yamatoⅢ 太陽制御の後で 6
「用意はいいか?」
進がエアカーに乗り込んで助手席のユキに声を掛けた。
「お菓子、たくさん買っちゃった。準備OKよ。」
二人はロイヤルミルクティを飲み干すとすぐに一泊の身の回りの準備をして南に向かってエアカーを走らせた。
「どこに行く?」
ユキが進に聞いた。
「そうだな…名古屋に行こうか。余りいい思い出ない所だけどおいしい物
いっぱいあるって南部言ってたし…。」
ユキは進の行先を聞いて端末を立ち上げて泊まるところを探し始めた。
「自宅待機か…」
長官からメールをもらった真田がつぶやいた。
「古代くんですか?」
真田のラボに相原がいた。
「あぁ…ユキもたまってる代休を与えて一緒に休ませる、だと。まぁユキも
いろいろあったから…ふたりでなにもしないでゆっくりするのもいいだろう。
しかし…このままだと古代は…」
真田は進がどんな左遷をさせられるのかが心配だった。先日クルーが全員集合した時、進が来る前にユキの事件の話を島がしていた。
「ユキさんの心労も本当に尽きる事ないですね。今回の事は不可抗力とはいえ…。古代くんの事は相手の女性の出方次第…。古代くんの話と違う部分が多ければ調査が入るだろうし…。」(相原)
「そうだな…だけどその調査で古代の無実が証明できるか…わからない所
だよな…。」
真田が大きくため息をついた。ユキの事は島から聞く前に進から報告は受けていた…なんとかしてやりたいがどうしようもできずにいた。
「真田さん、気になるのはそれだけじゃないんですよ。」
相原の口調が変わった。
「ノイズの出方が先日と変わった感じがするんです。何かが…起きています。
教授から話しはありませんか?」
相原は仕事柄そのノイズが気になってしょうがなかった。まして真田が調べているのにもかかわらず原因がわからないと来ている…
「私もそれが気になってるんだが…われわれ、地球自体が銀河系の外れにある。
中心部に起きている事だとかなり確認に時間を要する…。デスラーと通信
できたら何かが分かるかもしれないが…」
デスラーはボラーに勝利を収めた後銀河系中心部へ向かって帰って行った…
「ボラーはこの後絶対に地球を責めてくることはないでしょうか?」
相原が真田に聞いた。
「デスラーは二度地球に負けているから再び、という事はないと思いますが…
ボラーは分かりませんよね。」
デスラーも一度復讐の気持ちだけで蘇りヤマトを何度も危機にさらした。復讐は何も生まないのに…
「そうだな…ボラーだけが心配だ。」
真田がため息をつきながらメールをもう一度確認すると新しいメールが一通入ってきた。
「ユキからメールが来てる。」
真田の端末を相原も覗いた。
<お疲れ様です、お忙しい所お見苦しい電話をしてしまいすみませんでした。
私はこれから古代くんと名古屋に行ってきます。この二日間は相手の女性
次第だし何もできないし社宅にいても落ち着かないので少し離れようと
思います。古代くんはあきらめムードなんだけど私は諦めていません。
林田さんが言ってる“ウソ”を暴く何かがあるはずだと…>
ユキのメールは尻切れトンボで終わっていた。
「そうですね、何かを探さなくてはいけません。」
相原が自分の端末を立ち上げた。
「何か宛てがあるのか?」(真田)
「夜…射撃訓練を古代くんは一番最後にするんです。艦長の特権で訓練室の
モニターを自分の端末で見て誰が訓練しに来てるか、とか調子はどうか、
とかチェックしてました。そこでクルーの調子を把握して調子が悪けれ
ばそれなりのプログラム作って訓練させたりしてました。真田さんの
作ったプログラムを中心にいろいろ工夫してやってましたよ。だから
きっと今回も履歴が残ってるはずだ…。古代くんと林田さんの訓練の時間の
間隔が長く空いていれば噂の一角を崩す事が出来る。」
相原の言葉に真田が頷く。
「真田さんにお願いがあります。」(相原)
「わかった…パスワードだな?任せろ。」
真田も自分の端末に向かい進の乗っていた護衛艦のデーターを呼び起こし始めた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 6 作家名:kei