二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔王と妃と天界と・2

INDEX|7ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

(全く、何故私がこの様な理不尽な目に……)
 大天使には魔界を見て回れと言われはしたが、魔界中を見て回れる訳もない。
 そういう事では無いのだろう。大天使の意図は、なんとなく知れる。が、それを素直に受け入れられる程、ブルカノは純粋ではなかった。
(悪魔共の姿など見て、何が得られるというのだ…!!)
 くだらない、と切って捨てる。そうしながらも、大天使の命に従わなければならない己に苛つきながら歩を進めた。
 その際に生じた思いには、無視を決め込みながら。
「あ、ブルカノ様っスー」
「また教会っスかー?」
「見た目に似合わず子供好きっスねー」
「ロリコンは犯罪ッスよ!!」
「ショタはもっとヤバイっス!!」
「魔王様とお妃様とエトナ様にミンチよりも酷い姿にされちゃうっス!!」
「違うわ馬鹿共!!」
 時々擦れ違うプリニー達に口々に不本意極まりない事を言われて怒鳴り散らすが、プリニー達も既に慣れたもので、
「冗談っスよー」
「またコントしに行くって事はわかってるっス!!」
「マデラスも喜ぶっスよー」
「それも違うわぁぁ!!大体何故あのガキの名などがそこで出てくるっ!!」
「来る度に会いに行ってるじゃないっスかー」
「お妃様もニコニコしてたっスよー」
「魔王様はニヤニヤしてたっスけど」
「エトナ様もっス」
「ぬぐわぁぁ……!!」
 プリニー達の台詞に、頭を抱えてぶるぶる震えるブルカノ。
 周囲の認識っぷりもさることながら、ラハール達がどんな目で自分を見ているのかを知らされてしまい、屈辱に呻く。
「それじゃ、行ってらっしゃいっスー」
「ロリショタはノータッチっスよー」
「オレ達は仕事仕事ーっスー」
 そんなブルカノの苦悩も気にせず、プリニー達は言いたいだけ言って慌しく去っていった。
「……くっ、おのれ……悪魔共めっ……!!」
 正確には違うのだが、魔界で働くプリニー達は基本的にこちらよりの性質だ。その言葉もさして間違いとも言えない。
 そしてブルカノにとっては同じ様なものである。魔界に居るという時点で敵なのだろう。
「全く、わざわざ城へ出向き、決まりだからと魔王に挨拶をしなければならないなどと……」
 ぶつくさ言いつつ、足を動かす。
 挨拶と言っても格式張ったものでもなく、ただの報告と変わりないものだったが。
 来てやったぞ!!そうか、適当に見て帰れ。言われるまでもないわ!!なんていう遣り取りが最近の通例である。
 天使としてダメダメな感じもするが、ブルカノは魔王やら悪魔やらに礼儀など必要ない、というスタンスだ。
 それを傲慢だとフロンから指摘されても取り合わず、その態度を未だに貫くブルカノは、本当に色々とどうしようもない。もう周りの方が慣れてしまい、適当に流されていたりするのだが。
「全く、不快で傲慢な悪魔共め……!!」
 自分の事を棚に上げつつ、またもや不平不満を今度はハッキリと口に出しながら、ふと思う。
「……そういえば、あの門……今日は妙に……」
 通る時に、違和感があった様な。
 悪魔共が何か仕掛けおったか?と疑うものの、身体に変調は見られない。
 気のせいか?しかし……と考え込むも、当然答が出る筈もなく。
「……まぁ、悪魔共がどんなに小賢しい真似をしてこようと、この私が敗れる筈も無いがな!!」
 自信過剰な台詞を吐きつつそう締めて、その僅かな違和感は、あっさりと忘却された。





 ブルカノをおざなりに見送って。
「あの悪人面天使、なかなか馴染んでおる様だな」
 ここまでになるとは思わなかった、と半ば感心しながらラハール。
「子供達にはもう受け入れられてますからねぇ」
 うちの子達は大らかですからね!!とどこか嬉しそうにフロン。
「図太いわよねー、あそこのガキ共。……あたしは許してないけど」
 この子親バカ候補だわー、とか思いつつエトナ。未だにちっぱい小娘呼ばわりにおかんむりだ。
「セクハラに関しては擁護できませんね。天使のイメージを地に落とさないでほしいです」
 張り付いた様な笑みでフロン。目が笑っていないのと硬質な声音がちょっと怖い。
「お前も相変わらず基本的には怒ってるよな……」
「まー、フロンちゃんのは元々陛下への愛が理由ですからねぇ~?」
「……うっさいわ」
 にやにやしながらのエトナの言葉に、素っ気無く返してそっぽを向くラハールだが、その耳は微かに赤かった。フロンは素直に頬を染めているが、こちらも視線はどこぞへと向いている。
(変なとこでウブよねー、このバカップル夫婦は)
 やれやれ、とエトナが肩を竦める。
 そんなエトナの様子には気付いていたが、突っ込んでもヤブヘビだろうと判断し、空気を変える様にラハールが咳払いをしてから口を開いた。
「……それはともかく、調査はどうなっておる?」
「色々と不穏なんですけどねー。原因がさっぱりなんですよねー……。取り敢えず今は、バイアス様の報告待ちです」
「わたしも調べてみましたが……天使言語に違和感を感じるんです。大天使様も難しい顔をなさって……」
「……ふむ。オレ様も、魔力の流れがおかしい事と空間が歪む間隔が短くなっている事位しかわからんからな……。面倒だが、城の資料を引っ張り出してみるか……。同じ様な事例があったかもしれん」
「お手伝いします!!」
「んじゃ、あたしらは地道に足で調査ですね。かったりーけど、仕方無いか……。ねぇ陛下~、ボーナスとかないんですか~?」
「じゃあいわしで」
「いらねー!!」
「プリニーさん達は喜びそうですね!!」
「あたしは!?」
 魔王城内での魔王と妃と腹心の会話は、内容は不穏なくせにどこか妙に軽かった。





 教会に着いたブルカノを出迎えたマデラスの第一声は。
「あ、ブーちゃんおかえりー」
「待て、その挨拶はおかしい」
「えっ?………ただいま?」
「違ぇよ!?」
 そんな漫才の様な遣り取りを一通り終えた後、連れ立ってぶらぶら歩く。
 その際に会う悪魔の子供達や教会で働くプリニー達や悪魔達と会話をしつつ小競り合いもしつつ。
「む、またブーちゃんっぽいのが……」
「コゼニスキーだってばー」
 目の先にいつぞやの悪魔を見付け、眉根を寄せて呟くブルカノに、マデラスがもー!!と声を上げる。
「ちゃんと名前で呼ばなきゃダメなんだよ!!」
「貴様が言うか!?」
「ブーちゃんはブルカノだから間違ってないもん。はいろんぱ!!ってエトナ様が言ってた!!」
「あのペタンコ娘ぇぇ!!」
 相変わらずの暴言である。
 だがそこに突っ込む者はおらず、マデラスも気にもせず。
「そーいえばコゼニスキーのおとーさん、この前教会来てみんなと遊んでったよー」
「………貴様等との遊びか………」
 ブルカノの顔が苦々しく歪む。
 少し付き合わされた事があるが、えらくハードだった。
 一言で説明するなら、かくれんぼや鬼ごっこという名の獲物狩りゲームな感じだ。
 ならず者達に襲撃された時の為の訓練も兼ねているとかで、殺す気かこの野郎、とぶち切れつつ叫んだろくでもない記憶がある。
「みんなで登ったりした!!」
「……どこにだ?」
「おとーさんに!!」
「殺す気だな!?」
作品名:魔王と妃と天界と・2 作家名:柳野 雫