yamatoⅢ 太陽制御の後で 3
「きゃっ」
進が通信室から出ると荷物を抱えた女性とぶつかった。
「あ、ゴメン、大丈夫?」
進は抱えていた荷物を拾い女性の手を取り立たせた。
「すみません、ボーっとしていたもので…」
進はその女性の顔を見てドキっとした。
(水田さん?)
以前お世話になったチーフの水田優子によく似ていた。
「あ、古代艦長ですね?」
進が拾った荷物を“ありがとうございます”と言いながら受け取ると敬礼した
「本日、イオより乗艦します林田美樹と申します。よろしくお願いします。」
進は名前を聞いて冷静になる自分を感じた。
「…あぁ、連絡は受けている…地球までの1週間だが頼むな。」
進も敬礼で返す。美樹はにっこり笑うと90度に頭を下げて艦内を走って行った。
(びっくりした…よく見たらそっくりじゃないな…だけどなんとなく似てるな。)
進は美樹の後ろ姿をしばらく見ていた。
(うわぁ~乗艦して最初にあった人が古代進なんて運がいい!)
進は婚約してるとはいえ軍の女性のあこがれの的。その指揮官の艦でに乗れると思うと自然と顔がにやける。
(これが古代進の指揮する艦…うわぁ~感動!!)
美樹は居住区に向かい自分の部屋を探した。
(ここだわ…)
扉の所を見ると自分の名前しか載っていない。部屋に入ると壁に埋め込まれてるベッドは2つ…二人部屋だった。
(個室じゃないのか…残念!…まぁ下っ端だから個室な訳ないか。)
美樹はベッドの下にあるデスクを壁から倒すと荷物を載せた。
美樹は戦闘班所属で艦載機のパイロットだった。人手不足でイオに配属になっていたが配置換えのため地球経由で月面基地に向かう途中で進の艦に乗ったのだった。
進は艦長室に戻り林田美樹の履歴を読んだ。
(2年前に訓練学校卒業…成績に関しては記載なし、という事はトップじゃ
なかったという事だな。)
進に忘れかけていた淡い想いがよみがえる…しかし想い出した水田優子の顔はすぐにユキに代わる…
(水田さん、ごめんなさい。やはり俺にはユキしか見えません)
進は水田の最期のメールを思い出した。誰にも読まれないように封印したメール…仕事の端末のメールは全てパスワードがかかっている。進は古いメールボックスを呼び出した。あれから何度も端末は新しくなったがこのメールだけは開かずともずっと移項してきた。
一度しか開いたことのないメール…進はこのメールだけに付けたパスワードを叩いた
古代くん
きっともう私たちは生きて還れない。戦う事も出来ず死んで
しまうわ。もう格納庫に火が入ったみたい。時間の問題だわ。
機関部に火が入るまで少し時間がありそうだけどここの構造上
格納庫を通らないと救助艇に乗れないから助からないわ。
最後に古代くんに抱かれていい思い出が出来たわ。
女として生きられて良かったって思ってる。
うんと年下だったけど私古代くんの事好きだった。
訓練中のあの殺気立ったオーラを纏った古代くんも
食事中の無防備な古代くんも私は愛していました。
私の勝手な気持だけで古代くんの気持ちを無視してごめんなさい
平和な時代に生まれていたらって思います。
いつか地球が平和になったら…古代くんは私の分まで幸せな
恋をしてください。
少し…気が遠くなり始めました。
呼吸が…肺が酸素が足りないと言ってるかのようです
頭痛がし始めました。一酸化炭素中毒になりかけてるようです
このまま意識がなくなればきっと楽に死ねるはず
ありがとう… 水田ゆうこ
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 3 作家名:kei