yamatoⅢ 太陽制御の後で 1
<作業開始>
地球は電力不足で個々の通信も断たれていた。連邦放送だけが唯一の情報入手できる手段だった。
<ヤマト、太陽制御に成功>
このニュースは大々的に放送され各大陸で拍手喝采、歓喜に沸いた…が、それから数時間断つと不幸にもこの戦いで散って逝った戦死者の名前が延々と画面上を流れる。
ユキの両親はその文字を二人の名前がない事を祈りながら見つめていた。何度も繰り返し見ているうちに二人の名前がない事を確認した。
「…今回も犠牲者が出ているね。」(ユキの父)
「えぇ…そうね。また二人の結婚は遠のくのかしら?」(ユキの母)
「多分、そうだろうね…。まぁ…その事は二人に任せよう。」
人々は地下都市に避難していた。その地下都市も電力の供給がままならず空調の利かない蒸し暑い部屋にいた。
「ふたりは青い空の見える場所で式を挙げたらいい。」
ユキの父は窓から見える茶色の天井をみてつぶやいた
「お…降り始めたな。」
最初のポイントの南極付近に雨が降り始めた。やはりガミラスの攻撃の後を思うと雨の降るタイミングも早かった。
「この時間で雨が降るとなると2週間もあれば除去作業できるかもしれない。
地上の熱も…下がり始めたな…。」
真田は作業状態を確認すると満足そうに次のポイントへ向けて出発するよう、島に連絡した。
「第三艦橋にいる真田さんからの連絡で除去作業順調との事です。次の
ポイントへ移りたいと来ましたが…艦長…」
島が進の顔を見る。進はうなずくと島が真田に連絡をした
「真田さん、ポイント移ります。用意出来次第連絡ください。」(島)
<了解…OKだ。移ってくれ。>(真田)
技術班は防護服に身を包んでいた。第三艦橋を繋ぐエレベーターは隔壁閉鎖して艦底から上に放射能が行かないようにしてある。第三艦橋に置かれたコスモクリーナーDはハッチを開けて除去作業を行っていた。移動する時はハッチを閉めて移動しそのまま除去作業を行っていた。
「真田さん、防護服来てるとはいえ余り長く第三艦橋にいないでください。
みんなと同じで交代制でお願いしますよ。」(ユキ)
真田は人に任せるのが嫌いだったのでつい自分の眼で確認しないと、と思ってしまうのでユキが声を掛けた…が、無反応だったので
「真田さん?私が代わりに行きましょうか?」
ユキが真田に少し強い口調で言うと真田が慌てて
<…わかった、今すぐ戻るから…>
と返事をしてきた。第三艦橋に降りるクルーは全員男性となっていて将来子供を産む大切な体の女性はこの任務は危険と判断し外されていた。
「やっぱり生活班長>副長…だな。」(南部)
「当然だろ?生活班長>艦長なんだから。」(相原)
相原は念のためインカムを外して南部とコソコソ話をしていた。
「おい、その副長は“真田さん”限定にしろ。」
島がその話に割り込んできた。
「島は黙って操縦してろよ。」(南部)
「俺は休憩に入ったの。今操縦してるの太田。」(島)
南部と相原が振り返ると太田が次のポイントに向けて操縦していた。
「まぁポイントは太田が全部決めたから頭の中に入ってるみたいで…俺、余り
お呼びでない、って感じなんだよな。」
島が肩を回しながらつぶやいた。
「じゃぁ…ユキさん、島副長と一緒に先に休憩してきてくださいよ。」
相原がユキに声を掛ける。
「多分、真田さんも戻ってきますよね。一緒に食事しちゃってくださいよ。
真田さん、すぐ現場に戻る、って言いそうですから。」(相原)
「そうね、そうするわ。相原くん。そうそう、一つ訂正があるわ。
私は決して艦長や副長より強くないですから!…もう、黙ってれば好き放題
言って…島くんも否定してくれないと困るわ?」
ユキはそう言うと島の袖を引っ張ってエレベーターに乗った。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 1 作家名:kei