yamatoⅢ 太陽制御の後で 4
ユキの頭が真っ白になった瞬間ユキのバッグの中の携帯が鳴った。マークも一瞬力が抜けた。
ユキはその瞬間を見逃さずマークを突き飛ばすとはだけた前を押さえながらドア近くに落ちていたバッグを持って部屋を出た。
<ユキ?終わった?>
ユキはトイレに逃げ込んだ。相手は進だった。ユキの大きな瞳から涙が零れ落ちる。
<ユキ?どうした?>
ユキの涙を見て進が慌てる。その様子を島も見ていて進の横に座り画面を見て驚いた。ユキのセットされた髪が乱れ片手で胸元を押さえて泣いている。
<古代、すぐに迎えに行こう。>
島が立ち上がると清算を済ませてそのまま店の前からタクシーに乗りこんだ。
<ユキ、誰も来ないかい?>
進の問いかけにユキは頷く。ユキの居場所はGPSが教えてくれる。運転手にホテルの名前を告げると5分ほどで着いた。
<どこにいる?何階だ?>(進)
「4階の…エレベーターホールのそばのトイレ…」
ユキが小さな声で話すと急にユキがビクついた。その時ドンドンと扉を叩く音が聞こえた。
「ユキさん、ここにいるんでしょう?もう、逃げられませんよ!」
進の携帯に流暢な英語が聞こえてきた。
(あの時の男か?)
進は島と目を合わせるとフロントの制止を突っ切って階段で4階までダッシュで上がった。
「懲りない男だな」
進が女子トイレの扉をガンガン叩く男の肩を掴んだ。マークはびっくりして進の顔を見た。
「お前は…」(マーク)
「忘れたわけじゃないよな?ユキのフィアンセだって自己紹介したはずだ。」
進は戦闘オーラ全開になっていた。マークはドアを叩いていた拳をそのまま進に向けた。
「ユキ、もう、大丈夫だよ。ここ、開けて。」
ユキが静かに扉を開けると目の前に進が立っていた。
「怖かったよな…もう、大丈夫だから…」
ユキが進の腕の中で何度も頷く。進は下げられたファスナーに気付いて自分の上着をユキに着せた。
「後ろ、あげようか。」
ユキは恥ずかしそうに頷くと進がそっとファスナーを上げた。
「バカだよなぁ…ユキに手を出したらこうなるってわかんねぇのか?」
マークは進の拳を数発を横っ腹に食らった後そのまま後ろにいる島に引き継いだ。島はふらつくマークのみぞおちにもう一発くらわせるとそのままふらふらと3歩ほど歩きバタンとトイレの外の廊下に倒れた。
「ヤベ…ここ目立つじゃん?ユキの部屋、どこだろう?」
島はマークを酔いつぶれた友人のふりをしようと思い壁までずるずると運び座らせた…がそのままぐったりしている。少し経つとユキが進の上着を羽織ってトイレから出てきた。
「古代、ここじゃ目立つ…ユキ、部屋に戻れるか?」
ユキがバックの中を見ると部屋のかぎが入っていた。カギを解除した時バックにちゃんと戻したらしい。
「古代、扉開けといて…俺、運ぶから。」
進はユキを部屋に戻しソファーに座らせて部屋の扉を開けるためにストッパーをすると島と一緒にマークを部屋に運び扉付近で放った。
「ユキ、奥で着替えておいで。」
進がそう言うとユキは頷いて着替えを持ってベッドルームへ向かった。進と島はソファーに座ってマークを見ていた。
「こいつ、どうやって…」(島)
進は無言だった。島は進の気持ちが痛いほどわかったので肩を叩くと備え付けの電子ポットでお湯を沸かし始めた。お湯はすぐに沸いたのでコーヒーを入れた。しばらくするとユキが着替えて二人の所へ来た。
「グッドタイミング…ほら…インスタントだけど。」
島がユキにミルクのたっぷり入ったコーヒーを手渡した。とたんに両目から涙が落ちる…
「暖かいの飲めば少し落ち着くだろう?」(島)
「ありがとう…」
ユキは涙を拭きながら進の横に座った。進はユキの白い肌に残る赤い跡を見つけてしまった。仕事柄人目に付くユキの為に進は決して見える部分に跡を付けたりしない…
進は立ち上がると扉の所でのびているマークの首元を掴んで殴りかかろうとしたところを島に止められた。
「古代、やめろ!無抵抗のヤツをぶん殴ったらお前がヤバイ!」
力いっぱい振り下ろされようとした拳を島が必死で止めた。島もユキの首元に赤い跡を見つけてしまった…が同僚を犯罪者にするわけに行かない。進自身、これから何が起こるかわからないのに…
この声にマークが腹を押さえて起きた。
「痛て…」
マークが体を起こそうと視線を上に向けた時二人の男が自分を見下ろしていた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 4 作家名:kei