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【腐】恋愛妄想疾患【亜種】

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そろそろと廊下を進み、目的の部屋に辿り着く。目を凝らすと、部屋の扉はきちんと閉まっていた。
アカイトは、ふっと肩の力を抜いて首を振る。

考えすぎ、か。

引き返そうかと考えたが、どうせだから金庫の様子も確かめておこうと、扉を開けた。


懐中電灯らしき光の中に、男が立っている。金庫の扉が開けられ、中にあった宝石箱を手に掴んで。

「何をっ・・・・・・!」

アカイトが声を上げると同時に、男が襲いかかってきた。とっさに頭を抱えてうずくまるアカイト。だが、覚悟した一撃は降ってこず、逆に誰かが暴れる気配と、電灯のつく音。そして、

「もう大丈夫だよ、アカイト」

カイトの声に、アカイトははじかれたように立ち上がった。

「えっ? なっ!」
「びっくりした? 僕もびっくりしたよ。こんなに上手く行くなんて」

笑顔のカイトが、オニキスを床に押しつけている。事態が飲み込めずに混乱するアカイトの後ろから、ガーネットの声がした。

「ありがとう、カイト。ごめんなさいね、危ない真似をさせて」
「いいえ、お安いご用ですよ」
「え? ガーネット様? え?」

振り向くと、寝間着の上にガウンを羽織ったガーネットが立っている。ますます混乱するアカイトの後ろで、オニキスが顔を上げ、

「ガーネット! 君はあいつに騙されているんだ! 分かるだろう? 俺が君を助けてあげるよ!」
「あいつって誰? 僕のマスター?」
「そうだ! お前もアンバーに命令されてるんだろう? あいつは悪党だ! 皆、あいつに騙されて」
「静かにしてくれない? 夜中に迷惑だわ」

冷ややかなガーネットの声に、場が静まり返った。

「すぐ警察が来るから、そいつを引き渡して。後のことは任せるわ」
「仰せのままに、ガーネット様」

カイトが、くすくす笑いながら答える。

「何故だガーネット! 君は俺を愛しているはずだ!」

突拍子もないオニキスの言葉に、アカイトはぎょっとするが、ガーネットは冷たい笑顔を浮かべ、

「あら、面白い妄想ね。どうぞ、存分に語ってさしあげて。牢獄の中で」

表に車のエンジン音が響き、警察の到来を告げた。ガーネットは「お願いね」と言い残して、さっさと寝室に戻っていった。
あっけにとられるアカイトに、カイトが「玄関開けてあげて」と声を掛ける。

「僕は、こいつを押さえてるからさ」
「あ、ああ。そうだな」

力無くうなだれているオニキスを一瞥してから、アカイトは警察を迎え入れる為に、ホールへと向かった。