yamatoⅢ 太陽制御の後で 4
「…起きたか?」(進)
マークは無言だった。視線を合わせる事が出来なかった。
「どうやって部屋に入った?」(島)
島は進の肩を押さえユキの方を見て“ユキのそばにいろ”とアイコンタクトをした。進はマークをにらみつけながらユキのそばに座り手を握った。
「彼女が…扉を開けた瞬間に…後ろから…」
マークが小さな声で答える。
「そして」(島)
「押さえつけて…ベッドに運んだ…」
進の手の力が強くなる。
「古代、ユキの手首見てみろ。」
島が視線はマークから外さず進に声を掛けた。進がユキの手首を見るとまるで縛られたようなあざが出来ていた。
「あざ、あるか?」
島の問いかけに進が“ある”と答えると
「それだけユキが抵抗したって事だ。ユキは必死に抵抗した…多分、普通の
女性に比べるとユキの力は強い。お前はそれに驚いて力いっぱい抑えつけ
たから…」
島がマークの胸元を掴んだ。
「お前を…絶対に許さない。ぶっ殺してやりたい…。」
島はそう言うと警察に電話をした。ユキが立ち上がろうとしたがそれを進が制した。
「これは犯罪だ。それも立場を利用してユキを会場に呼んで…計画的犯行だ。
許されない事だ。」
島は掴んでいた胸元を叩きつけるように離した。マークは床に叩きつけられるように倒れこんだ。
数回コールの後相手が出たようで島は事の成り行きを話し、パトカーを要請した。
「ユキ、落ち着いたか?」
警察が帰り島も気を利かせて戻って行った。別のホテルの部屋に二人は移動していた。
「お腹空いたか?」
日付はとうに変わっていた。ユキは進の問いに首を振った。
「なぁ…ショックを受けてる所悪いんだが話を聞いてくれるか?」
進はユキの顔を覗きこむようにした。ユキもずっと気になっていた事だと思い頷いた。
「多分…ユキは何かを感じていたと思う。それで不安になっていたんじゃ
ないかな、って思ってた…」
進は言葉を選びながらユキにゆっくり話を始めた。林田 美樹との出会いとそれからの絡みを…。
「多分、近いうちに噂を流すか…セクハラかパワハラを受けたと訴えに出るか
どっちかだと思うんだ。ユキには辛い思いをさせてしまうかもしれない。」
進の訴えにユキは何の言葉も出なかった。
「ユキは俺を信じてくれるか?」
進の問いかけにユキはやっと口を開いた。
「あの状況で私を信じてくれた古代くんだもの…信じられるわ。私は大丈夫。
どんな噂を流されても…耐えられるわ。あの噂に比べれば…たいした事
ないわ…大丈夫よ。」
ユキは腫れた手首に巻かれた包帯が痛々しい手でそっと進の手を包んだ。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 4 作家名:kei