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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)1

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  「島くん…テレサさん、幸せそうでしょ?何年越しかしら…あの戦いから
   テレサさん、ずっと一人だったのよね。たくさん話があるみたいだから
   ゆっくり話を聞いてあげてね。」

ユキが島に話しかけながら新しい綿で島の身体を拭いていた。すでに体は冷たくなり硬直し始めていた。

  「きれいな艦内服に着替えましょうね。」

ヤマトの艦内は静かだった。さっきの戦いがウソのように静まり返っていた。




ユキはきれいになった島を佐渡の部屋から霊安室に移動した。そこには先ほどの戦いで亡くなったクルーもいた。

  「ねぇ島くん…覚えてる?一番最初に逢った時の事。」

島のクセのある髪の毛を整えながら話しかける。

  「私をすごい目で見てたでしょう?あんな凝視されたの初めてだったから
   “失礼な人たちね!”って思ったわ。まさか私が火星に不時着して亡く
   なった恩人、サーシァさんにそっくりだった、なんて知らなかったから…
   スターシアさんが間違えて…サーシアさんのお写真見せていただいて…
   我ながら似てる、って思っちゃった。」

ユキの独白は続く

  「私ね、島くんの事好きだったの。島くん落ち着いてたし…一緒にいると
   ホッとする、って言うか…安心できる、って言うか…話してると本当に
   落ち着いたの。だけど気付いたらいつも古代くんの姿を追っている自分に
   気付いて…後から誰もが気付いてた、って聞いて…恥ずかしかったなぁ。
   私、誰かを好きになる、って事なかったから私の初恋になるのよね。
   初恋は叶わない、ってほんとね。ちょっとテレサさんがうらやましかった。
   なぜ、って?だって島くんストレートなんだもん。もし私があの時任務の
   事なんて何も考えず告白していたら島くんって、こうだったのかな?とか
   思っちゃうじゃない?まだ地球を飛び立ったばかりで好きだ、なんだ、
   って頃じゃなかったでしょう?告白して断られたらこの先の一年が辛い
   旅になっちゃうし…毎日第一艦橋で顔を合わせるのよ?フラれちゃったら
   それこそ宇宙遊泳してどこかで干からびてたかもしれないわ。」

ユキが泣きながらクスクス笑う。

  「彼の親友、って不思議な存在ね…私にとっても親友みたいでなんでも
   相談できた。ついこないだも相談乗ってくれたし古代くんより先に私の
   気持ち、気付いちゃったり…。前に…白色彗星帝国との戦いの後私の事を
   抱きしめたでしょう?びっくりしたけどちょっと嬉しかった…あの時私は
   テレサさんの代わり、って思ったけど島くん、古代くんと一緒でとっても
   暖かかった…この優しさでテレサさんは包まれてたんだ、って…。
   ねぇ…ふたりでどんな話をしているの?テレサさん、怒ってない?大丈夫?」

ユキは自分の涙を拭いた。

  「ねぇ…島くん。今、未来は見えてる?ヤマトは…地球はこの先どうなっ
   ちゃうの?」

そこへ扉の開く音がした。

  「ユキ、ここにいたんだ。」

深刻な顔をして進が遺体を安置している部屋にやってきた。

  「二人きりで話したいわよね。」

ユキが島のそばから離れ静かに部屋を出て行った。






  「島…俺は…地球を救うためにヤマトを犠牲にしようと思う。」

進は静かに語りかけた。

  「ヤマトにトリチウムを積んで…波動エネルギーと融合させて水柱を断ち切る
   もう、それしか方法がない…トリチウムを積んで航行する事だけでも危険だ。
   お前もいない…出来るだろうか…これから俺は艦長にその相談に行く。
   島ならどうする?地球の危機を救えるのはヤマトだけだ…最後の手段が
   あるのなら俺はそれに賭けたい…ヤマトが残って…地球が水没したら…
   ヤマトは喜ばない…だろ?そう思わないか?」

島の顔はこう言っているようだった

  (ヤマトが無くなって…古代は生きて行けるか?)

進はこう、言い切った。

  「俺にはユキと仲間がいる…お前、真田さん、相原、南部…太田。俺は大丈夫だ
   ちゃんと生きて行く…それに“ヤマトの古代”も卒業しなくっちゃ、だし。
   何事もなければユキと結婚してた。誰よりもユキを幸せにしてやりたい。
   これからも…頼むぜ?じゃぁ…艦長の所へ行ってくるよ。」

進はそう言うと島のほほに触れて部屋を出て行った。