yamatoⅢ 太陽制御の後で 6
それから進は再び輸送船団の護衛艦の艦長として1か月の任期で宇宙へ飛び立った。ユキも少し休みを多くとりながら藤堂の第一秘書として働いていた。
「ユキさん、もうすぐ古代さん戻ってきますね。」
研修でヨコスカから中央に来ていた晶子がユキと遅いランチをとっていた。
「えぇ、今回は短いに任期でよかったわ。」
少しユキの顔色が悪いのに晶子が気付いた。
「ユキさん、寝てます?顔色悪いですよ?おじい様も心配してました。
そんな顔でお迎えに行ったら古代さんも心配しちゃいますよ?」
晶子と同じ量のランチをほとんど手を付けていなかった。
「うん…ちょっと疲れやすいかな…けど大丈夫、古代くん戻って来るの
あさっての朝なの。それまで頑張ればいいから…明日一日だけよ?
大丈夫!」
進の噂は落ち着いたがユキへの噂は残っていた。
「全く…誰があんな噂流したのかしら…」
晶子は怒っていた。温厚な性格なので滅多に怒ったりしない。
「仕方ないわ…それだけ古代くんに人気がある、って事よ。」
ユキはそう言うと暖かいココアを飲んだ。
進と美樹の噂は美樹の自作自演だった。美樹は周りの白い目に耐えながら月面基地に向かった。……が、その噂はまだ水面下で残っていて“森ユキが古代の相手をしないから”とか“本当は各国のVIPといい仲になっている”などと噂が大きくなってしまっていた。
「大丈夫よ…あの噂に比べたらたいした事ないわ。」
ユキは敵の将校とうわさになった事を思いだしていた。
「ユキさん…」(晶子)
「そう…大丈夫。さて、そろそろ戻らないと…明日の会議の資料を整えたら
今日の仕事はおしまい。」(ユキ)
「私、研修終わってますから手伝います。」
晶子はユキを一人にできなくてそう言うと
「本当?助かるわ。ちょうどいいからチェックもお願いできるかしら?」
ユキは晶子の事が妹の様でかわいかった。
「いいですよ。なんでもお申し付けください!」
二人は周りの視線を背中に感じながら食堂を出た。
(ユキさんはこんな視線の中で生活しているの?)
晶子はユキの少し後ろを歩きながらそう思った。
「晶子、どうしたんだ?」
長官室が昼食で戻って来た時ユキと一緒に秘書室で仕事してる晶子を見て藤堂が声を掛けた。
「今日、研修、って言ったでしょう?もう終わったからユキさんの手伝いを
しようと思って…」
晶子が敬礼しながらも笑顔でそう言った。
「そうか…何の仕事だ?」
藤堂が覗き込む
「明日の会議の資料を整えるのに手伝ってくれると立候補してくれたので
チェックもお願いしようと…ね。」(ユキ)
ふたりで顔を見合わせて笑う姿はまるで姉妹の様で藤堂も思わずにこやかになってしまう。…がここはひとつちゃんと…と思い、
「極秘事項があるからくれぐれも他言しないように。」
藤堂がそう言うと晶子は“了解!”と敬礼して作業に戻った。藤堂はユキの笑顔を久しぶりに見た気がした。
「ユキ、子守を頼むな。」
藤堂がそう言うと“おじい様!”と晶子がいいユキが“まぁ”と言って笑った。
「やっぱり二人で作ると早いわね。もっと早く終わると思ってたのに…
あの参謀の資料が遅かったのが原因ね。晶子さん、ありがとう。助かったわ。」
ユキがお礼を言うと
「いえ、お力になれてよかったです。」
晶子が笑顔で言う。
「あ…相原くん、今古代くんと一緒よね?お礼に夕食どう?」
ユキが晶子を誘う。
「ユキさんがご迷惑でなければご一緒したいですわ。」
晶子が“昨日何食べましたか?”と聞きながら二人は一緒に防衛軍本部を後にした。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 6 作家名:kei