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こらぼでほすと 花見3

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 今は、まだ世界はひとつに纏まろうとしている過渡期だ。世界の歪みだったアローズを撃破して、また世界は変革された。全てを見て廻ることは難しいが、自分の故郷ぐらい見てくればいい、と、説明したら、黒猫は、しばらく桜の枝を眺めて、「わかった。」 と、返事した。
「虎と逢う前に、ストライクかフリーダムを借りて、少し出てくる。」
「ん? 虎? 」
「動物園の虎だ。あいつには、逢いたいと思っていた。悟空が週末に逢わせてくれるから、その前に出かける。」
「ああ、あの虎な。うん、あそこにも無事な姿は見せてやるべきだな。でも、もう小虎とは思ってくれないかもしれないな。」
「そうだな。・・・・もし、対等に戦ってくれるなら、それはそれで認められたということだから嬉しい。」
  あの虎が刹那を大人だと認めてくれたら、そういうことになるらしい。悟空が一緒なら、怪我をすることはないだろう。どんどん刹那は成長していく。これから、もっと大人になってニールを追い越していくだろう。いや、すでに追い越されているのかもしれない。そう思うと、ニールは少し寂しい気分になった。


 身体を温めて風呂から上がったら、すでに料理の準備は終わっていた。何間も部屋があるから、食事も、それ専用の部屋がある。懐石風ではあるが、途中で和洋折衷なメニューもあって彩りもキレイだ。春らしい飾りがされていて、目でも楽しめるのが特区らしい。
 温かいものは、後から順々に運ばれてくるが、刹那は空腹だったのか、パクパクと皿を空にしている。ニールのはほうは、それほど入らないから、適当に刹那の皿と入れ替えている。食前酒で乾杯しただけで、刹那は食事に夢中だ。それを肴にしてニールは冷酒を舐めている。
「そろそろ、再々始動の準備は終わりそうか? 」
「いや、もう少しかかるだろう。」
「ティエリアはアレハレたちと旅行してるのか? 」
「俺が戻るまでは、ラボのほうに陣取っているが、それから降りるつもりだと思う。たぶん、あんたに説教しに来るだろう。怒っていたからな。」
「んなこと言われてもさ。・・・・まあ、いいけどな。」
「ロックオンも降りて来るはずだ。」
「うちに帰ってくるとは限らないんじゃないか? あいつは、カタロンとのミーティングもあるだろうし、アイルランドのほうへ降りるだろう。」
「いや、『吉祥富貴』に依頼することがあるから、一端、こちらに降下する。」
「そうなのか。」
「ああ・・・ニール、少しは食え。全部、回すな。」
「あ、バレた? 」
 適当に会話しつつ食事をしているが、刹那の前に新しい料理を置いているニールは、ほとんど口をつけていない。全部を食えとは、刹那も言わないが、ちょっとずつ食べろ、とは注文する。
「だいたい、食わないから栄養が補給されないんだ。」
「食ってるよ。おまえと同じだけは食えないって。・・・ほら、これ、刹那は好きだと思うぜ? 」
 箸で摘まれて刹那の口に投げ込まれるのは鴨肉だ。あむあむと食べると確かにおいしい。おいしいんだから、あんたも食え、と、刹那も箸で親猫の口元に運ぶ。寺でいちゃこらと寺夫夫が食べさせ合っているのも、これと同じことだ。

 食事して、少し休憩してから、もう一度、風呂に入った。桜は、はらはらと舞っている。それを眺めているのは、幸せな時間だと、刹那でも思う。こんな時間があるのは、戦わない時間だ。ふと、次の予定が思い浮かんだので口にした。
「来年も、ここに来たい。」
「おまえさんが、この時期に降りて来られたらな。桜ってパッと咲いてパッと散っちまうから、タイミングが合わないかもしれない。」
「別に咲いてなくてもいい。あんたと、こんなふうにゆっくりできる時間が欲しいだけだ。寺は賑やかで、俺だけで、あんたを独占するのが難しい。」
「そういうことなら、マンションに帰るとしようか? あそこなら、俺とおまえさんだけだ。」
「でも、誰かが来る。キラは同じマンションだしな。」
「じゃあ、次回も、どっか一泊旅行でもするか? オーヴぐらいなら付き合えるぞ? ・・・というか、ロックオンと、こういうことはやるべきじゃないか? 女房孝行するのも亭主の務めだ。」
 ミッションで一緒に行動しているのは、ちょっと聞いたが、夫夫でオフに旅行するのもいいんじゃないだろうか、と、ニールは口にする。度々、耳にしている実弟の扱いが酷いので、そういうご褒美も与えてやって欲しい。
「あいつに、こんな情緒はない。いきなり、押し倒しにかかる。」
「・・・・・はあ? 」
「裸のスキンシップが夫夫には必要なんだそうだ。」
 オフに限らず、時間があれば挑まれるんだ。それでスキンシップはできていると、刹那は言うのだが、それもどうなんだろう、と、ニールは肩を落とす。扱いがペットみたいだ。
「・・・さいですか・・・・てか、刹那、それ以上に説明しなくていい。俺はライルの生々しい話なんて聞きたくない。」
「そうなのか。あいつ、一緒に風呂に浸かったなんて教えたら、事細かく、おまえの身体について尋ねるぞ? 」
「なんで? 」
「興味はあるんだそうだ。今度、一緒に風呂に浸かってやってくれ。」
「それ、どういう意味の興味なんだろうな? 刹那さんや。」
「セックス対象としての興味じゃなくて、回復しているか聞きたいんだろう。あんたの体格が、以前ほどではないから気になるって言ってた。ハロに残っている映像を観て比較したんだろう。」
 実弟なりに心配はしてくれているらしい。確かに、組織に居た時の体格は、今よりひとまわりかふたまわりは、がっちりしていた。自分でも腕が細くなったと思うのだから、実弟も気付いたのだろう。
「あーそういうことなら・・・・まだ、運動できるほどじゃないらしいんだ。以前ほどに戻るには、かなりかかるんじゃねぇーかな。体重が全然増えないしさ。」
 どっこいせ、と、湯船からは上がった。温い湯ではあるが、長時間、浸かっていると逆上せてくる。足だけ湯船に浸して、刹那のほうに顔を向けると、刹那のほうはバシャバシャと犬掻きして遊んでいる。
「明日、またプラモでも見に行こうか? 」
「新しいのも出てるのか? 」
「たぶん、出てると思うぜ。ダブルオーは、微妙だなあ。いや、あれだけ派手に活躍してれば出てるか。」
 昨年の夏に、プラモを探した時は、ひとつ前の機体しかなかった。あれから半年だから、そろそろ最近のも出ているかもしれない。
「キラたちの機体もあるのか? 」
「いや、あいつのはないと思う。以前から見たことがない。」
 なぜか、『吉祥富貴』のMSは、プラモとして売られていない。キラたちのMSは、いろいろと問題があるらしくシークレット扱いになっている。
「まあ、あれは・・・・動力が問題だからな。知られるとマズイんだろう。」
「そうだろうな。」
 フリーダムやストライクフリーダム、インフィニットジャスティスという一連の機体は動力が核だ。さすがに、これは世界に知られるとマズイから、各陣営とも暴露はしていないらしい。何かあって爆破されでもしたら、広範囲に渡って放射能汚染されてしまうからだ。
「そろそろ、髪の毛洗って上がろうか? いい感じに喉が渇いてきた。これで湯上りのビールはうまい。」
「そうだな。」
作品名:こらぼでほすと 花見3 作家名:篠義