yamatoⅢ 太陽制御の後で 4
ユキはそっと部屋に戻って来た。進は変わらずソファーに寝たままで出かけて行った時かけた肌掛けもそのままだった。ユキはネグリジェに着替えるとリビングに戻った。
「よかった、途中目が覚めたら私がいなくて大騒ぎしちゃったかも…」
ユキは進を起こした。
「古代くん、ベッドで寝ないと風邪引いちゃうわ。」
ユキの冷たい手を進のほほに当てると進はびっくりして起きた。
「ユキ?随分冷たい手をしてるじゃないか!風邪引くぞ?風呂から
上がってどれぐらいたつんだ?」
進はユキの両手を包むのようにして自分の手で温めた。
「大丈夫よ、古代くんが横で寝れば暖かいから。」(ユキ)
「え?寝ちゃうの?」(進)
「ダメよ、寝不足はお肌によくないのよ?」(ユキ)
「大丈夫だよ、一日くらい…」(進)
「古代くんは今寝てたからいいけど……」
ユキの言葉は進の熱いキスで遮られた
「え?ユキ、行かないの?」
「ごめんなさい、軍に顔を出さないとダメになっちゃったの。」
幸か不幸か長官から正装で迎賓館に来てほしいと急な仕事が入ってしまった。
「仕事じゃしょうがないか…たまには三人でゆっくり、って思ったのに…」
進が本当に残念そうにつぶやく。
「私独身寮にも戻って用意しないと…(イブニングドレスが置いてある)
島くんにも穴埋めするから!って伝えておいてね。」
ユキが優しく進のほほにキスを一つして部屋を出て行った。
ユキが出て行った部屋に一人寂しく残された進は昨日飲んだままのウィスキーがテーブルに置いてあるのを見た。
(これ飲んだら効いちゃったんだよなぁ…)
グラスに残っていた分は捨てられていてグラスは棚に戻されていた。
(しかし…ひとりだと広いな…)
なんだか冷えてくるような…そんな寂しさを感じた。
(だからユキは俺がいないと独身寮に戻るのかな?)
進は改めてユキに寂しい思いをさせてる事に気付いた。
(本当に仕事になっちゃうなんて…)
ユキは独身寮に戻ってクローゼットを開いた。今まで何度かフォーマルで出席しないといけない事があったのでドレスが数点、クローゼットにはいっていた。どれも全て南部のいとこのデザインしたもの。派手でなく、護衛として銃を持っているのでそれが表に出ないスレンダーだけどふんわりとAラインのものが基調になっていた。
(須藤さん、お借りします)
ユキは心の中でそう思うと紫紺のドレスを手に取り小物の箱からジュエリーを取り出すとそれをポーチに入れてキャスター付のバッグに入れて急いで軍に向かった。
「すまんな、ユキ。休暇届出ていたのに…どうしてもユキに会いたいと…」
予定で地球連邦の大統領が来るようになっていた。もちろん、その息子も…ユキはそれが分かっていたので有給を取っていた。大事な会議だったが…以前はユキ一人だった秘書も今は伊藤も秘書になっていたのでユキが有給をとっても困る事はなかった。
「いえ、何となくそうなるかも、って思っていましたので…」
ユキは先に美容室へ行って髪をセットしてもらっていた。
「準備、時間がかかるだろう?」
藤堂はそう言うとユキは軽く会釈をして秘書室の控室に入って行った。
「晶子じゃまだ役不足でな…」
藤堂はユキに聞こえないように独り言を言った。晶子はまだヨコスカの基地にいる。訓練を兼ねて研修中なのでまだこのような大役を与える事は出来ない。ユキの様に多国籍の言葉を話し藤堂の横で自然と通訳も兼ねてくれる…そんな秘書はどこにもいなかった。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 4 作家名:kei