yamatoⅢ 太陽制御の後で 7
「ユキ、準備は出来ているのか?」(藤堂)
避難船団の全滅を受けて今後、どうするかを検討している会議を終えて藤堂が長官室に戻って来た。
「今日、帰ったら荷物をまとめてヤマトに運びます。」(ユキ)
「これからじゃ大変じゃないか。今日はもう、いいから帰りなさい。明日から
ヤマトを中心にしていいから。後は伊藤がやる…心配しないで帰りなさい。
今日の会議で地球市民はこれから5日で地下都市へ移動する事になった。
ユキも大切な物、地下都市へ移動しておきなさい。」(藤堂)
「地下都市へ…」(ユキ)
「あぁ…地上へ大量の水が来て…地下都市がどこまで耐えられるか分からない
が何もしないよりその方がいいだろう、という事になって…」
藤堂は次から次へと問題が起こり休む暇もなく動いていた。
「長官こそ…少しお休みになられた方がいいですよ。少し参謀に任せて…
長官が倒れたら…それこそ大変な事になります。ヤマトも…私達も困り
ますから…お願いです、せめて明日、一日休んでください。」
ユキが自分のせいで藤堂に心労をかけてしまった事を詫びたい気持ちでいっぱいだった。
「ユキ…ユキのせいじゃないんだ。」
藤堂もユキの気持ちが通じたらしくそう言ったが
「だけど最初…それがなければ…すみません。」
藤堂はユキの責任感の重さを知っていたので
「…ユキは心配性だな…しょうがない…明日は休むとするよ。」
と、言って笑った。
「本当ですか?」
眉間にしわが寄っていたユキの顔がパッと明るくなった。
「これじゃヤマトのクルーと同じだな。」
藤堂が頭を掻いた。ユキは?と言う顔をしたので
「誰もがユキに弱い、と言う事だ。」
そう言って笑い“そろそろ出なさい、遅くなる。”と言ってユキを帰らせた。
「古代くん?」
ユキは病室を訪ねた。進はおとなしくねていた。
「寝てるのかな…まだ結構だるさが残ってるはずよね。」
ユキは独り言を言いながらクローゼットを開けた。しまったままのヤマトの制服は入れた時と同じ状態だった…ユキは心の中で小さくため息をつくとそっとクローゼットを閉じた。
(きっと気付いているはず…)
「モリタ先生。」
ユキはモリタのラボを訪ねた。
「森さん、進くん見てきました?」
モリタはユキをラボに招いきれた。
「今日は随分(病院に来るのが)早いですね。」(モリタ)
「実は乗務する準備がありまして…早退したんです。」(ユキ)
「ではいよいよヤマトが?」(モリタ)
「えぇ…早く古代くんの決心が付いてくれればいいんですけど…」
ユキがため息をついた。
「おやおや、医師としてはゆっくり養生していただかないと!」
モリタがわざとびっくりしたような言い方をした。
「そうですよね…私も看護士だったら絶対動かないように言いますもの…」
ユキのまつ毛が寂しそうに揺れる。
「まぁ…進くんはヤマトに向かいますよ。」
モリタが自信満々に言った。ユキは?と言う顔をした。
「自分が今何をするべきか…多分それは進くんが一番よく解ってるはず…
ただ今は前の戦いで頭が混乱しています。後、一日…進くんに自由時間を
あげてください。」
モリタが言った自由時間と言う言葉を聞いてユキは進が今までずっとダッシュのまま走り続けきた、と改めて思った。
「そうですね…それくらいの自由時間なら許します。」
ユキが笑顔で答えた。
「ユキさん、進くんの前ではその笑顔でお願いしますね。」(モリタ)
「…了解しました。モリタ先生…私、多分今日を最後にここに来れないと
思います。古代くんをよろしくおねがいします。」
ユキが深く頭を下げた。
「いやいや…こちらのセリフですよ。ヤマトに乗ったら看護士としての
森さんが活躍するでしょう。進くんの事、お願いしますね。
佐渡先生から頼まれていた点滴、予定より多く積みました。念の為、二カ所
で保管した方がいいですよ。戦艦だから何があるかわかりませんから」
モリタの進言をユキは頷いて聞いていた。
「あの点滴がなくなったら進くんの免疫細胞が一気に減ってしまいます。
気を付けてくださいね。」
ユキはしっかり頷いた。
「先生も…ご無事で…」(ユキ)
「再会を心待ちにしています。」
モリタはユキと握手をして別れた。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 7 作家名:kei