yamatoⅢ 太陽制御の後で 6
「どうなる事かと思いましたけど…落ち着いてよかったですね。」
相原が名古屋のお土産を食べていた……ここは真田のラボ。
「どうぞ。」
お茶を運んできたのは太田。
「この手羽先のから揚げおいしいな。」
島も満足そうに口に運んでいる。
「すみません、私まで…」
香山が手羽先を手に持って小さくなって座っていた。
「いや、本当に助かったよ。艦長が下されたら困るもんな。」
南部が手羽先を口に入れた。
「そうか?古代がいなくなったら南部が戦闘班長だろ?」
島の言葉に手羽先が詰まりそうになり太田が入れてくれたお茶を飲んだ
「あちぃ!」
南部の慌てぶりに香山も笑う。
「香山さん、ありがとう。」
ユキはそう言って香山に手土産を渡した。
「お土産、って言えるほどのものじゃないけど。開けてみて。」
香山は“失礼します”と言って包を開けた。中から出てきたのは貴重な日本のお米で作られたういろうだった。
「これ…日本のお米で作られたんですって。甘い物、好きだったわよね?
確か和菓子の方が好き、って話してた記憶があるの。」
香山は驚きながら思い出していた。ミーティングが終わって何となく残って雑談している時に食べ物の話になり…
<香山さんは和菓子派?洋菓子派?>
{私は和菓子。だけど重いものはダメ。}
<あんこはキライって事?>
{あんこ、と言うか…こう…さらっとしたもっちり感…ういろう大好き。}
<名古屋出身ってわけじゃないわよね?>
{違うわ。でもようかん、苦手だし…洋菓子の乳製品の脂肪がどうも体に
合わないみたいで…ときどきお腹下しちゃうの。}
<生クリームタップリのケーキは?>
{ちょっとキケンかもしれないわ。でもキライじゃないから少しくらいなら
食べるけど。}
他愛もない会話だった…だけどそれを覚えていてくれたことに香山は驚いた。
「あの時の会話を覚えていてくれたんですか?」(香山)
「やっぱりあの時ういろうの事言ってたの香山さんよね?よかった!香山さん
で間違いない、って思ってたけどもし違かったら、って少し不安だった
のよ。」
そう言って笑うユキはとてもきれいだった。同じ女性から見てもどきっとするほどだった。
(そうか…となりに艦長がいるからもっときれいなのね。)
香山はそう思うと少し寂しくなった。
(私も古代艦長の事好きになっちゃったのかな?ううん、違うな。私は
生活班長のファン…同じようになりたい、って思うのに…雲泥の差、だわ。)
香山は心の中で小さくため息をついた。
しばらくして香山は帰って行き名古屋から戻ったばかりの進とユキも戻って行った。
「しかし…今回はちょっとヤバいと思いましたよ。」
相原が大きく伸びをした。
「本当だな…ところで大統領は?」(真田)
「今日、午前中に戻って行きましたよ。マークを連れて…長官の話だと
もうすぐ任期が切れるからそのまま引退すると言っていたそうだ。」
島が答える。
「さすがに…続けられないよな。」(相原)
「そうですよね。任期までできるだけありがたいと思わないとね。」
太田がおいしそうにコーヒーをすすった。
「だけどユキさんが心配ですよね。笑ってるけどやっぱり辛そうです。」
相原が心配そうに二人の出て行った扉を見つめて言った。
「ふたりでいれば大丈夫だろう。」
真田がエスプレッソを飲み干した。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 6 作家名:kei