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【腐】恋愛妄想疾患【亜種】

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アカイトが台所で昼食の片づけをしていたら、来客を告げるチャイムが鳴った。
誰か出るかなと耳を澄ましたが、今日は使用人達の外出日なので、アカイト一人しかいないことを思い出す。慌てて濡れた手を拭き、玄関へと向かった。

「はい、どちら様でしょう?」
「その声はアカイトか。今日は使用人達の外出日だっけ?」
「アンバー様でしたか。ようこそ・・・・・・!?」

扉を開けたところで、アカイトは驚いて固まる。アンバーの後ろで、青い髪の人形が微笑みながら立っていた。

「どうした、そんなに驚いて? カイトだよ、初対面じゃないだろう?」
「いや、あっ、え?」
「あははは、黙ってて悪かった。彼は僕の人形なんだ。ガーネットは? 二階かな?」
「あ、あああ、い、今、お呼びします。えっと、あ、こちらでお待ちください」

アカイトは混乱しながら、二人を客間に通す。とにかくガーネットを呼んでこようと、二階に飛んでいった。



「もう、あなたも人が悪いわ。黙っているなんて」
「ごめんごめん。僕も知って驚いたんだよ。まさか、カイトのことだとは思わなくて」

アンバーが頭を下げると、ガーネットはにこっと笑って、カップを手に取る。

「いいわ、許してあげます。でも、あなたが引き取ることになって良かったわ。その方、随分長く向こうにいらっしゃるの?」
「そう・・・・・・そうなんだ。下手したら、もうこっちに戻ることはないかもしれない」
「まあ、魔道の研究って大変なのね」

無邪気に驚くガーネットに、アンバーはいたたまれない気分になった。彼女を騙すのは気が引ける。けれど、正直に話す訳にもいかなかった。

『あなたが、知り合いの魔道士から引き取ったことにすればいいんです。その知り合いは、研究の為に長く国外に出ることにして』

結局、カイトの考えたシナリオに乗ることにしたのは、ひとえにガーネットを失いたくなかったから。

彼女のいない人生など、何の価値もない・・・・・・

ふと、ガーネットは眉をひそめ、不安げな声を出す。

「あなたも、研究の為にここを離れることがあって?」
「まさか! 僕とは研究内容が違うんだよ。僕のはむしろ呪術に近くて、土地に密接した・・・・・・」

アンバーは慌てて説明しようとしたが、ガーネットの困ったような笑顔を見て、我に返った。

「いや、ごめん。こんな話は退屈だよね。とにかく、僕がこの土地を離れることはないよ」
「それを聞いて安心したわ。ごめんなさいね、私、魔道のことはよく分からなくて」
「いいんだよ。あまり詳しいと、僕が大したことをしてないのがバレてしまうからね」

アンバーの軽口に、ガーネットはころころと笑う。そして、ふと窓に目を遣り、

「カイトは、アカイトと仲良くしてくれそうね」
「そうだね。人形同士、話が合うんだろう」
「アカイトは、自分の出自を気にしてるから・・・・・・」

ガーネットは途中で口を噤んだ。
今、二人は庭に出ている。主人を前にしては話も出来ないだろうと、ガーネットが気を回したのだ。

「僕は、アカイトの髪は綺麗だと思うよ」

アンバーは力を込めて言う。彼らは「欠陥品」などではない。

「ええ、私、赤が好きなの」

微笑みながらガーネットが答える。

「あれだけ綺麗に色が変わるのは、珍しいことなんだよ。人形を作るときは、ほんの少し条件が変わっただけで、がらりと結果が違ってくるから・・・・・・」

アンバーは、先ほどの失敗も忘れ、再び熱っぽく話し出した。