yamatoⅢ 太陽制御の後で 3
「ひどいもんだ…絶対にヤマトには乗せられないな。」
昨日の美樹のレコードを見て進がつぶやいた。最初、ユキも100%じゃなかったが98%だった。死にたくなければ正確に撃て…ユキにも厳しく指導した。そのおかげでヤマトのメインクルーは非常に高いレベルを保っている。
「ユキと相原と…平田…」
平田のレコードだけがその後更新される事はなかった…今も平田の顔を時々思い出す…。
「相原は出来て当然だな。俺たちと同じ訓練していたんだから…」
もうすぐ地球に戻れる…後5日…長い任務も終わりに近づいていた。
「やってる…」
美樹は静かに射撃訓練室へ入った。機械的な音が響いている…その部屋を覗くと進がいた。
(かっこいい…)
美樹が見とれていると進が部屋から出てきたので敬礼をした。すると進も笑顔で敬礼で返す。
「来たな?コスモガン、見せてみろ。」(進)
「…はい。」
美樹はコスモガンを進に渡した。進はコスモガンをいじりながら
「中野はいい腕してるだろ。」
と言った。美樹は驚いてなにも言えずにいると
「俺もユキのコスモガンカスタマイズしてやったからな。最初は無理だろう
暴発する危険性もあるし…」
進は“よし”と言いながら美樹にコスモガンを返した。
「時々整備してやれよ…カスタマイズしてる所は一緒に見てたんだろ?」
進の言葉に美樹が頷く
「危ないけど自分でやらないといつまでたっても覚えないからな。」(進)
「森さんもご自分で?」(美樹)
「当然だよ。最初だけ設定してあげただけで…後は全部自分でやってた。
あのスコアーの一番上…それがユキだよ。彼女は正規の軍人じゃない。
それでもあそこまで成果を上げる事が出来るんだ。このスコアーじゃ
恥ずかしくて訓練学校出ました、なんて言えないぞ。」
進はそう言いながら訓練のレベルを最低限から少し上に設定した。
「さて…始めようか。」
進の顔から笑顔が消えた。
「ありがとうございました。」
美樹は汗だくだった。訓練が終わったと思ったらそれと同時に少しレベルを上げた射撃訓練が始まる…
「疲れただろ?疲れてホッとした時に油断する…戦闘中に休憩なんて
ないんだ。集中力を維持できなければ命を守る事はできない。」(進)
美樹は進の言っている意味が分かったが体が付いて来ない。ヤマトの訓練は異常なほど実戦に近い事は聞いたことがある。それも予告なく突然始まったりするとも…ヤマトが強い理由を垣間見た気がした。
「明日も気が向いたらおいで。」
進はそう言うと美樹を置いて射撃訓練室を出て艦長室へ戻って行った。
(うそでしょう?森さんもこんな訓練したのかしら?まさか…自分の彼女に
こんなヘビーな訓練課さないわよね?)
美樹はしばらく射撃訓練室の控室から出られなかった。
「古代艦長」
副官が廊下で進を呼び止めた。
「どちらに?」(副官)
「あぁ、少し出来の悪い後輩をしごいてた。」(進)
「林田ですか?」(副官)
「そうだ。月面基地での成績によって…彼女はパイロットを降ろされてしま
うかもしれないらしいから…そうならないためにもここでできる訓練は
させてあげようと思ってね。(進)
「…でも…」(副官)
「パイロットになるために努力したはずだ。“甘え”を取り除かないと
彼女はこの先どこに行っても中途半端で終わってしまうだろう。それだけは
避けたくて…出来る限りやってダメだったらしょうがない…諦める
しかないだろうけど…」(進)
副官は苦笑いしながら言った。
「まぁいいですけど…奥様…いや、森さんがヤキモチ焼かなきゃいいんです
がねぇ…個室で付きっきり、と言うと悪い噂も立つかもしれませんよ。」
すでに一部の乗組員が個人レッスンの事をいいようにとらえ始めていた。
「言いたい奴には言わせておけ、です。死にたくなければバカな事言って
ないで自分のやる事をしっかりやれ、です。」
進はそう言いながら林田のレコードを見せた。
「昨日は75%でしたが昨日、今日の訓練で85%に上がりました。まだまだ
ですが結果は出ます。」
副官はそのレコードを見て驚いた。
「林田をもう一度パイロットとして配属させられるまで気持ちを入れ替え
させます。」
進の言葉に副官もうなずいた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 3 作家名:kei