yamatoⅢ 太陽制御の後で 7
「くっそ…今度は俺が叩いて…」
モニターと外を見て思ったが体が思うように動かない…かなりのだるさを感じた。
(俺の身体は大丈夫なのか?)
部屋を見渡すとクローゼットがあった。思ったように上がらない足を引きずるようにそのクローゼットを開けるとそこにはヤマトの制服が入っていた。
(ユキ!)
「古代の様子はどうだ?」
退院した島が秘書室にユキを訪ねてきた。
「島くん、自宅療養じゃないの?」
ユキは進の病室に行く時クルーの病室に必ず顔を出していた。すでに進以外は退院していた。島も先日退院し一週間の自宅療養を言い渡されていた。
「そんな時間ないのはユキが一番判ってるだろう?これから真田さんの所へ
行って一緒にヤマトのあるドッグに行く。そのまま飛ぶことになるかもしれ
ないな。今度はユキも乗るんだろう?」(島)
「えぇ…」(ユキ)
ユキがうつむき加減で答えた。
「古代…か?」(島)
「生気を感じないの…話しかけても上の空だし…返事も生返事で私の事も
忘れちゃってるんじゃないかしら、って感じよ。」
ユキが寂しそうに言う。
「だけど…時間は古代くんを待ってくれない…」(ユキ)
「もし…間に合わなかったら?」(島)
島の問いにユキは首を振った。
「絶対あの人は来る…」
ユキは島を見てはっきり言った。島はユキが初めて“古代くん”と言わなかった事に驚いた。
「あの人とヤマトは切っても切れない縁で結ばれている…それはあの人だけ
じゃなくて島くんも…私もそう。ヤマトを中心にみんなが繋がっているの。
だからヤマトが健在なら絶対に大丈夫…絶対来るわ。」
ユキが島から視線を外して窓の外の海を見つめた。
「それに…病院のクローゼットにヤマトの制服を入れて来たわ。それを着て
絶対にヤマトに来るはずよ。」(ユキ)
「病院を抜け出させる気か?」(島)
「病は気から…古代くんの細胞はもう普通の細胞を作り始めている…だるさは
まだ残るだろうけど古代くんの性格上、動いてる方が気にならないはずよ。
担当医はモリタ先生だから…ちょっと裏から手を回しておいたの。」
いたずらを仕掛けた少女のように笑うユキに島は“どんな?”と聞いた。
「もし古代くんが病院を抜け出しても探さないでください、って。後は
私が責任を持ちます、って言ったの。佐渡先生には病院と同じ点滴を乗せる
ようにお願いしたの。まだ細胞が弱いから免疫力を高める点滴をね。
ケガが多いでしょう?出血すると血が止まりにくくなったりするから…」
ユキは進の身体の一歩先の事を見ていた。
「辞表…出した、って聞いたけど…」(島)
「普通の乗組員でもいい…乗せてあげたいの。あの制服を見つけたら絶対
乗らなきゃ、って思ってくるはずよ。」
ユキは自信満々に言ったが
「ただ…制服を見つけてくれないとダメだけどね。」
ユキの肩がすっと落ちた。
「古代は来るよ…。」(島)
ユキが島の顔を見る。
「あいつがいないとヤマトは本来の力を出せないだろ?古代はヤマトの腕で
俺が足、だ。頭脳は真田さん、かな。」(島)
「そうね…レーダーの私は目、かしら?」(ユキ)
「じゃぁ相原は耳…太田は頭脳から足への伝達係で南部は腕から手への
伝達係・・・やっぱり誰が抜けてもヤマトはダメなんだな。」
島はそう言って笑った。
「そうそう、今度私は生活班じゃなくなるの。レーダー専属なのよ。」
ユキが島に告げると
「なぁんだ?コーヒーまずくて生活班クビになったか?」(島)
「島くん?ひどいわ!」
ユキは久しぶりに笑っていた。
「じゃぁ…俺、行くから…古代の事、待ってる。」(島)
「えぇ…私も夜、荷物運び入れるわ。その時時間があればお茶でもしましょう。」
島は長官室の秘書室を出て行った。
「古代くんはクローゼット開けてくれたかしら…」
ユキはベッドに寝てるだけで動こうとしない進の事を考えていた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 7 作家名:kei