yamatoⅢ 太陽制御の後で 2
「ただ今戻りました…沖田艦長。」
メインクルーは静かに黙とうを捧げる。日も暮れて英雄の丘はきれいな夕日が見えた。
「帰って来たな…」(島)
まだ一般市民は地上に出ていない。タクシーも地下都市のエレベーターで待っている。有害な紫外線にさらされてレリーフは少し焼けたような色をしていた。
「洗浄が済んだらまた来よう。大統領も待っているし…」
真田の言葉にクルーは頷くともう一度沖田を見上げ戻って行った。
「戻って来たか。」
地下都市の防衛軍の本部に戻ると真っ先に藤堂の所へ向かった。藤堂はドッグの時と違い満面の笑みで迎えてくれた。
「ありがとう…やはりヤマトが地球を救ってくれた…今までの辛い航海の
賜物だったな。」
藤堂はあのデスラーが味方になってくれたことを指していた。もしデスラーの復讐心が復活したらルダが保護されていたファンタムに行く事もなかっただろう…
「今日の予定だが…南部ホテルの迎賓館で天皇を交えて交流会が行われる
ようになっている。一応、正装となっているので…着替えは向こうで
するよう手配してある。エアカーを手配してあるからこのまま向かって
ほしい。ユキも正装となるから…頼むな。」
藤堂の言葉にユキは“ドレスを着る”事だと思い苦笑いをした。
少し藤堂と歓談した後クルーはエアカーに乗り込み南部ホテルに向かった。
「うへぇ、タキシード、だろ?南部は着慣れてるからいいだろうけど…」
太田がお腹をさすりながら言う。
「ははは、まぁ恰幅のいい体型もスリムな体型も基本タキシードは誰でも
似合うからな。」
南部は進に視線を合わせた。
「ただ、童顔には似合わないんだ。お前きっと七五三みたいになるぞ。」
南部の言葉に誰もが笑った。
「山崎さんはきっとおば様方にモテますよ。その白髪交じりの髪にタキシード
はめっちゃかっこいいですからね。」
南部が頷きながら言った。
他愛もない話をしてる間にエアカーは南部ホテルに到着した。車寄せに止めるとすぐに係員がやってきた。
「お待ちしておりました。係りの者がご案内しますので…女性の方は
別の係りの者…今、参りました。あの者がご案内させていただきます。」
そう言うと係員はクルーの男性陣を控室に連れて行った。ユキも別の係員に付いて別の控室へ向かった。
「ホテルは通常営業していたの?」
南部が係員に聞く
「いえ、実はヤマトが放射能除去してる間に再雇用の報告がありまして…。」
南部はそれを聞いて驚いた。父が解雇を選ぶという事はかなりせっぱつまった状態だったことを意味する。
「康雄様、ですよね。だけど私達は社長を信じておりました。」
係員はきっぱりそう言った。
「社長は解雇当日こう言いました。“この危機を乗り越えたら必ず呼び戻す
だから希望を捨てず待っていてほしい”と。そして最後の日、一般の社員
全員と握手をしながら別れました。社長はヤマトを待っていたのだと
思います。ヤマトが戻って来ると信じてそう言ったんだと…ヤマトが
戻ってきてすぐ、再雇用の通知が参りました。その通知を見て…私は
不覚にも涙が出てしまいました。通知は普通のものでしたが社長の一言…
手書きの付箋が付いていて“生きているか?必ず来てくれ。待っている”
と書かれていました。こんな一般社員に…忙しい方なのに…。再雇用で
こちらに伺った時も握手で迎えてくれました。とても暖かい手でした。
その時思ったんです。社長は康雄様を信じてらしたんだ、と。」
エレベーターを降りて“こちらです”と部屋を案内する。
「すみません、言葉が過ぎました。本当にお疲れ様でした。(部屋に入り
ながら)こちらのクローゼットにタキシードをご用意しました。もし
サイズが合わなければあちらのウォーキングクローゼットの中に予備を
入れてあります。そちらで対応していただければと思います。
(クローゼットの中の色の違うハンガーのタキシードを手に取って)こちらは
康雄様のタキシードでございます。奥様よりお預かりしました。」
南部はタキシードを手に取ると“ありがとう”と言った。
「それではご用意できましたがお呼びください。」
係員はそう言うとクルーの部屋から出て行った。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 2 作家名:kei