yamatoⅢ 太陽制御の後で 6
「さっき…古代艦長にすごい力で押さえつけられた、って事言ってたわよね?」
香山がじっと美樹の手を見ている。美樹は香山の視線の先に自分の手がある事に気付いた。
「!」
美樹は自分の手を見てハッとした。隠そうとしたがもう間に合わない…香山は美樹の左手を掴んだ。
「ねぇ…教えて?すごい力で掴まれたんでしょう?あなたも抵抗したって
言ってたわよね?そしたらここにアザが出来てるんじゃないかしら?」
香山は両手で美樹の左手を思い切り掴んでいる。戦闘班の美樹も生活班とはいえ宇宙戦士となるために訓練を受けてきた香山の両手に押さえつけられて振りほどく事は出来ない。
「離してよ!」
美樹が必死になって抵抗するが香山も力いっぱい抑える。二人はソファーにもつれ込むように倒れこんだ。
「ひどいわ!いいかがりよ!!」
美樹がすごい形相で香山を見た。香山は美樹の左手に自分の手形のアザをしっかり見た。
「いいがかりじゃないわ。自分の両手首を見てごらんなさい。左手首には
しっかりアザが出来てる…古代艦長の力ならそんなもんじゃないはずよ。
ねぇ正直に話して。あなた、ウソついているでしょう?」
香山が核心に迫る。
「古代艦長はあなたを襲っていない…襲ったのはあなた。訓練に集中する
古代艦長の隙をついてあなたが古代艦長を襲ったのよ。」
美樹はなにも言えなかった。
「何も言い返せないのはそれが真実だから、よね?」
香山が少し語尾を強く言った。
「違うなら違うって言っていいのよ。」
美樹はまさか自分が追いつめられると思っていなかったので何も言えなくなってしまった。
「さっきのシナリオは誰が考えたの?」
香山の問いに美樹は何も話さない。
「黙秘?」
香山はどんどん強い口調になる。
「いいのよ?権限はあるんだから。だけど否定しないという事はあなたが
不利になるだけ…それだけは言っておくわ。」
香山がコーヒーを片付けながら言うと
「もういいわ、出て。」
香山はそう言って部屋を出るように言ったが美樹は動こうとしない。
「遊んでるんじゃないの。私は仕事なのよ。あなたの心ない言葉で人の人生が
かかっているの。古代艦長はあなたを否定しなかったわ。ご自分の行動
だけを言った。あなたは自分だけを守ろうとしてる…だけど嘘は絶対
ばれるのよ。どこかでほころびがでるの。」
香山が美樹に静かに話しかける。
「古代艦長は?」
美樹がやっと言葉を発した
「自宅待機よ…」
香山はユキと出かけている事を知っていたが敢えてそう告げた。
「私のせいなのね…」
美樹はそう言って泣き出した。
「だって…振り向いてほしかったんです……大好きだったんです…ずっと
憧れていて…やっとそばに行けたんです。」
わぁっと美樹が泣き出した。
「どうして…隣にいるのが私じゃないの、って思ったら悔しくて…あの人の
立場と私の立場と代わればいいのに、って…」
香山は黙って聞いていた。
「噂を流せば古代艦長も私の事無視できないだろうって…」(美樹)
「森さんの事を考えた?」
香山の言葉に美樹が顔を上げた
「森さんはあなたと古代艦長の噂の狭間でまた別の事を言われてしまうのよ。」
美樹はハッとした
「あなたも聞いたでしょう?“自由にさせすぎで浮気された”とか
“前に噂があったから仕返しじゃないの?”とか…根も葉もないうわさを
信じて…森さんは否定しないから…相手にしてないからまたいいように
言われてしまうのだけれど…あなたに良心があるならちゃんと否定して…
私は何もされていません、って。」
香山が強く言った。
「あなたも…」
美樹が香山に話しかけた。美樹は聞き取れなくて耳を美樹に近付けた
「あなたも古代艦長が好きなの?」
美樹の問いに香山が驚いた。
「じゃぁ反対に聞くわ。あなたはLoveしかないの?Likeはないの?私は
古代艦長の事、好きよ。だけどそれはLoveじゃない。」
香山はきっぱり言い切った。
「お願い、さっき私に話した事…違っていたらちゃんと私に話して。」
美樹は黙って頷いて小さな声で香山に話し始めた…………
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 6 作家名:kei