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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 14

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 ウィズルは祈った。ネティスを助けたい一心で強く祈りを捧げた。その祈りの力は強いエナジーへと変換され、マーティンへ向け、放たれた。
「よし、私も最後の準備を…」
 マーティンは念じ始めた。呪文のような言葉をいくつか発した後、医術師達に合図を出した。
「今だ、皆、私に全てのエナジーを!」
 医術師達が残る全ての力をマーティンへ放った。
『ウィズ・アワーウィッシュドゥ・グレイセスト・プライ!』
 マーティンが詠唱すると、天井に魔法陣が展開され、その光の中から女神の姿をしたものが現れた。
 優しく目を閉じた女神はその両手を広げ、ネティスを抱き締めると強い青い輝きを放った。水のエナジーに満ちたと素晴らしく清浄な力が、ネティスを包み込んでいった。
     ※※※
 全てのエナジーを使い果たし、気を失うように眠りに落ちた医術師達が、ネティスの周りに倒れていた。
 ただ二人、ウィズルとマーティンだけが立ってネティスの呼吸、脈拍を調べていた。
「残念だが…、ウィズル…」
「嘘、だろ…なあ、先生…。なあ、姉…さん…」
 力を貸したウィズルも他の医術師達のように倒れ込んだ。
「本当に…、すまない…。ネティス…」
 マーティンもその場に膝をついた。最後のエナジーを放った初老の医師は、老人の姿へと変貌していた。
      ※※※
 夜空が朝焼けに変わりゆくとき、大海原を一望できる原に一人の女がその体を引きずるように歩いていた。
 ダイヤ柄のストールを身に纏い、病に蝕まれた細く、小さな体躯の女である。
 そして金色に輝く瞳に、水色の流れるような艶やかな髪。その女は、なんとネティスであった。
 裸足の足で草を踏み、息を切らして原を歩み行く。そして、大海原を最も良く見える所、そこでネティスは足を止めた。
 日は半分ほど水平線から顔を出していた。
――最後のお願い、聞いてくれてありがとう。ウィズル…――
 震える手をどうにか抑え、ネティスは右手の指先を額から胸へ、それから左肩から右肩へとやった。
 そして手を合わせ、指を組む、登る朝日に向かって、祈りを捧げる。
「天にまします、神様。願わくは、我が子ピカードの無事を…」
 ネティスは一気に脱力し、草の上に膝を付いた。そして手は組んだまま、横向に倒れた。自身の水色の髪の隙間から見える朝日を、霞む視界から輝きを見続けた。
「…ピカードに、幸あらんことを…」
 最期の言葉を遺し、微笑み、ネティスはゆっくりと、眠るようにまぶたを閉じていった。
     ※※※
 海魔神ポセイドンを倒した事によりレムリア周辺の海域は魔から解放され、激しい渦潮もなく、急な海流もない平穏な海域に戻った。実に数千年ぶりの事である。
 ロビンとその仲間達は、ポセイドンの作り出した奇妙な領域から彼を倒した事により、抜け出すことができた。
 船が目指すはレムリアの島である。魔の海域であった霧の深い海を進めばレムリアは最早目と鼻の先であった。
「お、空が見えるようになったぜ」
 ジェラルドは霧が晴れてようやく日が射した空を手で目を覆い、見上げた。
「ここからもう少し進めば、いよいよレムリア到着です。皆さんの見たがっていたレムリアですよ」
 ピカードは微笑み、言った。
「バビ様のいたレムリアについに着くのか、さぞかし美しい場所なのじゃろうな」
 スクレータは期待に満ちていた。
「終わったはずのボク達の旅がまた始まったのは、バビ様やヨデムさんに頼まれたから、でしたよね…」
 イワンが言うと、灯台解放を阻止しようとしていたロビン達は、それぞれ回想した。
 サテュロスとメナーディを倒し、シンとガルシアまでもが死んでいったと思われ、ロビン達の目的はもうなくなった所に、彼らへと新たな使命が下された。
 消えたジャスミン、スクレータを探すため、そしてリョウカの故郷ジパン島イズモ村での魔龍オロチ打倒、とそれぞれに目的ができた時、バビとその執事であるヨデムにレムリア捜索を依頼された。ロビン達がレムリアを探す事となったのは彼らに依頼されたからであり、ロビン達の意志ではなかった。
 魔龍を討ち果たし、レムリアを探す旅へ戻り、ガラパス島に立ち寄った折にロビン達の元へアレクスが現れた。そして彼の口からバビの死が告げられた。
 バビがロビン達の障害とならないようアレクスが始末したのであった。さらに彼の口からガルシア、シン、その他の者も皆生存しておりジュピター灯台の解放を目指している事も告げられた。
 バビがアレクスの手に掛かった時点でロビン達にはレムリアを目指す理由は無くなったかのように思われた。しかし、ピカードの目的により一行はレムリアへ向かうことになった。
 そしてその目的は間もなく果たされようとしていた。
 水平線に島が見えてきた。これこそが古代文明の都市、レムリアである。
「島が見えてきたぞ!」
「上陸の準備をします、マストを下ろしてください。レムリアに入るには地下洞窟から行かなければなりません」
 レムリアは周囲を断崖で囲まれており、着岸できる場所も浜辺もない。大きな地底洞窟からレムリアの地下へ入り、そこへ船を碇泊させ、地上に上る必要があった。
 ピカード達の乗る船は地下洞窟を進み、そして碇泊し、陸へ上がった。周囲にはレムリアの船が何隻か碇泊しており、姿形はピカードがこれまで仲間と航海してきた船と寸分の違いもなかった。大きく違うところといえば、ピカード達の船に取り付けられた両端の白い翼だった。
 船を碇泊させると、ロビンに続いて次々と仲間達は船を降りていった。しかし、そんな中ピカードだけが船の上で立ち尽くしていた。
「お〜い、ピカード!何してんだ?」
 ジェラルドが訊ねた。ピカードははっ、となり、既に下船した仲間達に目をやった。
「すみません、何だか胸騒ぎがして…」
「胸騒ぎ?」
 ロビンが訊ねた。
「はい、なんだか不幸な事が起きてるような…」
「バカ言ってねえで、とっとと降りてこい。レムリアはすぐそこなんだろ?行けば分かるだろ」
 ジェラルドは面倒な様子で言った。
「そうです…、よね?考えすぎでしょうか。今行きます、案内は僕がしないと」
 ピカードも下船した。
 一行は地下の碇泊場所から地上へと続く階段を上り、レムリアの地上へ踏み込んだ。
「これがレムリアか!」
 年甲斐もなくはしゃいだのはスクレータだった。彼をまるで子供に戻ったかのようにした魅力が、レムリアには溢れていた。
 これまでの旅でロビン達、ガルシア達と分かれて様々な町へ立ち寄ってきたが、レムリアはそれらを圧倒的に凌いでいた。
 神秘的な雰囲気がただよっている。ビリビノ、ラリベロなどは足下にも及ばず、トレビさえも凌駕する美しさがあった。全ての建物が石造り、それも高級な石で建てられている。一軒一軒がまるで宮殿のように荘厳な作りをしていた。
「本当に、素敵な所ですわね…」
 メアリィも文明の進んだレムリアの町に魅了されていた。
「古代の文明がそのまま発展を遂げた。そんな風に見えるな」
 リョウカは真紅の髪をそよ風に揺らし、言った。
 皆がレムリアの美しい町並みに魅了されている中、ピカードだけが落ち着かない様子を見せていた。
「ピカード、一体どうしたんだ?」