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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 14

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 決してシンから離れることはしない、ということである。シンがリョウカの盾となり矛にもなる、そうすることで互いに互いを助け合って戦うことができるようになったのだ。
「心配しないで、兄様。今日はそんなに悪くないから」
 リョウカは笑って見せた。
「それに、いつも言ってるでしょ?守られるだけなのは嫌だって」
 シンの不安は全て払拭されることはなかったが、妹の笑みを見て多少安心した。顔色も確かに悪くない。
「仕方のない奴だな。なら行くぞ!もたもたしてたらそこらで寝ててもらうからな!」
「こっちこそ負けないわ!イワン、メアリィ。後方支援をよろしく」
「期待に添えるように…」
「頑張りますわ!」
 イワンは刀を手に、メアリィは魔杖を取って答えた。
『颯の術・改!』
 シンはエナジーで風を身に纏い、高速でパイロヒドラ目掛け飛び出した。そして魔物にぶつかる直前にシンは姿を消した。即座に二体の分身と共に魔物を取り囲んだ。
 突如として増えて現れた敵に戸惑うパイロヒドラにさらなる追い討ちがなされた。
 赤い閃光のみを残し、リョウカはパイロヒドラに接近し、シン同様に姿を消したかと思うと、魔物の背後に抜き身の姿で現れた。遅れて魔物は青紫の不気味な血を噴き出した。
 シンの二体の分身がクロスを描いて魔物を切り裂き、シン本体は上方に宙返りしながら魔物を刺し貫いた。
 青紫の血を噴き出しながら魔物は叫びを上げた。
 リョウカは抜き身の刀を納刀し、シンは着地して立ち上がった。
「大した速さだな、お前を敵に回してたと思うとゾッとするぜ」
 シンはリョウカと背中合わせになり、言った。
「兄様ほどじゃないわ。まだまだ本気じゃないでしょ?」
「ふっ、まあな。だが、一撃の重さはお前の方が上だぜ?」
 リョウカは小さく笑った。
「魔物の傷が塞がっていきますわ!」
 メアリィは叫んだ。それを聞くと、兄妹は残像を残しながら離れた。
「一気に叩くぞ、オレが奴を惑わす。その隙にリョウカはデカいのぶちかましてやれ!」
「ええ、任せて!」
 シンとリョウカは尋常ではない速さを以て動いた。
 二つのチームが配下と戦っている間、ピカードとポセイドンは拳を交えていた。
 顔に似合わぬ筋肉を持つピカードはその筋力に違わぬ力を発揮してポセイドンに当たっていた。
 左半身の姿勢から繰り出される左手の軽い一撃で相手を牽制、その一撃を受け止める、もしくは反撃してきた所に右手の重い一撃を突き出す戦い方をしている。
 ピカードが武器としているのは拳だけではない。脚も有効活用している。相手の足首を狙った足払いをし、体勢の崩れた相手の頭部目掛けて高い蹴りを放つ。
 手技、足技の打撃主体の見事な体術である。しかし、ポセイドンの方もそれに負けず劣らずの力を持っていた。
 黒鋼が如き肉体を持つポセイドンの一撃はかなり重く、得物としている三つ叉の槍の扱いにも長けていた。
「はっ!」
 ピカードは右手で重い威力を持つ突きを放った。
「ふん!」
 ポセイドンはそれを軽く受け止めた。それと同時に自身の裏拳でピカードを打った。そのはずが、その裏拳は虚空を切るのみだった。
 ピカードは受け流された勢いをそのままに回転し、左肘でポセイドンの肋間を狙った。
「そこだ!」
 がら空きになったポセイドンの肋間を突こうとした。しかし、ピカードの肘打ちはポセイドンの槍の柄で受け止められた。
「甘いわ、小僧が!」
 ポセイドンはピカードの肘を弾き、槍を突き出した。ピカードは大きく後退する。
「くっ、まさか防がれるなんて」
「見たところなかなかの拳法の使い手のようだ。女人のような顔をしていながら、かなりの力を持っているではないか」
 ポセイドンはニヤリと笑った。かなりの余裕を持った笑みであった。
「さあ、お喋りはこの辺にして、次はこちらから行くぞ!」
 ポセイドンは槍を構え、一気にピカード目掛けて駆け寄った。
「ぬん!」
 槍が突き出される。矛先は三つに分かれている、横にかわしたとしても貫き通されてしまう、ピカードはすんでのところでしゃがみ込み槍の一撃をよけた。
「それでよけたつもりか!?」
 ポセイドンは、かなりの重量があろうと思われる槍を、いとも簡単に振り下ろした。
 ピカードは後ろに転がって辛うじてかわした。
『パーキィ・クール!』
 ピカードはエナジーを発動し、先の鋭い氷をポセイドン目掛けて発生させた。
「効かぬわ!」
 ポセイドンは槍でそれらの氷を振り払った。
『チルドマウンテン!』
 続けざまにポセイドンの体を氷結させようとした。
「無駄なあがきを!」
 ポセイドンは迫り来る冷気を片手で受け止めて見せた。冷気が止んだ頃、それを発したピカードの姿はなかった。
「っ!?奴めどこへ」
「はっ!」
 ピカードはポセイドンの鳩尾に正拳を入れた。ポセイドンは予期せぬダメージに顔を歪めた。
 ピカードの放った冷気は陽動であった。ポセイドンがそれに気を取られている隙に自らの拳が届く位置まで移動していたのだ。
 間合いを詰められる事が槍の弱点である。自らの間合いが良いうちに、ピカードはエナジーを詠唱した。
『ダイヤモンド・ダスト!』
 ピカードの両手から、空気中の水分が一気に凍結しダイヤが如く硬度と鋭さを持った氷の粒が、ポセイドンに向けて放たれた。
「ぐわあああ!」
 ポセイドンは防ぐ手だてもなく、ピカードのエナジーをまともにくらった。顔面から胸部にかけて氷の粒が切り裂いていった。
 顔中血まみれになったポセイドンはピカードを血走った目で睨みつけた。
「小僧…、よくも!」
 怒りに任せてポセイドンは槍でなぎはらった。ピカードは後ろに大きく下がった。
「どうだ、僕の攻撃、かなり効いたろう!?」
 ピカードは挑発的に言った。
「レムリア人如きが図に乗りおって!よかろう、ワシの本気を見せてくれよう!」
 ポセイドンは槍を地に突き刺し、何やら念じ始めた。
「させるか!」
 ピカードは拳を振り上げながら駆け寄った。しかし、ポセイドンの周りに発生するオーラで触れることすらかなわなかった。
「くっ!これならどうだ!?『ダイヤモンド・ダスト!』」
 ピカードは再びダイヤの硬さを持つ氷の粒をポセイドンに向けて放った。しかし、それすらもポセイドンの纏うオーラに阻まれ、その全てが弾かれてしまった。
「バカな!『ダイヤモンド・ダスト』が通用しないなんて…!」
 ポセイドンの念じは続いた。
 ジャスミンは身に纏う炎を最大限に収束させ、パイロヒドラ目掛け放った。
『プロミネンス・ジャベリン!』
 特大の炎の槍が一直線に飛び出していき、パイロヒドラを貫いた。同時に炎の槍は燃え上がり、魔物を包み込んだ。
「アケロングリーフ!」
 暗黒の大剣が空間から召喚された。暗黒エネルギーを撒き散らしながら魔物を刺し貫いていく。
「セレスレジェンド!」
 相反する聖なる刃が続けざまにパイロヒドラを切り裂いた。ガルシア、ジェラルドの攻撃で魔物は致命的な傷を負った。
 そこへとどめの一撃が放たれる。
 ロビンは剣に気を込め、エナジーを貯めた。そしてそれが最大となった時、ロビンは打ちはなった。
『ラグナロック!』