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【腐】恋愛妄想疾患【亜種】

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アカイトはカイトを連れて、庭外れの東屋に腰を下ろした。
窃盗犯が見つかったことや、オパール夫人に関して心ない噂が流れていることなどを、ひとしきり話した後、カイトがふと思い出したように、

「そういえば、あの約束はどうなったの?」
「何が?」

首を傾げるアカイトに、カイトはふふっと笑う。

「忘れたの? 歌を聴かせてくれる約束だよ。ねえ、今聴かせてくれる?」
「は?」

ねだるように体を寄せられ、アカイトは慌てて身を離した。

「えっ、いや、そんな約束して」
「したよ。初めて会った日に。お礼がしたいって言ったのは、アカイトだよ?」
「いや、あの、そ、そんなのいらないって言ったじゃないか!」
「どうしてもって言ったのは、アカイトでしょ?」

カイトがじりじりと近づいてくるので、アカイトもじりじりと後退する。とうとう壁際まで追いつめられて、アカイトは動揺を悟られまいと、目を逸らす。
耳元で、カイトの囁くような声がした。

「ねえ、アカイトの声が好きだよ。僕は、君のように綺麗な声が出せないから」

その言葉を、何度聞いただろう。
自分の声を羨ましいと言う人形の、青い髪と目が羨ましかった。
それでも、自分の主人は、赤が好きだと言ってくれた。カイトは、どうなのだろうか。

カイトは、誰かに、その声を好きだと言われただろうか。

アカイトは視線を逸らしたまま、小声で呟く。

「・・・・・・俺は、お前の声が好きだ」
「僕もアカイトが好きだよ」

無邪気な返答に、アカイトは真っ赤になって、

「そうじゃねえよ!」

カイトを突き放そうとするが、逆に抱き締められた。

「ひゃああああああああ!?」
「僕はアカイトが好きだよ。駄目?」

パニックになるアカイトの耳に、カイトの囁く声がする。その言葉に、一瞬理性を失いそうになった。

だが、

『私に近寄るな』

以前の婚約者の、嫌悪と侮蔑を含んだ声と視線が、アカイトを正気に引き戻した。
アンバーとの婚約まで破棄されたら、自分はもうここにいられない。

「・・・・・・冗談でもやめろよ。男同士だぞ」

出来るだけ冷静に、言葉を紡いだ。僅かでも、流されてはいけない。

「駄目?」
「駄目とか、そういうことじゃないだろ。いつまでもふざけてんな。ああもう、分かったよ。歌えばいいんだろ? 聞かせてやるから、放せよ」

アカイトはカイトをぐいっと押すが、相手は微動だにしなかった。

「男同士だから、駄目なの?」
「お前な、いい加減に」
「男だから好きなんじゃなくて、アカイトだから好きなんだよ。アカイトもそうでしょう?」
「・・・・・・えっ」

驚いて振り向けば、青い目がまっすぐにこちらを見つめている。吸い込まれそうなほど、透き通った青。

「僕は、アカイトだから好きなんだよ。他の人では嫌だ。好きになった人が同性だと、諦めなきゃいけない? 僕は、同性が好きなんじゃなくて、アカイトが好きなんだよ。アカイトもそうでしょう?」

・・・・・・違う。自分は同性しか愛せない。カイトが女性だったら、きっと興味も持たなかっただろう。

けれど、それを正直に言えば、カイトも、ガーネットも、失うことになる。

カイトだから好きなのだと。他の同性に興味がある訳ではないと。

都合のいい嘘だ。しかし、全員に都合がいい。
この嘘を貫き通せば、誰にも迷惑は掛からない・・・・・・

「・・・・・・そうだよ。俺も、カイトだから、好きなんだ」

生涯、カイトだけを愛せばいい。その自信はある。

カイトがくすりと笑って、ほんの少し腕がゆるんだ。

「僕もアカイトが好きだよ」

青い目が伏せられて、唇に柔らかな感触がする。
アカイトは目を閉じて、されるがままになっていた。