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yamatoⅢ 太陽制御の後で 7

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  「ただいま。」

二人は家族寮に戻って来た。

  「いつ出発してもいいように準備しなくちゃね。」

ユキはそう言って玄関を入り進から離れようとしたが進がしっかり手を握って離さなかった。

  「…痛いわ。」

進はアザの事を思いだして一瞬手を離したが次の瞬間ぎゅっと強く抱きしめた。

  「離れたくないのは…俺の方なんだ。だけど真田さんがユキを置いて行くと
   行った時ホッとした自分もいたんだ。傍にいてほしい…だけど安全な場所に
   いてほしい、って…矛盾してるってわかってるけど……。」

進はもっと力を込めて抱きしめた。

  「結婚式の準備をして待っててくれないか?戻って来たら南部に相談して
   すぐに式場、抑えてもらおう。」

ユキは我慢していた涙が溢れてきた。

  「なぜ…神様は私達をそっとしておいてくれないの?ただ静かに暮らしたい
   だけなのに…私、何か悪いことしたかなぁ?」

ユキがそう言って泣き崩れた。二人は玄関に座り込むと

  「ユキはなにもしてないよ。きっと俺が殺めてきた血がそうさせてるんだ。
   俺の手は…いくつもの星の人を絶滅に追いやった手だ。神様はきっと
   俺を許さないと言わんばかりに…」

進の声が小さくなる。

  「古代くん、それは違う!私達は抵抗しただけ…それだけなの!」

進はユキから離れるとフラフラと自分の部屋に入り出てこなかった。









  「あのふたり、大丈夫でしょうか?」

島が真田とラボで飲んでいた。

  「…悩んだんだ…ユキを連れて行くか…だけど結婚したい、って言ってた
   から…ユキだけは幸せになってほしいんだ。澪の分も…」

真田の口から澪の名前が出てきたのは初めてだった。

  「やっぱり似てて…ユキが笑ってると澪も笑ってるような気がするんだよ。
   今は泣いててもヤマトが戻って来たら最高の笑顔が見られる、って思うと
   今はどんなに泣かれても待たせてる方がいい、って判断したんだ。今回は
   万一に備え元祖に戻ってコスモクリーナーDをモデルにした最強の放射能
   除去装置を数か所付ける予定だ。銀河が交差してるとなると星同士の衝突
   もある。…となればどんな有害な放射能が飛び散っているかわからない。
   ヤマトの鋼鈑も強化する予定だが…」

真田はグラスに入っているブランデーを一気に飲んだ。

  「ユキを泣かせてしまった…俺はひどい男だ…。」

島も自分が結婚をあおったので少し罪悪感があった。もし自分があおらなければまだ結婚の話を出さなかったかもしれない…

  「古代が結婚を口に出したのは俺のせいかもしれません。俺が…早く結婚
   しろ、ってユキだって待ってる、って言っちゃったんですよ。復興中に
   偶然ユキと一緒になって…その時ユキが古代が結婚しよう、って言うのを
   待ってるのに気付いて…すみません、真田さんを苦しめてるのは俺のせい
   なんです。」

島が真田に頭を下げた。

  「そうだったのか…。」

真田が肩を落とした。









リビングで呆然としてるユキの通信機が鳴った。相手を確認すると藤堂だった。

  「森です。」

ユキがいつもの仕事の顔で通信機を取った。

  <休暇中にすまんな。緊急事態が起きて…真田くんから聞いただろう?>

ユキが頷く。

  <今回は…>

藤堂が言いかけた所でユキが頷いた。

  「私は留守番だと言われました。」

ユキの言葉に藤堂が済まなさそうに

  <すまんな…真田くんがどうしてもユキを連れて行けない、と…>(藤堂)
  「仕方ないです…以前の理由と違いますから…それより長官、明日…」(ユキ)
  <いや、3日間、休んでかまわない…古代にも伝えてくれ。ヤマトが飛ぶのに
   装備でいろいろあるからその間に調査を進める、とね。>(藤堂)
  「長官…」(ユキ)
  <ヤマトを見送る立場となるとユキも辛いだろうが…休暇はそのままで、と
   言う事を伝えたかっただけなのだ…済まなかったね。>

藤堂はそう言うと通信を切った。

  (仕事をしている方が気がまぎれそう…)

ユキは藤堂の消えた画面をしばらく眺めていた。






作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 7 作家名:kei