【腐】恋愛妄想疾患【亜種】
オパール伯爵の屋敷を荒らした犯人が見つかったのは、事件から半月経った頃。
町外れの石切場で衰弱して倒れ、入院していた男だと判明した。昏睡から目覚めた男は、錯乱して会話が出来る状態ではなかったが、支離滅裂な言葉の中で、呪いの道具に関することを口にした。後は、芋蔓式に男が窃盗常習犯で、住処にしていた安宿から、伯爵夫人の物と思われる魔道具の一部が見つかった。
魔道具は壊されるわ、再び警察から厳重注意を受けるわ、伯爵夫人が呪いをかけたという噂が流れるわで、すっかりしおれてしまった彼女をガーネットが慰めた。
「オパール夫人は災難だったね」
オニキスの言葉に、アンバーが頷く。
「魔石を取り出して、売ろうとしたんだろう。心得のない者が扱うと、危険きわまりないからね」
「そんなにマズいものなのかい?」
「一命を取り留めただけありがたいと思え、だよ。正直、意識が戻るとは驚きだが、これ以上の回復は無理だろうね」
「そんな恐ろしい物を、あの方が持っていたなんて」
ガーネットが身震いして言うと、アンバーは宥めるように笑った。
「伯爵夫人は元魔道士だから、扱いには慣れているさ。正しく扱えば、怖がることはないよ」
「でも、何だか恐ろしいのね」
オニキスはケーキを崩しながら、声を落とし、
「もしかしたら、オパール夫人がわざと盗ませたのかもしれないぞ。盗人に個人的な恨みがあったとか」
「まあ! 随分酷いことを言うのね」
憤慨するガーネットに、アンバーも調子を合わせる。
「おいおい、ただでさえ夫人は落ち込んでるんだ。追い打ちをかけるようなことを言うなよ」
「分かった分かった。二人掛かりで責めないでくれ。そんな噂もあるってだけだからさ」
オニキスは降参したというように両手をあげてから、部屋の中を見回す。
「こんな時、アカイトがいてくれたら、俺の味方をしてくれるのにな。君の人形に取られちまった」
「ははは、人形には人形の話があるんだろう。カイトだって、ここに突っ立ってるだけでは、退屈だろうし」
作品名:【腐】恋愛妄想疾患【亜種】 作家名:シャオ