作戦はアイスがカギ
朝食が出来上がるまで部屋に戻ろうとレンも溜め息をつきながら歩き出す。
「さてと、次出掛けるときっていっても…何時になるか、いや、今日出掛けるかどうかも……」
なんといっても今日は休日。まったりのんびりしていたら1日が終わってしまう。
その為、作戦を練る。
「いいこと思い付いた…」
悪戯を考えついた子供のように黒い笑顔で微笑む。全てはカイトと出掛ける…たったそれだけの為だがレンにとってはかなり重要な事だ。
さっそく実行に移すべく来た道を引き返し台所へ。カイトの姿は見えないが、料理がテーブルに並べられているからメイコを起こしにいったんだろうと推測する。
もう一度辺りを見回すと隅にミクを見つけた。
ミク姉はまだ本に夢中か。
ってかネギみてよだれって…
流石はミク姉だ。
俺もカイト兄をおかずにならご飯何杯だっていけるけど!!
じゃなくて…
ミク姉はかなり自分の世界に浸ってるから今から行けるな!!
気付かれないように台所の中へ。
目指すは冷蔵庫!!!
出来るだけ気配を殺し足音を立てないように慎重に進む。冷蔵庫の前にきたらそっと冷凍室をあけ目的のものを掴み取る。カイトが買ってきたばかりのアイス達は袋から出されておらず難なく手に入った。
アイスの入った買い物袋を手に持ち、ミクに気付かれないようにそっと居間を後にした。
「あっ、レンおはよー」
リンは身支度を整える為に鏡の前に座っていた。
まだ寝癖がついている。
「実はリンにお願いがあるんだ…」
「なぁに?」
「これ…食べてほしい」
先程冷蔵庫から取り出したアイスをリンの前に差し出す。
「えっ?全部食べていいの!?」
リンの目が輝いているのは一目瞭然だ。
甘いものには目のないリン。ケーキからパフェに至るまで…リンの胃袋は計り知れない。
「あぁ。全部いっちゃって」
「いただきまーす」
リンの笑顔につられレンも笑顔で返す。
さっそく一つ目のアイスを開け軽々たいらげる。二つ目、三つ目…リンの食べる速さは衰えない。
……やっぱりここに持ってきたのは正解だな
カイト兄がメイコ姉を起こしてくるまでに充分間に合う
幸せそうに食べるリン。そんなリンを囲むように食べ終わった容器が散乱していく。
確かな計画の遂行にレンの口元が緩む。
「ごちそうさまっ」
「はい、よく食べました」
ポンっとリンの頭に手を置き撫でる。
「なっ…レンのくせに生意気よっ!!」
何が生意気なのかわからずキョトンとしてしまう。先程の何がいけなかったのか…悩むが結局答えは出ない。
「私がレンにいいこいいこするんだから!!!」
姉としてのプライドを傷つけてしまったらしい。
「げっ…!!」
リンが抱きついてきた。
勢い良く飛びつかれたせいで思わず倒れ込む。
リンはそんなことなどお構いなしに頭を撫でる。
「よしよしv良く私にアイスを持ってきてくれたわ。レン大好きっ」
「…うぐッ!!!」
ぬいぐるみでも抱くかのように首に力を込められ一緒意識が飛びかけたがなんとか踏ん張った。
「朝ご飯できたぞー」
部屋のドアを叩く音。
カイトの声がドアの外側から響く。
「今行くー」
満足そうに立ち上がりご機嫌のまま部屋を出て行く。
「た、助かった…」
一命を取りとめたレンは、嵐の如く出て行ったリンの方向を見つめていた。
「どうしてあんなに馬鹿力……じゃなくて、ご飯食べに行かなきゃ!!」
我に返り急いで居間に向かう。