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緑茶ウォーズ

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「ってなんだいこれ!グリーンティって書いてあるのに苦いよ!」
「あーアメリカさん…グリーンティにはふつう砂糖は入ってないんです…」
複雑そうな顔をする日本の横で、イギリスは久しぶりにアメリカを殴り飛ばしたい衝動に駆られていた。このやろおぉぉぉと思わず呪ってしまいそうになるが、その前にイギリスにはやらねばならないことがあった。
 そう、このまま日本がそれを飲んだらアメリカと間接キスをすることになってしまう。それだけは断固として阻止せねばならなかった。
「日本!悪い!もう一口もらうぞ!!」
「え?あ、はいどうぞ。」
イギリスの気合のこもりっぷりに日本は若干驚いたようだったが、かまわずイギリスはお茶を一口あおる。ふー危なかったぜと一息ついたのもつかの間、日本の前には新たな刺客が現れていた。
「あー日本!ちょうどお茶が飲みたかったある〜〜一口飲んでもいいあるか?」
「はい、私の飲みかけでよければ」
にこやかに答えた日本の前に現れたのは中国と、二人を見つけて駆け寄ってきた韓国であった。
「なぁ…二人とも知ってるか?緑茶も紅茶も烏龍茶も起源はオ」
「あ〜〜私お茶の歴史は詳しくないのでなんとも…」
韓国がみなまで言う前にさりげなく日本がさえぎった。紅茶の部分については大いに反論したいイギリスだったが、その前にやらねばならない仕事があった。
「おい日本!もう一口だ!!」
「は…はい!」
こちらの迫力に押されてか、なぜか日本も神妙そうな顔でペットボトルを差し出す。もしかしたら神妙ではなくただ単に困っているだけかもしれないが、とにかくイギリスは3度目のお茶を口にした。
 休憩時間はそろそろ終わりのはずだ。もう大丈夫…と思った矢先、日本の目の前には最大の敵が現れていた。
「やぁ日本、相変わらずファビュラスなものを持っているね。お兄さん飲んでみてもいいかな?」
「どうぞ、フランスさんのお口に合うかわかりませんが」
グルメと名高いフランスの目に留まったのがうれしかったのか、心もち弾んだ声で日本は答えた。
「あぁ…深い苦味…ZENの味がするよ。ところで日本、気づいていたかい?」
とフランスは人差し指で日本の細い顎をつ、と持ち上げた。
「今、お兄さんと間接キッスしちゃったんだよ?」
息がかかりそうな距離に顔を近づけて、フランスはうっとりとささやいた。
「そういうセリフはこんな爺ではなく、かわいいお嬢さんに言ってあげてください。」
日本は苦笑しながらその手をやんわりはずす。あっさりとかわされたフランスは、つれないねぇと笑いながら自分の席のほうに戻っていった。
 ペットボトルからお茶を飲んだだけでなく、日本に触るなんて…イギリスの怒りはもはや殺意の域にまで達していたが、今は最優先の仕事があった。フランスと間接キスなんてしてしまったら、清純な日本のことだ、それだけで妊娠してしまうかもしれない。
だが、ひとつだけ問題があった―今それを飲むと自分がフランスと間接キスをしてしまうのだ。さすがのイギリスもこれにはためらった。この俺が、フランスと…?想像するだけで身の毛がよだつ。だけど。
(日本の貞操の…ためだっ)
覚悟を決めた。日本を守れるのは自分しかいないのだ。
「おい!日本!!」
「はい、お茶ですね!」
何も言っていないのに日本が両手でお茶を差し出す。それを威勢よく受け取って一口ごくりと飲みほすと―イギリスの体はそのままの姿勢で固まってしまった。
まさか、そんなことが起こるなんて。完全に計算外だった。
固まってしまったイギリスの横から、様子を察した日本が控えめに声をかけてきた。
「あー…もしかして、飲み終わっちゃいましたか?」
イギリスはへなへなと、力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。
作品名:緑茶ウォーズ 作家名:オハル