yamatoⅢ 太陽制御の後で 5
「私が…証言します…万一の時は…声を掛けてください。」
中野が震える声で…だけどはっきり言った。
「同期…だぞ?」
進が静かな声で言った。
「大切な同期が道を反れそうになっているのを見過ごすわけに行きません。
林田を正しい道に導くためにも…私は正しい事を知っているので…艦長…
証言が必要な時は…必ず私に声を掛けてください。」(中野)
「…ありがとう。その時は頼むよ…そうならない事を祈るけどな。」
進は苦笑いをした。できれば…上の人間が自分を信じてくれればそれで済むが…このような場合男性の供述など信じてもらえない事が多い。
「頼むな…」
中野は島にも言われ深く…しっかり頷いた。
「さて…遅れると良くないから行くよ。」
進は真田の顔を一度見て頷くとラボを出た。
「古代です。」
進は会議室に呼ばれた。長官は大統領の息子の対応に追われていのか空席だった。
「呼ばれた理由は…判っているか?」
議長が進に聞いた。
「噂の件でしょうか?」
進は真っ直ぐな目で見た。
「そうだ。騒ぎになる前に直接古代艦長から聞いておきたかった。裁判では
ないが黙秘権もある事は伝えておく…」
議長は進に向かって静かに言った。
「まず…事のいきさつを教えてくれないか?」(議長)
「はい。私の任務はご承知の通りです…林田はイオから乗ってきました。
林田は地球経由で月面基地に行く予定になっており…事の次第によっては
艦載機のパイロットを辞めさせられてしまうかもしれないと知りました。
艦載機のパイロットになるためにどれだけ努力をしたのかと思うとどうし
ても辞めさせたくないと言う気持ちが表に出てしまい射撃訓練のコーチを
かって出ました。何か一つ…100%のものがあれば自信がつくだろうと
思ったんです。最後の訓練の日、私は林田に告白されキスをされました。
まさか女性から仕掛けてくるとは思っていなかったので…うかつでした。
林田が私に“パワハラかセクハラを受けた”と訴えてくるか“襲われた”と
噂を流すかどちらかだろうと思っていました。だけどそれを“止めてくれ”
と、私は言いませんでした。それを言ったら私が悪い事をした、と認める
様な気がしたので。私的には“噂で来たか、”と言う感じでした。」
進が一気に話をした。
「それを証明できる人はいますか?」(議長)
「…直接現場を見たわけではありませんが…一人だけいます」
進が中野の顔を思い浮かべながら言った。
「そうですか…わかりました。では古代艦長…少し控室で待ってもらって
いいですか?」
進は別の部屋に通された。
どれぐらい時間が過ぎただろう…何の控室かしらないがさほど広くない部屋でテレビも何もない部屋で一人待たされた。
進は置いてあったインスタントコーヒーを入れてそれを飲んだ。
しばらくすると扉が開いた。そして再び会議室に呼ばれた。
「古代艦長、2日程、自宅待機して頂けますか?」
議長が進を見てそう告げた。
「なぜですか?」
進がすぐに聞いた。
「少し…時間を頂きたい。」
議長の返事に進は頷くと“失礼しました”と言って会議室を辞した。
「林田 美樹です。」
美樹は進の後、会議室に呼ばれていた。防衛軍本部に来るのは最初の辞令を受け取った時だけだったのでドキドキしていた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 5 作家名:kei