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yamatoⅢ 太陽制御の後で 2

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  「いやぁ…婚約者がいるとわかっていても目を奪われるよなぁ…」

須藤が正直に言うと

  「本当ですね、女性の私でも見入っちゃいましたから。お化粧ののりも
   とてもよくて…テレビに出る人よりうんとキレイです。」

木村はホテルのインスタントコーヒーを入れて須藤の前に置いた。

  「ありがとう…康雄はなぜ、口説けなかったのかな?」

須藤はクスっと笑いながらコーヒーを飲んだ。







  「お待たせしました…後ろ、大丈夫ですか?」

ユキが部屋から出てきた。須藤も木村もその美しさに呆然としてしまった。

  「…似合わなかったかしら?」

ユキの寂しそうな声に須藤が我に返った

  「いえ…余りにもきれいだったから…いや、すみません。」(須藤)
  「素敵なドレスですもの…」

ユキの寂しそうな瞳が気になる須藤…

  「なぜ、その色を?せっかく太陽を制御したお祝いなのに…」

須藤の言葉にユキは息を止めた。

  「お祝いじゃありませんわ…私たちにとって…この会は亡くなったクルーの
   生前を偲び送る場…」

須藤はなぜこの色を選んだのか判った…

  「森さん…」(木村)
  「今回もたくさんのクルーが亡くなりました。目の前で倒れて行くクルーを
   救えなかった…」

ユキの大きな瞳が揺れる。

  「ごめんなさい、地球が救われた事は素晴らしい事で…それが一番なの。
   だからこそ私達はお祝いなんてできない…今日は大統領が言い出したから
   仕方なく…なのよ。長官はそんなことする人じゃないわ。」

木村はそっとユキにハンカチを渡した。

  「ありがとうございます…」

ユキはそっと目頭を拭いた。













  「森さんの用意が出来た。そっちはどうだ?」

須藤が南部と連絡を取っていた。

  <こっちは準備万端だ。>

南部の声がユキにも聞こえた。

  「じゃぁロビーで。」

須藤がそう言うと木村と須藤と一緒にユキは部屋を出た。









クルーはロビーで落ち合うとそのまま大ホールへ向かった。










  「おぉ!待っていたよ。」

クルーが大ホールに入るとすでにパーティーは始まっていた。大統領と天皇陛下が並んで座っていたので進を始めクルーが席の傍へ行き挨拶をした。

  「任務、ご苦労だった…われわれは諦めかけてしまっていた…しかしヤマトは
   戻って来てくれた…希望を乗せて…本当にありがとう…」

大統領が順番に握手をして行った。

  「地上に戻る日は近い…パーティーと言っても食料が配給制だったから
   たくさんはないが我々の気持ちを受け取ってくれ…」

大統領が立ち上がると天皇を含めすべての人が立ち上がった。

  「このヤマトクルーのおかげで我々はまた地上で暮らす事が出来る。多大な
   犠牲を払い地球は平和を取り戻した…われわれ地球市民はヤマトだけで
   なく他の探査船にもお礼を言わなくてはならない…たとえそれが道半ばで
   力尽きてしまっていても…ヤマトの大いなる希望、そして失われた命に
   黙とうを捧げる…」

会場は静かになった…ユキは大粒の涙をこぼした。






黙とうが済むと大統領がユキの元へやってきた。

  「森さん、任務ご苦労だった。」(大統領)
  「ありがとうございます。」(ユキ)
  「今日はまたシックなドレスだね」(大統領)
  「はい…出来れば喪に服したいぐらいです。ヤマトの航海の後はいつも
   そう思います。生きて帰ってよかった、じゃなくて…死んでしまった人の
   為に私に何ができるだろう、って思うんです。」

ユキの言葉に大統領は衝撃を受けた

  「ヤマトのクルーはいつもギリギリのところで頑張ってくれている…
   自分を追いつめてはいけないよ。」(大統領)
  「そうですね…」

ユキの思いつめた瞳が揺れる

  「ところで…私の秘書を、と言う話はいつ飲んでくれるのでしょうか?」

大統領がユキに向かって言った。

  「藤堂の所に新しい秘書が来た。お孫さんと聞いたが…森さんの戻る場所は
   もうない。どうかね?私の所へ来なさい。」(大統領)

大統領が直々に口説きに来ていた。

  「すみません、大統領…私は有事にヤマトで飛ぶ任務がございます。日本に
   いられるならまだしも…」

ユキと大統領が話してる所を見かけた藤堂が慌ててやってきた。

  「大統領、困ります。私の秘書ですから私を通していただかないと…」(藤堂)
  「…安心したまえ…私はフラれたよ。」

大統領はそう言うと手を振って別のグループのところへ行った。





作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 2 作家名:kei