作戦はアイスがカギ
居間のテーブルには料理が並べられ、見ているだけで朝の食欲をそそる。
「あれ?レン遅かったね」
割烹着を脱ぐカイトと目が合う。
「ちょっと野暮用済ませてた」
「そっか。レンは朝から忙しかったんだな。じゃあたくさん食べな」
「うんっ」
朝食の時間はカイトの心遣いと笑顔に癒される。カイトの作った料理なら残すはずがない。
ご飯一粒からスープ一滴にいたるまで食べ尽くす自信はある…!!
そんな意気込みを胸にレンはご飯を食べ始めた。カイトからたくさんの癒やしをもらい今日もご飯を美味しく頂いた。
食事のあとはみんな思い思いの場所へ向かう。
メイコは休みだから二度寝しにいったりミクはネギ観察したり…。
カイトは主婦業をこなしながら忙しそうに動いている。そんなカイトを手伝うのはいつもレンの仕事だ。
「とりあえず一段落ついたね」
カイトは一息つくように椅子に寄りかかる。テキパキと仕事を片付け残りの時間をまったり過ごすのが好きらしい。
「さてと…」
カイトの口元には笑みが浮かび声からも嬉しい気持ちが伝わってくる。
この時を待ってました!そう言いたげに、軽い足取りで冷蔵庫の前へ。
羽根でも生えているんじゃないかと思うくらいフワフワしている。幸せそうに顔を輝かせそっと冷凍室を開ける。
「……」
冷凍室の冷気にでもあてられたかのように固まるカイト。幸せだった顔は徐々に悲痛な顔に変わっていく。
その原因を知ってるレンはそっとカイトの側に近寄る。
「ア、アア、アイスが盗まれたっーーー!!!」
「カイト兄落ち着いて」
家の中に叫び声が響いた。
大慌てで警察に連絡しようとするカイトをなだめる。
「レン!!落ち着いてる場合じゃないぞ!!アイスが…アイスが…!!!」
涙目で訴えるカイトをみてるとちょっとだけ罪悪感が沸き上がる。
だがそんな姿も小動物のようで可愛いと思ってしまう自分の心にレンは苦笑いしてしまう。
「カイト兄アイスに名前書かなかったでしょ」
「…はっ!!そ、そういえば確かに今日は書いてない…!!みんな寝てるから大丈夫だと思ったのに……くっ、可愛い妹達は責められない……」
アイスをつまみ食いするのはいつもミクかリン。
名前をかけば一時的に被害は防げるが…本当に一時的に、だ。そんなことが以前からあるためカイトはただただガックリと肩を落とし絶望する。
魂の抜けかけているカイトの肩をポンと叩く。
「カイト兄大丈夫だよ。今日は俺がアイス奢ってあげるから」
「…っ!!レンありがとう!!!」
絶望の涙から嬉し泣きへ変わり勢いよく抱きつかれた。
唐突の抱擁にリンの時とは違いすごく胸がドキドキしてしまう。
すぐ側にカイトがいる…そんな気持ちで嬉しさが込み上げさせる。
しかし、少し落ち着いた心の中で悪魔が囁きニヤリと笑う…。
…作戦は成功だな。
端から見れば確かな黒さがレンの周りを取り巻く。
嬉しそうにアイスのことを考えているカイトはもちろんそんなことを知るよしもなかった。