yamatoⅢ 太陽制御の後で 7
「進くん」
モリタが進の病室を訪れた。
「熱は?」(モリタ)
「ないです。」(進)
「だるさは?」(モリタ)
「まだ…残ってます。」(進)
「狸寝入りはよくないよ。森さん寂しそうだった。」(モリタ)
「ユキ、先生の所へ行ったんですか?」(進)
「うん、なんでもヤマトに乗りこむからもう来れないかも、って挨拶しに
来たよ。軍から通達が来て地下都市の中央病院に移るように、って…。
いよいよ…なんだなぁ、って思ってね。ここはVIPルームだから一番に
非難するから準備しておいてもらおうと思って…明日、箱が届くから
それに荷物入れておけば看護ロボットが運ぶからさ。だるいかもしれない
けどリハビリだと思ってやってね。」
モリタの荷物、と言う言葉に進が反応した。
(進くんはクローゼットに入っているものが何か知ってるんだ)
モリタは進の背中を押すだけだと確信した。
「地上でやりたい事があったら外出許可出すからナースに頼んでね。」
モリタはそう言うと進の病室を出た。進はゆっくり立ち上がるとクローゼットを開けた。
「お疲れ様。」
ユキがヤマトにやってきた。
「太助くん、どう?」
まず機関室により太助に声を掛けた。
「それが全くで…本当に頑固なメカです。だけど頑張りますよ。」
太助が力強く言った。
「ふふふ、頼むわね。エンジンがかからないとヤマトは動かないわ。頼りに
してます!」
ユキの笑顔に太助がぽ~っとなっていると山崎がエンジンの下部から出てきて
「こら、太助!ナットが閉まってなかったぞ?」
とスパナを片手に出てきたところでユキの顔が見えた。
「あ…生活班長!こりゃ失礼しました。」
山崎は腕まくりして油まみれだった。
「山崎さん、そんな狭い所出入りして…けが、しないでくださいね。」
ユキはポケットからハンカチを取り出して山崎の顔に着いた油を拭いた。
「いや、森さん、ハンカチが汚れてしまいます。」(山崎)
「いいの、ハンカチなんて。ダンディなのに…台無しだわ。」
ユキの笑顔が現場を明るくする…
「森さん、艦長は?」(山崎)
「だいぶよくなったけどね…。」
ユキは言葉を濁した。
「そうですか…入院が我々より長引いてるのが心配ですね。」(山崎)
「えぇ…」(ユキ)
「それにしても随分荷物多くないですか?」(太助)
「あ…そうね、一応二人分だから…。じゃぁそろそろ上に行くわ。」
ユキは逃げるように機関室を後にした。
「お疲れ様です。」
ユキは中央作戦室に顔を出した。
「お…来たか。」(真田)
「えぇ…よろしくお願いします。」
そこには真田と島がいた。
「これは?」
ユキはモニターに映る見慣れないミサイルを見て言った。
「これがヤマトを撃沈したミサイルだ。これが刺さったらひとたまりもない…
これを100%防御する兵器を開発中だ。」(真田)
「これを?」(ユキ)
「これを数発くらっただけで…何かのショックで地球へ戻る自動走行に
切り替わったから俺たちは帰って来れたが…」(島)
「漁師の網みたいに一網打尽にできたらいいのに…波動爆雷じゃダメですか?」
ユキの一言に真田が食いついた。
「漁師の…網……一網…打…尽………網?」
真田が何かひらめいたように端末に向かい何やら計算を始めた。島とユキは黙ってその様子を見ている。(真田が異常なまでの集中をしてる時は話しかけてはいけないとこの長い付き合いで分かっている)
ユキは島に“医務室へ行くわ”と医務室に指先を向けて中央作戦室を静かに出て行った。
「佐渡先生。」
ユキが医務室に顔を出した。
「おう、ユキ、お疲れさん。荷物は置いて来たか?」
佐渡はすでに一杯やっている。ユキは“これからです”と返事をした。佐渡は顔が真っ赤だった。
「ゆきサン、オ元気デシタカ?ヤット一緒ニ働ケマス。」
アナライザーが嬉しそうにライトを点滅させる。
「アナライザー、早速確認してほしいんだけど古代くんの点滴、私の座席の
下に一つ、古代くんの部屋に3つ程用意してくれる?」
佐渡はユキの言っている意味が分かった。もし第一艦橋にいて点滴が必要な時にすぐ対応するため、と進が部屋で点滴をしたいと言った時用に置いておきたいのだと…。
「ベッドの下にうまく隠しておいてほしいの。出来るかしら?」
ユキがお願いするとアナライザーは
「ワタシ、万能ろぼっと、不可能ハナイ。」
そう言ってすぐに点滴を取りに倉庫へ向かって行った。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 7 作家名:kei