島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)1
ワープ前に話は戻る。
「ストレッチャーを一台、第一艦橋にお願いします。」
ユキが涙をこらえ生活班に指示した。進はまだ島の遺体にすがって泣いている。進の横で相原が泣き崩れている。
二人は訓練予備生のころからの同期…加藤と山本を失い三人で頑張ろうと誓い合ってきた。まさか島がいなくなるとは…信じられない気持ちでいっぱいだった。
エレベーターが開く音がしてカラカラとストレッチャーの音がした。佐渡が島の方を指さした。班員もその重々しい空気に腰を低くしながら入ると操縦席で息絶えた島が目に入った。
「まさか…島航海長?…うそですよね?気を失っているだけですよね?」
眠っているようにも見える島だが誰もが泣き崩れている様子を見て一瞬躊躇したが二人で“すみません”といいながら島を運ぼうとした時…
「触るな…島に触るな!」
進が島を抱きしめた。
「まだ、暖かい!暖かいんだ…死んでなんかいない…島、目を開けろ!」
進が島をゆする。誰もが止められずただ見ていただけだが進の手にそっと細い指が重なった。
「古代くん、島くんが痛い、って言ってるわ。優しくしてあげて…ね?」
ユキのほほを涙が伝う。進は我に返り生活班の二人の“すまん”と言うと
「俺が運ぶから…」
と、だけ言った。生活班の二人は顔を見合わせると“では…”と第一艦橋を出て行った。
島の遺体に沖田が近付いてきた。
「すまなかった…気付かなくて。入った時に気付いていれば助かったかも
しれない…。」
そう言って静かに手を合わせた。メインクルーと佐渡が静かに手を合わせる。沖田は顔を上げた進の顔を見た。
「古代、相原両名、島を医務室に運んでくれ。佐渡さん、島をお願いします。
ユキも一緒に行ってくれ。真田、アナライザーを操縦席に。太田、アクエリ
アスのワープポイントを計算しヤマトもすぐにワープできるよう準備して
おけ。南部は残党が攻撃してこないようしっかり戦闘準備を整えろ。」
沖田は指示を済ませると静かに艦長席に戻り艦長室へ上がって行った。
「せーの。」
進が島の肩を、相原が足を持ってストレッチャーに乗せた。島の席の回りは島の血液でいっぱいだった。
「ここは私が後で拭くから…アナライザー、ごめんなさいね。」
ユキはアナライザーに声を掛けると太田にも“よろしく”と言って島と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)1 作家名:kei