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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)1

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ヤマトはトリチウムを積載中でアクエリアスに停泊していた。すでに太陽系の磁場のせいかアクエリアスの天候が不安定になっていた。進は何する事もなく後部展望室からぼんやりと海を眺めていた。

  「古代くん、ここにいたの?」

ユキが展望室に入ってきた。

  「ここで写真を撮ったわね…」

ユキが手を払いのけたあの写真だ。

  「辛い航海ばかりだったけど…いい想い出もあった…。」

ユキは進の右手を取ってそっと島の羅針盤を進に渡した。

  「これは…」(進)
  「そう…島くんの羅針盤。付けたままにしようか悩んだんだけど…これ、
   相原くんのプレゼントでお揃いでしょ?付けておいたままにしたいなら
   私、戻しておくけど?」

進はどうしようか考えた。相原に相談したいが今相原は何も手に付かない状態だ。

  「預かっておくよ。相原、今何も考えられないみたいだし…。」

精神的に強くなったとはいえ島を失いここでヤマトまで失ってしまう事にかなりのショックを受けていた。

  「そうね…」(ユキ)
  「そう言えば体調、大丈夫か?」

進はワープ前に突然倒れた事を思い出した。

  「あの時ね、突然青白い光が見えたの…そしてテレサさんが見えて…久しぶり
   にお話ししたわ。」

ユキは真っ直ぐ進を見た。

  「古代くん…島くんはテレサさんの元に帰ったの。その光はテレサさんが
   島くんを迎えに来た光…私と話した後再会したはずよ。テレサさんね、
   島くんに血を分けた後とても寒かったんですって。手をぎにったらとても
   冷たかった…だけどどんどん温かくなって…島くんがそばに来てるから
   温かくなってきたの、って…。テレサさんはずっと島くんを待ってた。
   再会するのはうんと先だと思ってたけど、って…。島くんがいなくなって
   私達は悲しいけど…今、島くんはとっても幸せなはず…。」

ユキの大きな瞳から涙が落ちる。

  「なぜ…島が幸せなのにユキが泣くんだい?」

進が聞いた。

  「だって…死んじゃったら…私達お祝いできないじゃない。」

ユキは言葉にできずただ泣くだけだった。進はそっとユキを抱きしめた。









  「古代、大丈夫かな…」

南部が自席で独り言を言った。いつもならそれに相原か島が返事をしてくれるが今は誰も返事をしてくれない。太田は航海班の班長を引き継いだのとこれからの航路を計算するのに忙しく第二艦橋に缶詰だ。

  「島…最初に会ったのは月基地の寮だったな…古代の部屋に挨拶に行って
   太田を紹介したらあいつが島を連れてきたんだ。あの時16だったか?17か?
   古代と島はいつもじゃれてて…小型犬が大型犬にじゃれてるみたいだった
   けどな…。ケンカもよくしたし…お前達仲がいいのか悪いのかよく解らない
   事もあったけどさぁ…特に印象に残ってるのが古代に売られたケンカを
   島も一緒に買ってたよな。落ち着いてるフリしてホントは先頭でなんでも
   やりたがっててさ…面白いヤツだな、って思ってたよ。」

南部がため息をつく。

  「あの時…テレサさんの悪口言っちまって本当に悪い事をした。テレサさん
   のおかげで地球は救われたんだよな…島自身も…。その後島がテレサさんの
   面影を追ってユキさんから離れられないの、知ってた。いつの頃からか
   イスカンダルに行った時と同じ目でユキさんを見ていたからな…だけど
   島の視線はユキさんを見守りながら古代のケツに火を付けながら、って
   感じだった。奪おう、とかそんな感じじゃなかったから俺は安心して
   見てられたんだけどな…。あの最後の告白、古代に効いたと思うぜ?」

南部は静かに涙とメガネを拭いた。