yamatoⅢ 太陽制御の後で 4
<どうした?>
島が心配そうに聞いていた。ユキは何から話していいかわからない。
<家族寮にいるんだろ?ラウンジで10分後会おう>
島はそう言うとユキの返事を待たずに携帯を切った。
「今のユキさん?」
島の部屋に相原が来ていた。
「あぁ…何かあったみたいだ。喧嘩じゃなさそうだし…ちょっと心配だから
様子を見てくる。悪いな、相原。」
島はそう言うと上着を羽織りさっさと出て行った。
「島くんもユキさんの事となると…さて、部屋に戻って…調べものでも
するかな。」
相原は島の隣の部屋。島が部屋のカギをしないで出て行ってしまったので
「ここ、誰も部屋にいないとロックかかるんですが…カードキーも持たない
で行っちゃったし…。(イスを移動して扉の所には挟む)自分の端末持って
来よう…。」
相原は一度自室に戻り端末を持って戻って来た。
「さて…古代くんの護衛艦は…」
独り言を言いながら何やら検索を始めた。
「ごめんなさい。」
ユキがラウンジで待っていた。
「いや、大丈夫か?寒くないか?」
島はお風呂から上がったばかりっぽい少し濡れた髪を束ねただけのユキを心配した。冷えないように少し厚着をして来た。
「大丈夫…髪も少し乾かしたんだけど…島くんも疲れてる所ごめんなさい。」
ユキが申し訳なさそうに言うと
「輸送船団の団長だからね…自分が舵取る訳じゃないから今回は結構暇
だったんだ。」
ラウンジの一番奥のソファーに二人は座った。
「何があった?」
島がユキに聞いた。
「わからないの…ただいつもと違うの。」
ユキが下を向いたまま話し出した。
「航海中、何かあれば“こんなことがあった、こうだった…あいつがこうで、
だけど本当はああだった…”とかいっぱい話すのに何も話さ ないし…食事も
手に付かないみたいで…」
ユキは島の眼を見た。
「多分…女性で何かあったんだと思うの。」
ユキの一言に島は驚いた。
「何があっても食事だけはちゃんとするの。体が資本だって…」
島はユキの話をじっと聞いていた。
「ねぇ…何か変わった事なかった?」(ユキ)
「う~ん、最後に会ったのはイオだったけど…特に変わった様子は…」
一度飛んでしまうと寄港するところまで会う事はない。
「そう…あのね、明日なんだけど…古代くんと二人で会ってほしいの。
そしてそれとなく話を聞いてみて?男同士の方がいい時もあるでしょう?
私は急ぎの仕事が入った、ってことにするから…」(ユキ)
「待てよ、ユキ…あいつに限って女とどうこう、ってないと思うぜ?」(島)
「私もそう思いたいけど…古代くんが良かれと思った事が相手にとって
同じとも限らないわ。」(ユキ)
「ユキ…」(島)
「お願い、聞き出して…多分アルコールのピッチ、早いと思うから酔う前に
話を切り出して…島くんになら全部話すかもしれない。」(ユキ)
「わかった…明日聞いてみるよ。」
島はそう約束するとユキがやっと安心したようでソファーの背もたれに体を預けた。
「よかった…ありがとう。穴埋めにランチ、ごちそうするわ。しばらく地球に
いるんでしょう?」(ユキ)
「あぁ…いるよ。」
言葉と裏腹に島の顔が一瞬何かを感じてる顔になった。
「ねぇ…何か……感じる?」(ユキ)
「ユキ…?」
島はイオを出る時の事を思いだした。
「時々なんだけど…嫌なノイズを感じるの…誰も気づかないんだけど…
真田さんに言ったら今調べてる所だ、って言ってて…相原くんも真田さんと
一緒に調べてるみたいだけど…わからない、って…。」
島は“同じだ”と思った。
「ユキ、俺たちも同じ事を感じていて真田さんに調べてもらったんだが
返事は異常なし、だった。だけど真田さんはその返事に納得できず
独自で調べてみる、って返事だったんだ。イオを出る時…あいつと飲ん
でてその話になった。」
島がそう言うと
「イオで古代くんと飲んだの?」(ユキ)
「あぁ…だけどその時はいつもと変わらなかった…反対にいつものあいつ
だったから違いがよく解るかもしれないな。」
島が笑いながら言った。
「地球に戻る時、いつも到着時刻の報告を私にも送ってくれるんだけどその時
相談したい事がある、って…だけど何も言わないの…。」(ユキ)
「大丈夫だよ…ユキ。心配するな…俺たちが付いてるから。」
島はそう言ってユキを安心させて部屋に戻らせた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 4 作家名:kei