yamatoⅢ 太陽制御の後で 7
<<ヤマト、太陽系に戻ってきました!>>
翌日ヤマトが太陽系に戻って来た。中央指令室はその瞬間歓喜に沸いたが次の言葉で再び静まりかえった
<<しかし応答なし!!>>
ヤマトは小ワープをして地球に戻ってきた。ドッグに入港しすぐに10名程のドクターがタラップを上がって行った。佐渡もタラップを上がる。
しかしそこでユキが見た光景は地獄絵図だった。息絶えたクルーが折り重なり死臭を放っていた。ユキと佐渡は第一艦橋に急いだ。そこで見た光景は宇宙服を着て自分の席から放り出されているクルーだった…が一人、ヘルメットをしていない……
「古代くん!」
ユキは進の名前を読んだ…がピクリともしない。ふとユキの眼に進のコスモガンが眼に入った。
(私も…)
のど元に銃口を当てた瞬間進のコスモガンは意識を取り戻した真田の手によって払いのけられた
{古代くんが死んじゃう!}
進のオペが扉の向こうで進んでいる。ユキはふと自分の横に座る人物に気付いた。
「晶子さん……相原くんは?」(ユキ)
「えぇ…先ほど目が覚めて…ドクターも目覚めれば大丈夫、っておっしゃって
いました。古代さんのオペ、長いですね。古代さんが大変なのに連絡
頂いて…ありがとうございました。」(晶子)
ユキは進のオペの内容がよく解っていたので時間がかかると知っていた。そしてそのオペの成功率の低さも…ただ地球の英雄を死なせてはならないと誰もが必死にオペに参加していた。
「あの新しいコスモクリーナーが無ければだめだったかもしれないんですって
ヘルメットをかぶってなかった…だけど一命を取り留めた…真田さんの
おかげだわ。」
ユキがつぶやく。
「政府は何があっても古代くんの細胞ひとつひとつを清浄してオペを成功
させるはず…だけどその後どうなるのかまだ判らないわ。そう…相原くんは
無事だったのね…本当によかった…ここはいいからそばにいてあげて。」(ユキ)
「だけど相原さんが古代さんの様子を見て来てほしいって…。助けた子は
どうした?って。」(晶子)
「あの皮膚の色の違う少年?まだ目覚めないけどいつ目覚めてもいい状態
らしいわ。相原くんにそう伝えて。」(ユキ)
「ユキさん、一人で大丈夫ですか?」(晶子)
「大丈夫よ…今ね、昔の事を思いだしていたの。あぁ…あの時古代くんは
こんな気持ちだったのかしら?って…」
晶子は不思議な顔で聞いている。
「一緒に航海してるといろんなことがあるの。」
そう言って笑うユキはとても美しいと晶子は思った。この微笑みが相原の心をとらえて離さない事もわかっている。でも晶子は嫉妬とかそんな感情はなくただ同じ女性として羨ましい気持ちでいっぱいだった。
ユキは試運転をしていないコスモクリーナーを作動させた時の事を思いだしていた。ユキが仮死状態に陥っている間の進の様子を後から聞いて…もし、進が死んでしまったら私に待っているものは絶望しかない…と…。
(やっぱり…一緒に付いて行けばよかった!古代くん…私の所へ帰って来て!)
ユキは自分の手を握りしめて祈る事しかできなかった。
オペが終わって数日後、進は目覚めた。
進が目覚める直前に、ディンギルの地球への攻撃が行われた。進やヤマトのメインクルーはヤマトを撃沈した相手だとわかったがクルーのほとんどが病院にいたので画面を食い入るように睨み付ける事しかできなかった。
ユキは新艦長、沖田にひとつ、お願いをしていた。
「古代くんが自らヤマトに乗り込んで来たら一緒に戦わせてください。
古代くんからヤマトを取り上げてしまったら古代くんじゃなくなって
しまいます。ヤマトに依存しすぎている、と言ってしまえばそれまで
ですが…今、“生きる”事の全てがヤマトなんです。どうか…お願いします!」
ユキの必死の訴えに沖田が静かに口を開いた。
「ユキ…強くなったな。護り守られ誰もが強くなった…。今までの戦いの
記録を全部見た。私は真田くんの推薦でユキを乗せる事を決めた。
真田くんのユキへの絶対的な信頼は地球を救うと言う結果を生んだ。
もちろんそれはクルーの誰が抜けても成し得なかった事だろう。
古代も同じだ。古代はヤマトでありヤマトは古代だ。きっとヤマトが
古代を呼ぶだろう。」
沖田は静かに言った。ユキは進の意志次第と思い敬礼をして沖田の部屋を辞した。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 7 作家名:kei