yamatoⅢ 太陽制御の後で 2
二人がフロアーに戻ると真田が誰かと話をしていた。後姿だったが進はすぐに誰かわかったので声を掛けた。
「お久しぶりです…復職されたのですね。」
進はサイモン博士の胸元にあるバッジを見て言った。
「ヤマトのおかげです…ヤマトが…藤堂長官が私を信じてくれたから…
本当にありがとうございました。」(博士)
「いえ…お礼を言いたいのはこちらです。結果、第二の地球は見つけられ
ませんでしたが…原因の星間戦争も落ち着きそうですし…」(進)
「大変でしたでしょう?戦いに巻き込まれたと長官から聞きました。私は
あれから国に帰りましたが長官が心配されていて…時々連絡をくれました。
本当にいい方です。長官がいなければ復職できなかったかもしれません。
これからはヤマトの航路を中心に銀河系中心部の研究をしたいと申し出
ました。いろいろ参考にさせていただきますのでよろしくお願いします。」
博士は深々と頭を下げた。進はこの人がいなかったら…いや、別の人間が太陽の異常を見つけてすぐに行動を起こしたとしても…ファンタムに辿りつかなければシャルバートの協力は得られなかったから…破滅の道を辿っていたかもしれない…
「どうぞ、小さな事でもなんでも参考にしてください。」
進は笑顔でそう言った。
「何か変わった事があったら長官と同時に私にも教えてほしいですよ。」(真田)
「え?真田さんにですか?」(博士)
「えぇ、お願いします。」
真田が深々と頭を下げる。
「どんな小さな事も見逃しちゃいけないんです。あの惑星破壊ミサイルも
太陽系に入った時に見つけていればなんてことなかったんだ。」
真田が悔しそうにつぶやく
「そうですね…その通りです。微力ながら協力できる事は惜しみません。」
ユキはその三人の会話を聞いていた。
いつも結婚を考えようかという時期に限って有事が起こる…今回は太陽…じゃぁ次は?
(次?また何かあるの?)
ユキの頭の中で何かが回りだした。
(いや…古代くんがまた行ってしまう…)
ユキの心は不安でいっぱいだった。
「古代、そろそろいいぞ。疲れてるだろうから自由に退室してくれ。」
藤堂がソファーに座る進に向かって言った。
「長官…」(進)
「ゆっくりしたいだろう…フロントに頼めばタクシーを用意してくれる。」
藤堂はそう言うと進の肩を叩いた。
「ユキも連れて帰ってくれな。あ、そうそう、荷物は寮に送ったからその
まま帰ってくれ。」
進はタキシード、ユキはドレス姿…二人はお互いの姿を見合って笑ってしまった。
藤堂はクルー一人一人に声を掛けて回っていた。
「帰ろうか…」(進)
「うん。」
進が声を掛けるとユキが素直に頷いた。
「一度寮に戻って鍵持って三浦に行こうか?」
進の提案にゆきはにっこり笑った。
「そうね、行きましょう。お墓参りもしましょ。」
ユキはそう言うと立ち上がった。少し立ちくらみがした
「疲れちゃったみたい。」
進がそっとユキを支えてフロアーをゆっくり出て行った。
「う~ん、最後まで見せますねぇ~」(南部)
「古代、ちゃんと支えられるか?代わるぞ?」(島)
「支えるだけなら…」(太田)
「うん、太田が一番安定しそうだ」(相原)
二人の出て行く姿を心配そうに見てるのは真田だ。真田の所へクルーが行くと
「おう、お疲れさんだったな…俺たちも帰るとするか?」(真田)
「それもいいですが…今までノンアルコールじゃないですか。上にバーが
あるんです。行きませんか?」(南部)
「飲んでいいのか?」(太田)
「もう、お役御免だろ?それにこの恰好じゃ居酒屋に行けないぞ?」
南部がタキシードの裾をヒラヒラさせる
「そうだな、何事か?って思われるな」(相原)
「ははは…確かに…だけど私は帰ります。」(山崎)
「え~山崎さん帰っちゃうんですか?」(太田)
「えぇ、妻が待ってますので…」
山崎の得意のセリフが出た。その一言に勝てる言葉はない…。山崎はにっこり笑うと“じゃぁ”と言ってフロアーを出て行った。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 2 作家名:kei