰もが知ってる定説なんだけどなぁ」
悪びれもなく話す相原
「今回、下りなくてよかった。」
相原の言葉に進はうなずいた。
「晶子さんの為に頑張れた気がするんだ…。そして初めて古代艦長の気持ちが
わかったような気がする。」(相原)
「俺の?」(進)
「最初は好きな人が同じ艦に乗ってる事がうらやましかったけどヤマトは
戦艦だから何があるかわからない。命削って戦いながら好きな人の事を
想う、って僕にはできない事だから…」
相原は大きく息を吸うと
「気持ちは分かったけどマネできないよ。僕、そんなにかっこよくないし。
だけど肉親じゃないのに待っててくれる人がいる、ってこんなに嬉しい事
だったんだ、って気付いた。」
相原は母一人、子一人。
「そうだろ?やっとその気持ちわかるようになったか?」
進が嬉しそうに言うと
「ほら、最初にパトロール艇に二人で乗り込んだ時…地球に戻った時さ
ユキさんがお迎え来てたでしょ?あれ、すごい羨ましかったんです。
やっと僕にも迎えてくれる人が出来た、って…」
本当に幸せそうな相原。
「ユキの所はともかく晶子さんはお嬢様だからな…頑張らないといけない
事がこれからたくさんあるぞ。」
進は相原の肩を叩いて笑ったが真顔になって
「これからも…頼むな。もう、誰も失いたくないんだ。」
相原はその言葉の意味がよくわかった。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 1 作家名:kei