yamatoⅢ 太陽制御の後で 1
「古代は?」(島)
「今、報告する日報をまとめているわ。私、食べ終わったら食事を艦長室に
持って行こうと思ってるの。」
島とユキはエレベーターに乗っていた。食堂の階に着くとちょうど真田がクリーンルームから出てきたところだった。
「真田さん、お疲れ様でした。ちょうど休憩で食事を、と思っていて…ご一緒
しませんか?」
ユキが声を掛けると
「そうか?…じゃぁ。」
真田も一緒に食堂に入った。
食堂は閑散としていた。つい数日までたくさんのクルーがいた艦内と随分違っていた。
「真田さん、少し働きすぎですよ。」(ユキ)
「そうか?」(真田)
「そうです、余り上の者が動きすぎると下が休めなくなります。」(島)
「まぁ…そうなんだが…」
真田がちらっとユキ見た。
「今回は遊星爆弾の時に比べれば放射能が地下に浸透してる範囲が狭いから
時間的にも早く終わる予定だ。俺がいて早く終わるなら、って思ってしまう
んだが…」(真田)
「もう、真田さん?真田さんの眼力でコスモクリーナーDの動きが早まる訳
じゃないんですから…それより若い世代にこれで地球を救ったんだ、って
実感させるのもいいと思うんですけど?」
これだけはっきり副長に意見を言えるのはやっぱり生活班長だけかもしれない。……ユキは席を立ってコーヒーサーバーからコーヒーを持ってきた。
「どうぞ。」
真田にはエスプレッソが渡された。
「ありがとう。…うまいな。疲れが飛ぶよ…地球でコーヒーは飲めるかな…。」
真田が静かにつぶやく。島も焙煎の軽いシティローストのコーヒーをブラックで味わいながら飲む。
「…そうですね。また、高級品扱いになるんでしょうか?」(島)
「そうかもな。エスプレッソ、買いだめしておくか。どうしても飲みたくなる
時があるからなぁ…」(真田)
「それって眠くなると、ですよね?ダメですよ、眠い時は寝ないと…疲れも
抜けないし、身体に悪いですよ?」(ユキ)
「そうですよ、寝た方がいいですよ。真田さんが倒れると困りますから。」(島)
「島くんの言う通りです。…真田さんのシフトは…(ユキが通信機のスケ
ジュール機能を作動させる)あ!OFFじゃないですか!ダメですよ、他の
クルーに示しがつきません!ちゃんと休んでください!!」
ユキが呆れた顔で怒る。真田が島に救いを求めるような視線を送ったが
「真田さん、無駄な抵抗ですよ。6時間勤務、シフト自分で組んだでしょ?
そのシフトの時間だってユキと相談して決めたんですよね?やっぱり決めた
本人が守らないとダメですよ。」
島も苦笑いで真田を見た。と、ユキが“失礼”と言って立ち上がると一食分の食事をトレイに載せて二人の所へ戻って来た。
「古代の分?」(島)
「そう。」(ユキ)
「……それ、俺が届けるよ。」(真田)
「そんな事副長にさせられませんわ。」
ユキが“副長”部分を強調するが
「まぁ…あいつにも休憩が必要だろ…どれ、もう一杯エスプレッソもらって…
(席を立ちトレイを持つと)先に戻るな。」
真田はカウンター横のコーヒーサーバーに寄ると出口でユキと島を見て食堂を出て行った。
「ちゃんと休んでくれるかしら?」
ユキは自分のコーヒーを飲んでつぶやいた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 1 作家名:kei