yamatoⅢ 太陽制御の後で 6
「なるほど…」
相原は真田と一緒に長官室にいた。
「わかった…明日、林田が会議室に来る。そのまま女性が別の部屋で話を
聞くようになっているそうだからその辺り確認するよう私から直接伝え
よう。」
長官は全面的に信じてくれていた。相原と真田は安心したような顔になった。
「大統領は明日、予定通り帰国する。」(藤堂)
相原と真田は藤堂を見た。
「マークも仮釈放されて一緒に戻るだろう。」(藤堂)
「長官…」(真田)
「日本で罪を償ってほしいと大統領は言っていたが…そうなるとユキにも
いろいろ聞かなくてはいけなことが出てきてしまうのでな…ただ向こうで
罪を償うようになっているそうだ。今地球は“連邦”だからな。
まぁ私も一つ肩の荷が下りた感じだよ。」
藤堂が苦笑いをした。
「ただ…もう、バカな事はしないだろう。ユキは?」(藤堂)
「古代と名古屋に行きました。少しここを離れたい、と。」(真田)
「そうか…二人には辛い思いをいつもさせてしまう…君たちにも…」
藤堂はそう言って頭を下げた。
「長官、何をおっしゃますか。長官のおかげで私達はここにいられるのです
どうか…それよりこれからの事です…明日、よろしくお願いします。」
真田が念を押す。
「女性が林田の対応をしてくれている…香山くんと言うのだが…彼女は
太陽制御の第二の地球探しの時、ヤマトに乗りこんだ一人だ。多分、力に
なってくれると思う。」
藤堂はそう言って香山の連絡先を教えた。
<香山です…!真田副長!!>
通信機に香山が映った。香山はまさか画面の先に副長が映ると思わなかったので驚いた。
「すまんな、少し…30分ほど時間、取れるか?」
真田の言葉に香山は頷くと
「ではラウンジで待っている。都合のつく時間でいいので…」
真田はそう言うと通信機を切り相原をラウンジに向かわせた。
「失礼します。」
10分ほどして相原が香山を連れて真田のラボにやってきた。
「忙しい所悪いな。」
真田が出迎えると香山は驚いた。ヤマトのメインクルーが勢ぞろいしていた。しかしそこに進とユキがいない事に気付いた。
「古代とユキは休暇中だ。いろいろあってね。」(島)
「すまんな、早急に済ませるから…空いている所に座ってくれ。」
真田がそう言うと一人掛けのソファーを南部が譲った。
「どうぞ、お座りください。」
南部は真田の隣にあったイスに腰掛けた、と同時に太田がお茶を運んできた。
「…あの…すみません…失礼します。」
香山はその空気に圧倒されつつソファーに座った。
「早速だが…長官から連絡は?」(真田)
「ありました…それを聞いて私も記憶を辿ってみたのですが林田さんの
腕にアザはありませんでした。長官の話を聞いて私も“あっ!”って
思いました。でもそれだけじゃなくて私、林田さんに対して何となく
違和感があったんです。男性に襲われたのに男性を恐れる仕草が全く
ない事と何気ない時に思い出し笑いをするんです。事実でない事を言わ
れているので自分の事としてとらえていないからきっとどうしていいか
わからずそのような反応になったのかも、って…。明日、もう一度確認
して…そこから林田さんに突っこんでみます。何とかして古代艦長の
無実を証明したいと思います。」
香山ははっきり言い切った。
「なぜ…香山さんは古代が無実だと思うんだい?」
島が不思議そうに聞いた。
「実は昨日、森さんに聞いたんです。私がこの事件の会議のメンバーと告げ
ずに…森さんは噂の真相を教えてくれました。私はヤマトの中での厳しい
班長しか知らなかったので…だけど森さんは強い、って思いました。
どんな環境でも古代さんを信じる事が出来る…普通に考えてその状態だと
100%信じること、って難しいじゃないですか。」
香山の言葉に島が首を振った。
「ユキは強がってるだけなんだ。本当は辛くて…折れそうな心を必死に
信じる事で耐えてるんだ。本当は誰かに縋って泣きたいんだ…でも…それが
できない…俺たちが見てても…痛々しくてしょうがないんだ。」
島がユキの心を代弁する。
「頼む…。」
真田が頭を下げると他のクルーも頭を下げた。
「あの…そんな…私も森さんと古代艦長にお世話になったクチです。大丈夫
です、あんな噂…私が真相を突き止めます。任せてください!」
香山がそう言い切った。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 6 作家名:kei