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【腐】恋愛妄想疾患【亜種】

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「アカイト、今日は災難だったね」

ガーネットの婚約者であるアンバーが、お茶を運んできたアカイトに声を掛けた。

「はい。ガーネット様にも、ご迷惑をお掛けしました」
「あら、そんなこといいのよ。すぐに疑いが晴れて良かったわ」
「しかし、警察も頼りにならないね。偽の密告なんかに振り回されて、まだ犯人の目星もつかないなんて」

アンバーの友人であるオニキスが、怒ったように言う。アンバーがお茶をすすりながら、

「仕方ないさ。どんな情報も、とりあえず当たってみるんだろう」
「それにしたって、随分乱暴じゃないか。人形が何で盗みに入る? 金を手に入れたところで、使い道もないだろうし。今度は、アカイトが移動の魔法陣を使ったなんて言い出しかねないぞ」
「えっ」

オニキスの言葉にアカイトが驚いて声を上げると、アンバーは笑って手を振った。

「心配ないよ。そんなことを言えば、魔道絡みの事件だと横取りされてしまう。目撃証言がある以上、彼らとしては引き下がらざるを得ないのさ」
「なるほど。偉大なる魔道士アンバー様のお言葉なら、間違いないな」
「からかうなよ」

アンバーはガーネットの方を向くと、カイトのことを訊ねる。

「声に特徴があるんだって? 会ってみたいな」
「ええ。お礼をしたいと言ったら、マスターに聞いてみないと、と言われたわ。きっと厳格な方なのね。彼が叱られたりしてなければいいのだけれど」
「警察と関わったから? そんな偏屈な人でなければいいけど。魔道士かな?」
「さあ、そこまでは」
「野良かもしれないぞ。所有者がいないのかも」

二人の会話に、オニキスが割って入った。

「声が他のとは違うんだろう? 失敗作として、捨てられたのかも」
「そんなこと・・・・・・どうした、アカイト?」
「あ、いえ、何でもありません」

アンバーの不思議そうな声に我に返ったアカイトは、動揺を押さえつつ、ケーキを取り分ける。
ガーネットが、いつもの柔らかな調子で、

「もし所有者がいないのなら、私が引き取りたいわ。アカイトの恩人だし」
「そんなことを言い出したら、また大騒ぎじゃないか?」

オニキスがからかうように言うと、ガーネットはつんと澄まして、

「あら、お父様がどう言おうと、関係ないわ」

と答えた。
その様子に、アンバーがくすくすと笑う。

「君は優しいね。でも、あまり困らせてはいけないよ」
「平気よ。カイトは恩人ですもの。ねえ、アカイト?」
「あ、ああ、はい。そうですね」

話の流れにどぎまぎしながら、アカイトはカイトの言っていた「心当たり」が上手く行けばいいなと願っていた。